第1-2話 駒場斗真VS山森菜蔵
(放課後)
ついに放課後がやってきた。
机を挟んで駒場と菜蔵が対峙している。
大勝負を見逃すまいと階層中の男子生徒が集まり二人を取り囲んでいる。
期待と興奮の喧騒の中、両耳を抑え居心地悪そうに座っている女子生徒がいる。
運悪く駒場斗真の隣りの席だった天塚江留だ。
(あぁ~、あんなヤツ放っておいて帰った方が良かったかも…)
駒場の授業中の態度からの様変わりとクラス最強コマバトラーである山森菜蔵とのコマバト勝負、何か良くないことが起きやしないかと心配で残った善良な彼女であったが、あまりの男臭さに既にグロッキー状態である。
「転校生クンよぉー、勝負が始まってからの命乞いはナシだぜぇ〜」
菜蔵は挑発する。
彼の目には、駒場は風呂上がり用に冷蔵庫に保管したミルクプリンにしか見えていないようだ。
「打ってみな、目ン玉飛びさせてやるぜ」
二人の応酬にギャラリーは盛り上がり、天塚の方は疲労の色が濃くなっていく。
「「コマバト開始!!」」
駒場斗真:デッキ名「リトルウォリアーズ」
様々な職場を模した格好の二頭身のキャラクター達で構成されたデッキ。
パワーは全体的に低く移動力も少ない傾向であるがスキルの種類が豊富なため、様々な状況から巻き返せる戦略性の高いカテゴリである。
山森菜蔵:デッキ名「野菜王国」
野菜を模したキャラクター達で構成されたデッキ。
パワーは標準的なコマの性能を大きく凌駕しているがスキル持ちは少なく、一度戦略を崩されると巻き返しが難しい勝敗がハッキリ別れるカテゴリである。
フィールドは9✕9の81マス、そこに両者のコマが並べられていく。
「ブワッハッハッハ!」
双方のコマが配置された直後、菜蔵の爆笑が教室中に響き渡る。
菜蔵が笑うのも無理はない。
菜蔵がフィールド上に配置したコマのパワー合計は36、駒場がフィールド上に配置したコマのパワー合計は20。
純粋な総力戦であったなら、仮に菜蔵がコマ2つを置物にしたとしても圧勝できる予測が立ってしまう。
「おいおい、身の程知らずにもほどがあるだろうが!」
菜蔵は手を叩いて挑発するが、駒場は全く動じていない。
「とんだフカシ野郎だぜー!」
「今のうちに上履き舐めに行った方がいいゾー!」
周囲からは嘲笑混じりに心無いヤジが飛んで来るが、それでも駒場は動じない。
(あぁもう、ホラ吹き男がお隣だなんて恥ずかしいったらないわ!さっさと負けちゃいなさいよ!)
あまりの恥ずかしさに天塚はより一層縮こまってしまった。
(20ターン目)
「いやはやこれは…」
「まさかこんな戦略があったとは…」
先ほどまでの空気は消え去り、ギャラリー達は食い入るように盤面を見つめていた。
駒場の陣営のコマが全く減らないのとは対照的に、菜蔵の陣営のコマは開始時から半分ほどまでその数を減らしていたのであった。
落ち着ききった駒場とは対照的に、菜蔵は首を傾げる。
「くそ、何で押し切れねぇんだ!」
ギャラリーの会話が聞こえてくる。
「駒場のやつ、複数のコマのスキルが上手くループするように指示出しをしているな」
「菜蔵のコマが駒場の陣地に到達するまでの数ターン、スキル連打で相手を確実に弱らせてバトルを相打ちに持ち込んでいやがる」
「しかも駒場のリトルプリーストの蘇生スキルでバトルに敗北したコマを何度でも復活出来るから、菜蔵だけ持ちコマが減っている!」
男子生徒は駒場の戦略性を褒め称えて熱狂していたが、天塚には何のことだが耳に入って来なかった。
それよりあの日中ゾンビのような状態だった駒場が、自分より一回りも大きい菜蔵を寸分の迷いなく打ち負かそうとしている姿にときめきを感じ始めていた。
(何よ駒場くんの変わりよう、ちょっとかっこいいじゃない…)
(よく分かんないけど、みんなは盛り上がっているし、駒場くんは凄そうな感じだし、このままいけば勝っちゃうかも…?)
(第1-2話_終)




