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第1-3話 現れろ!菜王バンプキング!!

(30ターン目)

駒場の隙のない防御を前に脂汗でシャツをまだら模様に染色し続けていた菜蔵であったが、ここで大きく戦局を動かした。

「こっから先は、収穫祭だぜ」

菜蔵がポケットから取り出したカードこそが菜蔵の俺ルールカード精力増強である。

「俺ルールカード精力増強発動!発動条件は30ターン経過する事!」

「俺の操る全てのコマのパワーを+3する!」

菜蔵の唱えた俺ルールのその効果は、駒場の無限防御の終焉を意味する文言であった。

天塚は隣にいたギャラリーに、菜蔵のプレイに異議を申し立てる。

「菜蔵くんが変なカード使おうとしてるんですけど、何で誰も止めないんですか!」

「あれもルールの内なんだよ」

「え?」

「プレイヤーはゲームで一回だけ、その試合をひっくり返すような効果を持つ俺ルールカードを使うことが出来る」

「そ、それじゃあ駒場くんも?」

「もちろん使えるはずなんだけど、条件が厳しいのかまだ使っていないね」

(そうか、まだフェアな条件なのか…)

天塚は疑問が解消でき落ち着くことが出来た。

そこから先は菜蔵の一方的なパワープレイが展開された。

リトルソルジャーやリトルウィザードは迎撃が間に合わずなぎ倒され、戦略の要であったリトルプリーストまでもが陥落する運びとなった。

今まで何を言われても崩れることの無かった駒場の表情が歪み始め、額からは汗が流れ出している。


(40ターン経過後)

圧倒的有利な状況にあるにも関わらず菜蔵は攻撃の手を緩めない。

駒場のEXデッキには未使用のコマが一体残されている。

もしソイツがコマを2体以上何らかの手段で破壊出来る性能だった場合、逆に立て直す術が無くなることを菜蔵は理解していた。

「お前がどんなコマを出してきたとしても、逃れられない絶望という苦汁を味合わせてやるよ!」

「現れろ!菜王バンプキング!!」

菜蔵が自分のEXデッキよりモンスターを登場させた。

その姿は磨き抜かれたオレンジ色をしたカボチャにマッチョな手足が生え、両手にダンベルを握りしめている、いかにもパワーを自慢してそうなシルエットをしていた。

そのパワーは20、駒場の最大パワーを持つリトルキングでもパワーは8のため、例えパワーが倍になったとしても勝ち目は無い。

しかし絶望はこれだけに留まらない。

天塚はまた隣のギャラリーに異議を唱える。

「フィールドに新しいコマが追加されたんですけど、もしかしてこれもコマバトじゃ普通ですか?」

「うん、コマバトじゃ普通、むしろEXモンスター登場からが試合の見どころって感じだね」

「早く駒場くんもEXモンスターを登場させないと、このまま押し切られちゃうぞ」

「もう、何してんのよ駒場くん、これじゃ菜蔵くんにやられっぱなしじゃない!」

菜蔵は指示を続ける。

「菜王バンプキングのスキル発動!自分の全てのコマのパワーを+2する!」

ギャラリーも思わず息を飲んだ。

駒場の陣地には辛うじて生き残ったリトルナイト、リトルウィザード、リトルキングが残るのみ。

対して菜蔵には無傷でパワーを9に温存したままのニンジン兵士とピーマン兵士、そして自身の効果でパワーが22となった菜王バンプキングが待ち構えている。

「終わった…」

「お前この状況から巻き返せる?」

「無理無理無理!そもそも菜蔵があんなコマ持っていたのすら初見だわ!」

ギャラリーすら目の前の状況に逃げ出したくなるような悲壮感を漂わせている。

(何よ皆黙り込んじゃって!アイツは知らない相手にも啖呵を切って突っ込んでいったようなヤツなのよ!こんな状況あっという間にひっくり返して…)

天塚の希望も虚しく、リトルウィザードとリトルキングは盤上から姿を消してしまった。


(45ターン経過後)

駒場の陣地にはもはやパワーが1のリトルナイトしか残されていない。

序盤にリードを広げていたポイント数もあっという間に巻き返され、逃げ切りすら許されていない状況である。

しかもリトルナイトの位置は既に菜王バンプキングの移動範囲内であるため、菜蔵の胸先三寸で勝負を終わらせることが出来る状況である。

結果の見えた勝負に興味の失せたギャラリーは続々と帰路に着き、残っているのは予定のない暇人か天塚くらいのものである。

天塚は隣のギャラリーに質問を投げかける。

「この状況で、駒場くんが勝つ方法はあるんでしょうか?」

「色々あるけど、まずは菜蔵くんのバンプキングを倒さないと逆転は絶望的だろうね」

天塚は不安そうに駒場を見つめる。

(本当に、本当にこれで終わりなの?)

(あの圧倒的なパワー負けの状況から勝ちそうな雰囲気になってたっていうのに、結局は菜蔵に勝てないの?)

天塚自身ギャラリーの退散に紛れて帰ることもできた。

しかし、目の前の絶望的な戦力差を前にしてなお一向に輝きが落ちない駒場の瞳の輝きにただならない何かを感じ、見切ることが出来ない状況であったのだ。

何か、並の人間なら即座に降参してしまうであろうこの戦況において縋るに足る何かを駒場は菜蔵に悟らせないように必死に堪え、待っているのだ。

その異様な雰囲気は菜蔵にも十二分に伝わってきている。

だからこそ探りを入れる。

「一向にギブアップしてこないけどよぉ、こんな貧弱なコマ一体と出しそびれちまった様子のコマ一体でどうやって逆転するつもりだ?」

「いや転校初日に俺をここまで追い詰めるなんて、大した実力を持っているのは認めるよ俺は」

「今回の勝負は俺が勝つのは確定だとしてもさ、本当はどうやって捲るつもりだったのか教えてくれてもバチは当たらないんじゃないかな、なんてさ」

菜蔵は下手に出てどうにか情報を聞き出そうとするも駒場は反応しない。

相変わらずギラギラと光った目でコチラを睨みつけてくるばかりである。

あまりの態度に菜蔵も痺れを切らした。

「あーそうかい、じゃあこれで勝負も終わりだな!」

菜蔵の指示により、菜王バンプキングは移動を開始した。

(駒場くん、負けないで!)

天塚は思わず目を瞑った。


(第1-3話_終)

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