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第11-1話 チクタクチクタクババンバン

全国コマバト選手権の県大会、その2回戦にコマを進めた六角中学校。

今度の対戦校はフィールド操作を戦術に取り込んだ割当中学校との闘いとなる。


菜蔵が皆に話し掛ける。

「誰から闘うよ?」

「学校が変わればその生徒達の闘い方もガラッと変わる、下手に突っ込むと負けにつながりやすいぞ」

「じゃあ俺から行くぜ!新しい戦法とか、一番に味わえないと勿体ないもんな!」

先発兼偵察係として名乗りを上げた駒場は意気揚々と試合場に向かう。


生崎育江: デッキ名「逃げろや逃げろ!キマイラス」

無敵モンスター、暴獣キマイラスとそれを誘導させるためのパネルカードが勝敗の大きなカギを握っている。

鉄道作業員のようなスーツに身を包んだ人型のコマが多い。

パネルカードに関係するスキルを持っているコマが多く、闘いを有利に進められる。


(1ターン目)

試合開始早々、生崎が動いた。

「早速で恐縮てすが俺ルールカードの方を発動させていただきます、EXデッキから暴獣キマイラスを登場させ、ゲームに特別ルール「避けろ!キマイラス」を追加させていただきます。」

生崎が宣言すると、4-Eマスにモンスターが召喚された。

それは猫の顔、犬の顔、インコの顔を持つケルベロスのような姿で、羽を生やし、四方八方に威嚇を飛ばしていた。

「フシャャッ」

「ガルルル…」

「ゲゴゴギギギ…」

余りの醜悪な姿に控え席からも悲痛な声が漏れてくる。

「うわっグロテスク…」

「夜中に見なくて良かったぜ…」

「あんまり近寄りたくないフォルムだな…」

「可愛らしいので…」

「「「マジでっ!?」」」

控え席の様相はさておいて、駒場は画面に表示された特別ルールの内容に目を通す。


特別ルール「避けろ!キマイラス」

①お互いのターン開始時、プレイヤーにはパネルカードが1枚支給される。

(カード枚数は3方向✕30枚の計90枚)

②通常の行動の代わりに、パネルカード1枚をフィールドに置くことができる。

(重ねられた下のパネルカードはゲームから取り除かれる)

③暴獣キマイラスはパネルカードに表示されたラインに沿って、各プレイヤーのターン終了時に1マス移動する。

④暴獣キマイラスが進行不可となった場合は、次のターンプレイヤーが暴獣キマイラスの開始マスを選んでよい。


駒場はフィールドを見直した。

確かに今までフィールドには無かったはずの白いラインがところ狭しと張り巡らせられている。

(これが暴獣キマイラスの進行パターンってワケか…)

駒場は直感で理解した。

生崎が話し出す。

「ちなみに、暴獣キマイラスはパワーが∞、あらゆるスキル効果も受け付けませんので、小細工などお考えにならないようお願いします」


「パワー∞!?そんなコマ有り得るのかよ!?」

菜蔵が叫ぶ。

「しかもスキル無効?そんなのコマを戻すことは愚か進行を止めることも出来ないじゃない!?」

「まぁ絶対壊せない舞台装置扱いだろうからな、無敵化は妥当なところだろう」

「段田先輩、スキル無効化をスキルで無効にすることは?」

「おそらくあれは常在スキルだろうから、後出しでのスキル無効の無効化は出来ないだろうよ」

「そんな、自分のコマを強くしても意味なし、相手にスキルは通じないって、それじゃ勝てるわけないじゃない!」

「焦んな天塚ちゃん、発想を逆転させるんだ」

「逆転?」

「幸いコッチにもパネルカードは支給されるんだ、それをつなげて上手いこと暴獣キマイラスをあっちの陣地に向かわせられれば…」

「勝手に相手を倒してくれる?」

「そうだ!わざわざコマを相手の方に移動させなくても、進行方向さえ操れればコッチにも勝機は十分ある!」

「ただ、そんなことに相手が気付くのなんてあっちも百も承知のはず…、上手くいくかどうか…」


(5ターン目)

生崎が指示を出す。

「パネル細工師のスキル発動!パネルカード1枚を追加します」


(10ターン目)

生崎が指示を出す。

「進行調整係のスキル発動!手札からパネルカードを2枚までフィールドに置きます!」


パネルカードの追加と進行ラインの急転換、素早い進路変更で駒場の進路構想を妨害してくる。

「おいおい、随分暴獣の運転が荒いなぁアンタ」

駒場は生崎に軽口を叩くが、生崎はそれをピシャリと返す。

「おだまりなさい。安全運転こそが人生の至上命題、ラインから取りこぼされた人間に明るい未来などやっては参りません!さぁ、あなたは私の巻き起こす人生の荒波に振り落とされずに着いてこられますでしょうか!?」

「うわっ、お前コマバト勝負に人生観見出すタイプかよぉ、やり辛いなぁ…」


「二人の勝負どう思います?」

天塚は段田に問いかける。

「まだどちらの陣地にも暴獣が到達していない一進一退といったところだ、だが相手はパネルカードを常に3枚以上持って進行ラインを組み立てている」

「必要なラインが揃ったら終わりってことか…」


(30ターン目)

遂に駒場が動いた。

「ビッグスローワーでリトルナイトを射出、パネル細工師とバトルさせるぜ!」

それに生崎は反応する。

「なるほど、動かずにパネル細工師を撃破させようという腹づもりですね。しかしそれはかなり非効率的では?」

「一発あれば十分何だよ!俺ルールカード下剋条例発動!直後のバトルを一度だけ勝敗を入れ替える!さらにこのバトルで自分のコマが受けるダメージをゼロにする!」

「なんと!」


パネルカードを製作中のパネル細工師の背中に飛ばされてきたリトルナイトが直撃するという何ともコミカルな映像が流れ、バトル結果はリトルナイトが勝利した。

「これでカードを増産するあんたの計画は崩れたぜ!」

「更にバトルにリトルナイトが勝利したことで昇格プロモーション条件達成!ビッグナイトに昇格プロモーションさせるぜ!」

「コイツは移動力制限無し!暴獣キマイラスの進行先を無視してバトルを仕掛けることが出来るぜ」

「そんなぁ~、私の計画が全部台無しじゃないですか〜」

「…と考えるとお思いで?」

「!?」

悲壮感のある表情からのいきなりのガン見に、思わず駒場もたじろぐ。

「私は四六時中ルートに付いて考えているんですよ〜、そんな私が、デッキの根幹を成すコマをぼっ立ちさせているわけないじゃあありませんか〜」

「ビッグナイトの足元をご覧ください」

「なっ」

駒場は慌ててフィールドを見渡す。

するとビッグナイトの足元のラインは一直線に暴獣キマイラスへと向かっていた。

「確かにこのまま待っていたらビッグナイトは倒されるかもな、だがビッグナイトのマスまで4コマも離れているんだぜ!そんなに待ってやるもんかよ!」

「いえいえご心配なく、もうビッグナイトの活躍は終わりですので」

「何っ!?」

「EXデッキからEXモンスター緊急進行_アクセルマンをフィールドに登場させます!」

「更にEXモンスターだと!?」

「あら、まさか私のEXモンスターが暴獣_キマイラスだけだとお思いでした?それこそ見通し不足と言わざるを得ませんね!」


フィールドに登場した緊急進行_アクセルマンは紙のように平らで、背中には矢印が3つ重なったようなマークが刻まれていた。

「緊急進行_アクセルマンのスキル発動!このモンスターをパネルカードとしてフィールドに置いてもよい!その場合、そのマスはダッシュマスの効果を得ます!」

「ダッシュマス?」

始めて出てきた単語に駒場は首を捻った。

「ダッシュマスの効果について説明します!このマスに止まった暴獣キマイラスは、誰かのプレイヤーのコマとバトルを行うまでフィールド上を連続移動し続けるわ!」

「連続移動!」

その言葉の意味を理解し、危機感を感じる駒場。

「行け!暴獣キマイラス!目の前の障害を排除するのよ!」

「フギャォォッ!」

「ガアァァァッ!」

「ギャアッギャアッギャアッ!」

暴獣キマイラスは嘘のような速度で突っ込み、ビッグナイトをフィールド外に跳ね飛ばしてしまった。


(第11-1話 終)

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