第6-1話 変なお城
巨大な金の像。像を護る守護兵。侵入者を迎え撃つ弓兵。
一見すると何の変哲もないコマの配置、その裏には恐ろしい罠が隠されているのです。
要塞香: デッキ名「BooBooパレス」
豚+中世の王宮をモチーフとしたコマが特徴。
"相手のコマのスキルを受けない"という共通スキルを持っている。
その代わりコストが高く設計されているため、配置可能なコマが少なくなるデメリットがある。
駒場と要は挨拶を交わす。
「楽しい勝負にしようぜ!」
「元気なお方ですこと、私の鉄壁のお城に入って来られるかしら?」
要のコマの配置は以下の通りである。
横一列にブーブー守護兵という騎士装備に右手に大きな盾を持ったコマが要の陣地横一列に並び立ち、巨大な壁を形成している。
陣地中央には強欲なるブーちゃん像という金色でひときわ目を引くコマが置かれ、その両脇にはブーブー弓兵という軽装で弓を構えるコマが1体ずつ置かれていた。
要のコマ配置を見て、天塚が感想を話す。
「相手のコマの並べ方、スゴいクセが強いですね」
その言葉に段田、菜蔵も反応する。
「確かに、壁役のコマを複数体前列に配置するような構成はよく見るが、あそこまで露骨に並べるのは見たことないぜ」
「よっぽど陣地に入ってきてほしくないんだろうよ」
「古代ギリシアのファランクスみたいなので」
(5ターン目)
試合が始まり5ターンが経過、ここから要が動く。
「強欲なるブーちゃん像のスキル発動!パワーを-5、コストを+5ですわ!」
要がスキル発動を宣言すると、画面上の強欲なるブーちゃん像のステータスは、パワー40→35、コスト10→15と情報が修正される。
菜蔵が騒ぐ。
「パワー40!?普通に動かしてバトルさせればほぼほぼ最強のコマをわざわざパワーダウンさせるとか勿体ねぇ!」
段田がフォローを入れる。
「まぁまぁ、像って名前に付いてるわけだし元々移動力ゼロのコマかもしれないぜ?」
「何で自分に不利になるプレイを?」
「見た目ブタなのに名前ゾウとは矛盾なので」
要のスキル連打が続く。
「ブーブー弓兵Aのスキル発動!リトルナイトに1ダメージ!」
「ブーブー弓兵Bのスキル発動!リトルナイトに1ダメージ!」
「強欲なるブーちゃん像のスキル発動!パワーを-5、コストを+5ですわ!」
強欲なるブーちゃん像のスキル解禁待ちの間に個別のブーブー弓兵で相手のコマにダメージを蓄積させている。
一方の駒場は、
「リトルプリーストでリトルナイトをフィールドに復活!」
「リトルテレポーターでブーブー弓兵Bのスキル対象のリトルナイトを移動!ダメージを無効にする!」
「リトルスローワーで、隣席するリトルナイトを2マス先に移動!」
と、パワーが低く狙われがちのリトルナイトの復活、ダメージ回避の為のスキル連打を行っていた。
天塚が呟く。
「なんか、駒場くん押されてないですか?」
菜蔵が気怠げに答える。
「しょうがねぇだろ突破手段がねぇんだから」
段田もフォローに加わる。
「相手にスキルが通用しない以上、頼りになるのはリトルソルジャーのパワーをリトルサポーターのスキルで底上げしてからブーブー守護兵を正面突破するか、リトルテレポーターをビッグテレポーターに昇格させて直接リトルナイトを強欲なるブーちゃん像にぶつけるしか攻略方法が無いからな」
「矢の雨が止まないので」
「それにしたって駒場くんのコマ運びが遅くありません?もっと早くリトルソルジャーを強化して進ませないと被害が…」
天塚の心配に対して菜蔵が答える。
「チッチッチ、分かってないな天塚ちゃんは」
「まだ強欲なるブーちゃん像はパワーを30も残してるんだぜ?倒すのは骨が折れるしコストだってまだまた伸びしろがある!すぐに倒しにいったら勿体ないだろ?」
「確かに…」
「それに要ってやつはまだ俺ルールカードもEXモンスターも残してるんだぜ?下手にブーブー守護兵とバトルした途端どっちか使われて突破出来なくなったじゃ不味いだろ?」
「それもそうかも…」
「俺としちゃ断然ビッグテレポーター+リトルナイトの一点突破狙い!まぁ、俺のデッキならそんな小細工考えなくても一点突破でぶっ壊せるんだけどな!」
「とはいえ今は要選手の方が獲得ポイント数では圧倒的有利…、早く動きにいかないと取り返しがつかなくなるぞ…」
「確かに…」
「青島さん、それ私のセリフ!」
(35ターン目)
要の獲得ポイント数は28、駒場の獲得ポイントはゼロ、肝心の強欲なるブーちゃん像はパワー10、コスト40のステータスでフィールドに鎮座している。
要は駒場に話し掛ける。
「元気な殿方と見込んで積極的なアプローチを期待しておりましたのに、全くこちらに向かってきてくださらないなんて、残念至極ですわ」
「このターンで私が強欲なるブーちゃん像のスキルを発動させてしまえば、あなたは後5ターン以内に強欲なるブーちゃん像を破壊出来ないと負けが確定いたしますのよ?それでもよろしくて?」
駒場は口を開く。
「要ちゃんさぁ、さっき自分のデッキをお城って例えてたけど、あれ嘘だろ?」
「「「「「!?」」」」」
まさかの指摘に要、控え席メンバー全員が固まる。
駒場は持論を展開する。
「確かにスキルが効かない壁役がズラッと並んでいて、遠距離要員がいて、雰囲気作りに丁度いいお宝係までいる!」
「パッと見テーマ作りとしては正解かもしれないが、デッキ構築としては不正解だ!」
「まず攻撃役のブーブー弓兵のスキルが貧弱すぎる!1ダメージをチマチマ当てていくスキルなんて、高パワーのコマを倒すにはターンが掛かりすぎるし、スキルキャンセル持ちが相手の構成にいた場合、ポイント獲得はほぼ不可能になるだろう!」
「そして強欲なるブーちゃん像を配置する意味合い!減っていくパワーと増えていくコストで相手の焦燥感を煽って陣地に呼び込みたいのは解る!」
「だがここで矛盾が生まれる!相手を呼び込みたいなら何故壁役が大量に必要なのか?何故強欲なるブーちゃん像を倒した相手のコマを迎撃する攻撃用のコマが配置されていないのか?」
「その答えはおそらく、相手のコマが陣地に存在していないと条件未達でEXデッキからEXモンスターを登場させられないからだ!!」
「スキルが使えない以上、バトルで強欲なるブーちゃん像をするため、プレイヤーはコマを陣地まで移動させるしかない!」
「『ブーブー弓兵達から取られたポイントを挽回するためには強欲なるブーちゃん像を破壊するしかない!』そう考えたプレイヤーがやっとの思いで強欲なるブーちゃん像を破壊した途端---」
「バンッ!!」
駒場は机を叩いた。
「---って感じで俺ルールカードの効果で相手のコマを逃げられない状態にしたうえで本命のEXモンスターがフィールドに出てきて相手の陣地を荒らしまくる!」
「お前の作ったそのデッキは宝物を守るためのお城じゃねぇ!敵を誘い込み、逃さないための檻だ!!」
「これが俺の答えだ!採点よろしく!!」
(第6-1話 終)




