第8話 大玉転がしその先に
六角中学校VS鉄鉱中学校第4戦、鉄鉱中は2勝をものにし、これで勝利すれば鉄鉱中の勝利確定の場面である。
大玉と段田は試合前に軽く挨拶を交わす。
「やぁやぁ兄さん始めまして!アタシのデッキはちょっと頭を使うけど、楽しんでってちょうだいよ!」
「…楽しめたらいいがねぇ…」
大玉転路: デッキ名「ジャンバリ地獄のオーダマン」
オーダマンがスキルで吐き出す大玉を、バンパーくんで軌道修正させながら相手のコマにぶつけることを主要戦法とするデッキ。
大玉の陣地奥部にはオーダマンが右端、中央、左端に計3体、バンパーくんが陣地手前側に1マス間隔で計5体配置されている。
試合開始直後に大玉が動き出す。
「早速で悪いんだけど、俺ルールカード発動軌道修正!これから先、アタシは通常のプレイの代わりにフィールド上のバンパーくんを好きなマスに移動させるか、墓地にあるバンパーくんをフィールド上の好きなマスに復活させるよ!」
控え席の駒場が呟く。
「段田先輩ヤバいかもな…」
天塚が聞き返す。
「今の状況だけで何か分かるの駒場くん?」
「段田先輩の爆弾モンスターはスキルで大ダメージを相手に与えるのが特徴なんだが、少なくても相手モンスターに近づかないと爆風が当てられないんだ」
「あ、確かに」
「爆風モンスターで移動に特化したモンスターはデッキに居ないハズだから、2、3ターン近づかないと現状スキルの無駄打ちになってしまうし、相手は俺ルールの効果でバンパーくんを逃がすわ墓地から復活させるわで幾らでも対処出来てしまうってワケだ」
「それはちょっとヤバいかも…」
「しかも攻撃を止めるためには大元であるオーダマンを撃破する必要があるワケだが、近づいてくるコマに集中砲火でスキルを当てられて近づけるコマはまずいないだろう」
「それって大分ヤバいじゃん!段田先輩大丈夫かな?」
「…」
皆が段田の戦況を心配そうに見つめるなか、青島は下を向いて俯いていた。
よほど敗戦のダメージが精神にきているのだろう。
(5ターン目)
「さぁさぁお兄さん、準備はいいかな?」
「オーダマンのスキル発動!大玉をフィールド上に転がして、当たった相手のコマに5ダメージを与えるよ!」
大玉がそう宣言すると、オーダマンの腹部から鉄球が発射された。
球は経路上のバンパーくんに当たる度に直角に進行方向を変え、段田の自爆のボム太郎に命中した。
初弾が命中し、大玉の機嫌が良くなる。
「見事大当たり〜!お兄さんも早くオーダマン達の鉄球攻撃を何とかしないと、自分のコマがなくなっちゃうよ〜?」
段田が大玉に話し出す。
「なるほど、確かに見た目が華やかで面白い戦法だ」
「普通なら正攻法で遊んでやりたいところなんだが、悪いが本気で行かせてもらう!」
「自爆のボム太郎のスキル発動!自身を破壊し、周囲のマスのコマに5ダメージを与える!」
「「「「!?」」」」
大玉含め控え席のメンバー全員が段田のプレイに驚愕する。
段田は爆弾モンスター達を初期配置からほとんど移動させていない。
そのため爆風は味方の爆風モンスターにだけ直撃してしまい完全な自爆プレイとなっている。
「ちょちょ、お兄さん何やってんの!味方のコマを破壊してもポイントはもらえないよ!?」
「俺には俺の考えってのがあんの!いいからターン進めろって!」
「へいへい分かりましたよって!」
大玉は軌道修正の効果でバンパーくん達を、先ほどダメージを受けた段田の爆弾モンスター周りに集中させる。
通常2回鉄球を当てないと倒せない爆弾モンスター達のパワーが一撃で落とせるラインまでパワーが落ちているのだ。
これほど好都合な状況はほかにない。
(7ターン目)
「オーダマンのスキル発動!大玉をフィールド上に転がして、当たった相手のコマに5ダメージを与えるよ!」
鉄球は再び命中。
1体目の自爆のボム太郎が倒される。
しかし段田の自爆プレイは止まらない。
「自爆のボム太郎のスキル発動!自身を破壊し、周囲のマスのコマに5ダメージを与える!」
再びのスキル発動でついに周りの爆弾モンスター達もダメージに耐えきれなくなり自壊してしまう。
スキル発動による自壊で2体、爆風による自壊で3体、鉄球による破壊で1体と、試合序盤にして半数以上のコマが陣地から消える異常事態となっていた。
余りに常軌を逸した行動に、大玉は口調を強めて段田に制止を求める。
「お兄さん本当にやめなって!おかしいよ相手のコマと戦わずに自分のコマばっかり破壊するなんて!こんなのコマバト勝負じゃないよ!!」
段田が答える。
「じゃあ見せてやる、俺のコマバト勝負ってやつをな!」
「EXデッキからEXモンスター超重量!ボムの富士を登場させる!登場条件は墓地に爆弾モンスターが5体以上存在すること!」
段田の宣言に大玉も驚く。
「EXモンスター!?まさかそのためだけに連続自爆を!?」
フィールド上空から大玉の陣地に向けて、超重量!ボムの富士が落下してきた。
そのステータスに大玉は再び驚く。
「パワー30!?こんなの3ターンじゃ倒しきれないって!!」
「ところでお姉さん、コイツのパワーどう思う?」
「すごく…大きいです」
段田は心境を吐露する。
「お姉さんのやりたい勝負ってのは分かるよ、鉄球の動きは視覚的に面白いしどうやって鉄球の軌道をかわしながらオーダマンを倒しに行こうかって相手に考えさせようとするコンセプトも面白い」
「多分EXモンスターもこのあと登場して、そいつは相手を唸らせるような強敵かもしれない」
「ただコッチにはそれに付き合ってやれる余裕がねぇのさ」
「さっきの敗北を糧に奮起としている後輩もいる、まだ公式戦の空気を味わったことの無い後輩もいる、そんな後輩達を背負っている先輩がよぉ…」
「こんなところで負けられねぇんだ!!」
「ヒィィィッ!!」
余りの段田の剣幕にビビり散らす大玉。
続けざまに段田は大玉に問いかける。
「さぁどうする?EXモンスターで処理出来るか!?それとも負けを認めるか!?」
「対処無理です、今日のところは閉店しま〜す!」
大玉は両手を上げて涙目になりながら敗北を宣言した。
これにより第4戦は段田の勝利となり、二対二の同点。
勝敗は第5戦の天塚対開の対戦に決することとなった。
段田の速攻勝利に、控え席は歓喜に包まれていた。
「段田先輩勝利おめでとうございます!」
「速攻勝利最高にカッコよかったです!」
「10ターン未満勝利とか俺始めてみました!」
後輩達の祝福の言葉を背に、段田は青島のところに向かう。
「青島ちゃん、今回はなんとか次につないでいけそうになったから、次があったら本当に頑張ろうな!」
「…ありがとうございましたので」
段田は天塚の方に向き直る。
「ごめんな天塚ちゃん、公式戦初出場だっていうのにこんな大役任せる羽目になっちゃって」
段田の心配を天塚は跳ね除ける。
「大丈夫ですよ段田先輩!皆が本気で戦い抜いて私までつないでくれたんです!私だって足手まといじゃないんだぞ!ってところみせてあげますね!」
試合場に緊張の面持ちで向かおうとする天塚に、後ろから駒場の声が響く。
「江留ちゃ〜ん、勝負楽しんでこいよ〜!」
「うん!」
駒場の声援に、天塚は笑顔で応えた。
(鉄鉱中控え席)
「ついに最終戦か…」
「俺の無敵の合体戦法で相手の度肝を抜いてやるぜぇ!」
テンションの高い男、開月斗はテンションの高いまま試合場に向かって歩いていく。
(第8話 終)
この作品、全力で書いています。
「面白かった」と思っていただけたなら、ブックマーク・ポイント・コメントのどれか一つだけでも押していただけると、執筆の大きな原動力になります。
皆さんの反応が、次の話を書く燃料です。




