第2-4話 来たれ!ビッグテレポーター!
段田の奇策によって、前回の菜蔵との勝負を決めたビッグナイトが僅か1ターンで処理されてしまった。
余りの頭脳プレイに上級生達も段田に賛辞の言葉を惜しまない。
「スゲェぞ段田!あの状況から一撃で下級生のコマを破壊するとは!」
「逆転が鮮やかすぎるぜ!」
段田はギャラリーに視線を送る。
(懐かしいな、こんな気持ちは…)
沸き上がるギャラリーの様子を見て、段田は小学生の頃の思い出が脳裏にフラッシュバックする。
(以下、回想)
段田がまだ小学生だった時代。
学校からの帰り道、段田はクラスメイトに話し掛けられる。
「舞人くん、学校から帰ったらコマバトやろうね!」
「おう、いつでもかかってこい!絶対に負けないからな!」
(ガキの頃は良かった…。勉強がダメでも、授業中に大ハジかいても、コマバトさえあれば全てが万事OKだった。コマバトで遊べるヤツらは全てが友達だった。)
(それなのに…。)
事態は段田が中学二年生になる頃大きく変わる。
「今日学校から帰ったらコマバト…、飽きた…?そっか…、気が向いたらまた遊んでくれよな。」
「なぁ今日下校後コマバト…、塾がある…?そっか…、俺達も受験勉強始めなきゃだよな…。」
「お前の家でコマバト…、今日彼女が家に来る…?そっか…、邪魔しちゃ悪いよな…。」
1人、また1人と段田の友達だった人間は、人生のステップを進めると同時に段田の元から去っていった。
場面は三者面談に移る。
厳しい表情で担任は段田に宣告を下す。
「お前の今の学力についてだが、正直公立は無理だ。最悪県外の私立を探すことになりそうな状況だが、お前やる気あるのか?」
その言葉に段田の母親も同調する。
「何回叱っても、家でも勉強しないで遊んでばかり…、本当にどこで育て方を間違えたのか…」
正論の前に、段田はバツが悪く俯くばかりだった。
「クソッ、何で覚えられねぇんだよ!分かんねぇ、(内容が頭に入らない理由が)分かんねぇ…。」
勉強机という名の檻に自らを幽閉し、駒場は学習する苦痛に耐えていた。
教科書を読み、公式をノートに書き写し、問題を解いても次の日には頭から情報が消えてしまう。
嬉しさ、悔しさ、優しさ、友情…。
人生の多くをコマバトから学び、コマバト勝負の熱狂と快感の輝きに脳を灼かれ、勝負に勝つために思考回路を最適化してしまった段田の脳にとって勉強は何よりも無機質で無感動で、そして孤独だった。
(コマバト勝負さえ出来れば、人生それで満足だったハズなんだ…。それなのに、どうして…、どうして…。)
段田の幼き日への郷愁と現在への葛藤、それら全てが涙となり、ノートの文字の滲ませていた。
(回想終わり)
「先輩、大丈夫っすか?」
気が付くと対戦相手と駒場が心配そうな表情で段田の方を見ている。
段田は両頬を涙で濡らしていた。
段田の異常な状態に天塚も気付いた。
「本当だ泣いている…、駒場くんのEXモンスターを倒せて周りからも褒められて喜んでもいいはずなのにどうして…」
段田は叫んだ。
「何でもねぇよ!コレで木っ端微塵に終わらせてやる!自分の墓地に爆弾モンスターが5体以上存在するため、召喚条件達成!EXデッキから超重量!ボムの富士を召喚!!」
駒場の陣地中央に巨漢に黒色の浴衣を纏った爆弾モンスターが出現する。
「超重量!ボムの富士は登場してから3ターン後、相手の陣地にいるコマ全てに10ダメージを与える!死にたく無けりゃ止めて見やがれってンだ!!」
「嘘でしょ…?」
天塚は絶望する。
フィールドの超重量!ボムの富士のパワー表示は驚愕の30!
上級生達のざわめきも大きくなる。
「ここでパワー30!?さっきのビッグナイトが残ってても大分厳しい相手だぞ!?」
「超重量!ボムの富士が移動力ゼロのコマとはいえ、駒場に残されたコマでは到底破壊し切れない、持ちゴマが全滅になってしまう!」
「リトルテレポーターでコマを逃がそうにも、選べるのはコストの低いコマだけ、超重量!ボムの富士は動かせないし退避も出来ない」
「まさに詰みだな」
天塚は不安を募らせる。
(駒場くんが勝てるかも心配だけど、どうしてだろう、駒場くんを追い詰めているはずの段田先輩の顔の方が何故だか苦しそう…)
駒場はここから特異な行動に移る。
他のコマは一切動かさず、リトルテレポーターでリトルテレポーター自身を陣地内に移動させ続けたのである。
その行動に対して段田も煽りを入れる。
「カーッカッカッカ!どうしたどうした!打つ手無しでお遊び気分かぁ!?それとも意図しないバグ探しでも始めたのか!?」
「駒場くん…」
天塚は意味不明な行動をする駒場を心配そうに見つめている。
だが駒場が負けを認めたようには一切感じられなかった。
何故なら駒場の姿勢は、あの日の菜蔵に追い込まれた瞬間と何一つ変わってはいなかったからだ。
(大丈夫。きっと勝てる何故ならアイツは…)
天塚は真剣な眼差しで駒場を見つめていた。
そして運命のターンが来た。
段田は声高らかに宣言する。
「超重量!ボムの富士の効果発動!お前の陣地のコマ全てに10ダメージを与える!!コレで勝負は決まり!俺もこの世からオサラバ宣言だぜ!!」
超重量!ボムの富士が膨らみ始めた瞬間、駒場の目が一気に見開かれる。
「この瞬間、リトルテレポーターを昇格させる!」
「な、何ぃっ!?」
「「「!?」」」
駒場の宣言に、段田を含めギャラリーは一斉に驚く。
「リトルテレポーターの昇格条件は、ゲーム中に自身のスキルを5回以上発動させていること!」
(ま、まさかそのためにあんな行動を…)
段田は気づく。
直前の駒場の行動はリトルテレポーターを昇格させるためのスキル回数稼ぎ、明確な狙いがあったのである。
「これが俺の決まり手だ!!万物を有るべきところへ戻せ!EXデッキより来たれ!ビッグテレポーター!!」
リトルテレポーターの姿にノイズが走ったかと思われた瞬間、大仰な装置を背負い込んだ姿のビッグテレポーターがフィールドに出現していた。
ビッグテレポーターの姿、そして駒場の自身に満ちた笑顔を目にして、天塚の顔が一気に明るくなる。
「あれが駒場くんの新しい決まり手!ビッグナイトの他にも決まり手はいたんだ!」
「ビッグテレポーターのスキル発動!この効果は相手のスキル発動時でも発動可能!フィールド上のコマを無条件で好きな場所に移動させる!選ぶのは勿論超重量!ボムの富士だ!!」
一瞬のうちに超重量!ボムの富士は段田の陣地に移動させられていた。
「カァーッ!?」
たまらず叫ぶ段田。
超重量!ボムの富士のスキルは既に発動済み。
止める術は無い。
駒場は段田に軽口を叩いた。
「先輩、自業自爆ってことで爆弾処理お願いします!」
「スグはムリー!!!」
直後に大爆発する段田の超重量!ボムの富士。
無論段田の持ちゴマは全破壊。
勝敗は決したのであった。
(第2-4話 終)




