第13-1話 なんか小さくて穴掘るやつら
段田が試合場に着くと対戦相手の姿が見えない。
「あれ?まだ来てない感じか?」
段田がそう呟くとテーブルの向こう側から声が聞こえた。
「失礼でちゅ!もうこちゅらは準備完了でちゅ!」
段田がテーブルを回り込むと、テーブルの縁に頭が着くかどうかといった大きさの少女が立っていた。
「レディーを待ちゃせるなんちぇ、ジェントルマン失格でちゅわ!」
段田は心の中で叫んだ。
(いや、背がちっちゃ過ぎだろ〜!)
小崎渚: デッキ名「穴でつながるハムリーズ」
穴を掘って生活するハムスターやウサギといった小型の哺乳類をモチーフとしたコマが多い。
フィールドに穴を開けるスキルを持ち、攻撃の回避に使用することが出来る。
「いやーん、超可愛いー!!」
天塚は小崎の陣地を見て目を輝かせている。
そこにはハムスター、ウサギ、モルモットといったペットショップで愛玩動物としておなじみの面々が並んでいた。
「良いな〜、私もあんなコ達を使って闘いたいなぁ〜」
「コ、コマバト勝負にそぐわない、なんてファンシーな光景なので…」
「でも今から可愛らしいアイツらを駒場先輩が爆殺していくんだろ?」
「菜蔵言い方!しょうがねぇだろ試合なんだから!」
(3ターン目)
小崎が動く。
「ハムっちで自分のマスの下に穴を開けまちゅ」
小崎がそう唱えると、ハムっちは足元のマスを掘り始め、陥没した穴のようなグラフィックが出現した。
段田はそれに反応する。
「穴?大方もう一方で穴を開けてハムっちの長距離移動をしたいのかも知れんが、そうはさせないぜ!」
「自爆のボム太郎のスキルを発動!自身を破壊し、周囲のコマに5ダメージを与える!」
自爆のボム太郎は爆発し、周囲には何も残っていないように思えたが、穴からハムっちが顔を覗かせる。
その光景に段田は驚く。
「何ぃ!?」
状況を小崎が説明する。
「ハムっちは相手のコマがスキルを発動したとき、または相手のコマとバトルが発生するとき、穴の真上にいれば穴に潜って回避できまちゅ」
「な、何ぃ〜!」
「まぁ、一度使っちゃうと穴は消えちゃうんでちゅけどね」
「おいおい、段田先輩固まっちまったぞ!」
「そりゃ固まるだろうよ、自爆のボム太郎達のスキルダメージで試合を組み立てて行くのが基本戦術なのに、穴に隠れてノーダメじゃこっちが損だぞ」
「じゃあ2体並べて連続で自爆は?」
「それこそ弱小モンスター倒すために取る戦法じゃ無いだろ」
「さっきまでの勝負の決め手だった超重量!ボムの富士だって、今の状態で打っても穴に潜られてノーダメになるだろうしな!」
「じゃあ肉弾戦しかないか」
「何気に爆弾モンスター達はパワー10あるし、それで倒していくか!」
「えー、でもハムちゃん達殴られるのは可哀想〜」
「天塚先輩、それは言っちゃならないので」
(5ターン目)
段田が指示を飛ばす。
「自爆のボム太郎を移動、移動先のハムっちとバトルだ!」
「ハムっちのスキル発動、穴に潜ってバトルを回避しまちゅわ!」
「そうなるわなー、ん?」
しかしここで段田は何かに気づく。
小崎がコマに指示を出す。
「別のハムっちでフィールドに穴を開けまちゅ!」
(6ターン目)
ターンが段田に回ってくる。
「じゃあ俺は別の自爆のボム太郎を移動」
その行動に小崎は動揺を見せる。
「え、さっきの自爆のボム太郎は穴からどけないんでちゅか?」
段田は事もなげに言い返す。
「そうだけど、何か言いたいことある?」
「うぅ、何でもないでちゅ」
(7ターン目)
今まで穴に潜っていたハムっちが穴から這い出してきた。
もちろんそこには自爆のボム太郎が待ち構えており、バトルが開始される。
「やっぱり思った通りだぜ」
「あちゅ〜」
得意気な表情の段田に対して、小崎はバツの悪そうな表情をする。
(よし、俺の思った通りハムっち達の穴に潜れるターンには制限がある、一度穴に潜られても待っていれば必ずフィールドに戻ってきて、バトルに持ち込むことが出来る!)
小崎が話し出す。
「本当はもっとハムっちとのイタチごっこでターンを稼ぎたかったのでちゅが、しかたありませんね」
「少し本気を見せまちゅ」
「ウサギっちのスキル発動、1〜3マスまで先の相手のコマに3ダメージを与えまちゅ!選ぶのはさっきの自爆のボム太郎でちゅ!」
「うおっ」
まさかの遠距離攻撃に段田も面食らってしまう。
「だが、まだ自爆のボム太郎のパワーは6残っている」
(8ターン目)
「自爆のボム太郎を移動」
段田は自爆のボム太郎をモルモッちのそばに移動させる。
モルモッちはモルモットの社交性の高さを再現したかのように4体隣接していた。
(モルモッちのパワーは3、自爆のボム太郎が一発食らうのはしょうがねぇ、返しのターンで自爆させて、モルモッちを大量撃破してやるぜ)
ターンが小崎に移る。
「モルモッちを移動、自爆のボム太郎とバトルしまちゅ!」
モルモッちと自爆のボム太郎のバトル。
「何っ!?」
しかし段田の予想に反し、バトルの勝者はモルモッちだった。
段田は小崎に問いかける。
「なんでだよ、自爆のボム太郎のパワーは6、モルモッちのパワーは3!」
「仮にモルモッちがスキルなんかでバトル中だけパワーが倍になるとかだったとしても相討ちになるはずじゃねぇか!」
段田の問いかけに対し、小崎は指を振りながら答えを返した。
「チュッチュッチュッ、読みが甘いでちゅね段田さん」
「モルモッちのスキルは、バトル中自分及び隣接するモルモッちの数だけパワーを上げる効果でちゅ」
「モルモッちの数は4体、なのでさっきのバトル中のみ、パワーは7となっていたのでちゅ!」
「マジかよ!?うわー下手こいたー!!」
こうしてモルモッちの大量撃破を狙った段田の策は失敗に終わり、段田は両手で顔を覆う。
しかし段田は瞬時に次策を練り直す。
(こうなったら迂闊に攻撃も出来ねぇ、攻撃対象
をハムっちだけに絞って様子をみる!)
(38ターン目)
「ふぅ~、とりあえず1個目の目標は達成っと」
「あぁ…、ハムっち達が居なくなってしまったでちゅ…」
段田はウサギっちからの遠距離攻撃を受けながらもハムっちの個別撃破を続行。
フィールドにいた8体のハムっちの完全排除を達成していた。
段田は小崎に質問を投げかける。
「あと途中で気付いたがよぉ、ハムっち以外に穴を掘れるスキル持ちのコマはさてはいないな?こっちがハムっちを集中攻撃している間、別のコマで穴を増やしていても良かったはずなのに全然そういうのやってなかったもんな?」
段田の質問に対し、小崎は口笛混じりに回答する。
「(♫)そんなことないでちゅ、たまたまスキルを使わなかっただけで、ハムリーズは穴が掘れるのが共通スキルでちゅ〜」
「本当か?なら試させて貰うぜ!」
「EXデッキからEXモンスター超重量!ボムの富士を登場させる!登場条件は墓地に爆弾モンスターが5体以上いること、もちろん達成済みだぜ!」
小崎の陣地に超重量!ボムの富士が落下してくる。
「はわわわ…」
その光景に小崎は焦りを露わにする。
段田は小崎に告げる。
「そいつは登場してから3ターン後に相手の陣地のコマ全体に10ダメージを与える、穴を掘って逃げるなら今のうちだぜ!」
「…ウサギっちを移動させまちゅ…」
ウサギっちで穴を掘らない、段田の予想が当たったことを意味していた。
(第13-1話 終)




