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第11-2話 キマイラスは止まれない

「俺の…ビッグナイトが…」

流石の駒場でも、決まりフェイバリットの一撃離脱にショックを隠せない様子だ。

その様子を眺めながら、生崎はしたり顔で話し出す。

「わざわざ一発勝負に持ち込まなくても、あなたのリトルウィザードでパネル細工師にダメージを蓄積させていけば、ゆっくりでも安全に撃破出来ていたでしょうにね」

「だから見通しが甘いっていうのよ」

駒場は反論する。

「あんなモンスターが出てきて逆転されるとか想像出来るかよ!?」

「想像出来て当然!この世で起きるあらゆる損害は当人の能力不足よ!」

「また人生の話しかよ、もういいって!」


「ヤバいっすね駒場のやつ…」

菜蔵が段田に尋ねる。

「あぁ、パネル細工師を倒せたことで相手が有利なパネルカードを温存出来なくなったが、こちらもビッグナイトという大戦力を失ってしまった」

「現状駒場のコマでバトルに持ち込めそうなコマは?」

「無い、有ったとしても暴獣キマイラスが走り回る中間エリアがすぐそこだ」

「えっ、ビッグスローワーで相手陣地まで飛ばすのは?」

「ビッグスローワーならさっき死んだよ」

「うわっ、ホントだ!」

3人が議論に集中している間、静かにビッグスローワーは暴獣キマイラスに跳ね飛ばされフィールドから姿を消していた。

「こうなったら本格的に暴獣キマイラスの進行ルートを制御して、相手にぶつけるしか勝機は無い!」

「でもそんなの起こり得るの?」

「…パネルカードの内容次第で何とか…」

「結局運否天賦かよ!?」

「駒場くん…」


(40ターン目)

「さて、そろそろ終わりにしましょうか」

生崎が話し始めた。

「EXデッキからEXモンスター絶対進行執行官を登場させます!そして絶対進行執行官のスキルを発動!相手のパネルカードを全て直進カードに変化させます!」

「そして私は暴獣キマイラスの目の前に緊急進行_アクセルマンをパネルカード扱いで置きます、この意味お分かりですね?」

「あぁ、分かってたぜ!さっきから丁寧にパネルカードを配置し直していたからな!」

駒場の陣地には全てのマスを通る一筆書き状態でラインが繋げられており、放置してしまうと駒場のコマは全滅してしまう。

「そんな密集状態でコマを配置していたら、逃げることも出来ないでしょう!」

「さぁ、破滅必至のジェットコースターが発車しますよ!」

暴獣キマイラスがダッシュマスを踏み越え、駒場の陣地へと突進し始める。


「アンタ本当にイジワルだなぁ、自分だけパネルカード大量に持っているわ、特殊なマスを登場させるわ、人から選択肢を奪うとかさぁ…」

「何を今更泣き言を!人生とは他人との蹴飛ばしあい!同伴者を振り落として生き抜いた者の人生にだけ栄光が与えられるの!」

「そっかそっか、じゃあそんなイジワル、アンタにもお返ししちゃおっかな!」

「えっ?」

「EXデッキからEXモンスタービッグリターナーを登場させるぜ!」

「ここでEXモンスター!?」

駒場は暴獣キマイラスが最初にバトルするはずのリトルソルジャーの手前のマスにビッグリターナーを配置する。

「ビッグリターナーのスキル発動!このコマがバトルを行う場合、自身を破壊し相手のコマの移動方向を逆転させる!このスキルで相手のコマが受けるダメージはゼロになるぜ!」

「逆転?」

生崎が疑問に思うやいなや、暴獣キマイラスの進行方向がコチラに向き直る。

「えぇっ!?」

まさかの現状に生崎も驚きを隠せない。

「ビッグリターナーがスキル効果で破壊されたことでバトルは不成立だ、お前のコマでバトル消化してくれ」

「え、いや、ちょっと…」

生崎の戸惑いを無視し、暴獣キマイラスは今来た道を猛スピードで逆走し始めた。


「あ、ダメッ、その先には…」

生崎は思わず身構える。

なんと進行方向上には先ほど登場させたばかりの絶対進行執行官がたっており、そのまま暴獣キマイラスに跳ね飛ばされてしまった。

「あぁ、あああ…」

余りの光景に言葉を無くす生崎に対して、駒場は挑発を投げかける。

「もしも〜し、さっき俺になんて言ったっけ〜?本人のダメなところは本人の努力不足〜?」

駒場の挑発に対し、生崎は顔を真っ赤に染めて反論する。

「うるさい!何よ、一回だけやり返したぐらいで調子に乗りやがって!これからパネルカードを集めてつなぎ直せばコッチの勝ちでしょ!?」

「そんなに悠長に待っていられるかな?」

「な、何よ急に!」

「自分の足元をよく見てみろよ」

「足元って、なっ何よこれぇ!」

そのには先ほどの自分と同じように全てのコマの配置に対して一筆書きになるようにラインがつなげられていた。

「こ、こんなのいつの間に?」

「試合開始からチマチマとさ、こんなの連続で置いてったらバレるに決まってんでしょ!」

駒場はターンの間隔を空け、しかも一見繋がっていそうにないマスからパネルカードを置き、目的のルートを構築していた。

(ぜ、全然気が付かなかった…)

「アンタ、俺に人生がどうとか見通しがどうとか言ったけど、俺は最初からコマバトに勝つことしか見えちゃいないよ!」


「くっ、だとしてもここから先のパネルカード支給で左右方向が引ければ勝機が…」

「アンタさ、今まで引いたパネルカードの種類覚えてる?」

「は?」

「フィールドと除外されたカードを見てみなよ、直進方向カードより左右方向のカードのほうがよっぽど多い!つまりは?」

「…直進方向カードしか引けない?」

「手持ちにどっちか1枚持ってて、どこかのタイミングで持っていないほうが引けたら助かるだろうね」

「ただその反応だと、アンタも直進方向カードしか持っていないんだろう?」

「はっ」

生崎は図星を突かれてしまった。

駒場の陣地に必勝のラインを構築することを焦り左右方向の手持ちカード枚数はゼロ。

おまけに想定外の事態に冷静さを欠き、その情報をモロに駒場に教えてしまっていた。


「さて、運命は逆転し、煽る者は煽られる者へと姿を変えられた」

「アンタは死の運命から逃げ切れるかな?」

「ぐ、うううう…」


(42ターン目)

生崎がパネルカードを引く。

(ダメ、直進方向のカード、これじゃ避けられない)

「進行調整係を移動させるわ!」

「無駄だ、ビッグテレポーターで今動かした進行調整係を元の位置に戻すぜ!」

「いやぁぁ!進行調整係が死ぬぅ!」


(46ターン目)

生崎がパネルカードを引く。

(やった、右方向のカード!あとは左方向のカードが引ければ最悪の事態を回避できるわ!)

「フィールドにパネルカードを置くわ!」

「じゃあ俺はその先に右方向のパネルカードを置くね!」

「テメェーッ!何やってんだー!!」

「何って、パネルカードを置いただけだが?」

「さぁ、早くパネルカードを置いて!早く進行方向を修正しないと脱線しちゃうよ!」


(47ターン目)

(クソが〜、私をナメやがって〜、引いてやるわよ、これが人生の集大成、これが人生の分岐点、お願いご先祖様、私に力を!)

引いたのは直線方向カード、人生は悲哀である。

「クソが〜!!」

生崎は余りの怒りっぷりにカードをテーブルに叩き付けた。

しかし駒場は意に介さずプレイを続行する。

「あ、暴獣キマイラスが進行不可になりましたね!じゃあこっちの方で置き直しま〜す!」

「ハァハァ、どうしてこんな目に…」

生崎のコントのような滑稽ぶりに、両控え席では笑いを必至にこらえていた。


(48ターン目)

「リトルソルジャーでダッシュマスになっている緊急進行_アクセルマンとバトルだ!」

「あぁ、バレないかと思ってたのに〜」


(49ターン目)

生崎の最後のコマの2マス先には暴獣キマイラスが控えている。

駒場が生崎に話し掛ける。

「どうした?早くパネルカードを引けよ」

しばしの沈黙の後、生崎は口を開いた。

「私の負けよ、もう引ける未来が想像できないわ…」

こうして第1戦目は生崎の棄権で駒場の勝利となった。


別れ際に駒場は生崎に呼び止められる。

「私は間違っていたのでしょうか?理想のプレイを追い求めていただけなのに、どうしてこんな…」

「1人で突っ走り過ぎたんじゃないかな?」

「えっ?」

「さっき人生の栄光を掴むために他人を蹴り落とすとか言ってただろ?俺は違うと思う」

「仲の良いヤツ、悪いヤツみんな同じバスに乗り込んでさ、バスの中で頭をぶつけてぶつけられてさ、バスの着いた場所が人生っていうことでいいと思う」

「?よくわかりませんが…」

「まぁ、人に優しくってことだよ」

「折角近くにみんないるのに、敵だらけなんて、何か悲しいじゃん!」

「…対戦ありがとうございました」


(割当中控え席)

生崎が他のメンバーに頭を下げている。

「皆さん、面目ない試合結果となり申し訳ございませんでした!」

「い、委員長が謝ったでしゅ!?」

「何かにちゅけて他人のせいにしてきた委員長が!?」

「試合中に毒でも食らったか?」

「も、もし笑い声が聞こえてしまっておったら申し訳ないのじゃ、あれは不可抗力のようなもので---」

「皆さん」

「「「「は、はいい!」」」」

一斉に姿勢を正す4人。

「こんな私ですが、まだ仲間として慕ってくれますか?」

「当ったり前田でしゅよ委員長!」

「いちゅもわたちゅ達の闘っている姿を見守っちぇくれちぇるじゃないでちゅか!」

「我々は闘争をしているんだ、負けもするさ!」

「我らのブレイン担当を逃すわけにはイカンのでな!」

「…ありがとうございます、皆さん」

生崎の表情には、とても輝かしい笑顔が浮かんでいた。


(第11-2話 終)

この作品、全力で書いています。

「面白かった」と思っていただけたなら、ブックマーク・ポイント・コメントのどれか一つだけでも押していただけると、執筆の大きな原動力になります。

皆さんの反応が、次の話を書く燃料です。

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