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第5-2話 急速浮上!SS級潜水艦ダモクレス!

「「「やったぁぁ!!」」」

控え席はまるで勝利したかのような歓喜で沸いていた。

「すごいよ菜蔵くん、あの土壇場でヒットさせられるなんて!」

天塚は感動で涙を流している。

段田が呟く。

「あの様子だと何か掴んだらしいな」

「実際相手はM級潜水艦を失って大幅なパワーダウン、あれなら精力増強も菜王バンプキングの登場も十分間に合う!」

駒場も答える。

「勢いさえ掴めればアイツの独壇場っすよ!」

「ここから始まる一転攻勢ですので!」


「ハーッハッハッハ!!」

菜蔵は有頂天だった。

今まで手掛かりすら掴めなかったかくれんぼ戦術、深海の視線から潜水艦モンスターの大体の位置が分かるという特大ヒントを手に入れ、勝利を確信していた。

「散々人をコケにしてくれやがって、この性悪サイボーグが!タネさえ掴めりゃこっちのもんだぜ!」

〈シャコンッ〉

「は?」

場違いなバネ仕掛けの駆動音の正体を知るため深海の顔をよく見ると、明らかに先ほどまでなかったはずのスモークガラスのサングラスと、鼻まで隠れるくらい大型のマスクを装着していた。

恐らく先ほどの音は深海が元々背中に仕込んでいたそれらの装飾品が、一気に前面展開したため出たのであろう。

今の深海の外観からは、視線は愚か僅かな表情の変化すら読み取る事が出来ない。

余りにも露骨な読み対策に、流石に菜蔵も声を上げる。

「テメェきったねぇぞ!バレるの気づいて後から着けただろ!?」

「後からじゃない…最初から着けてた…」

ジャッジにも抗議を出すが、ビフォーアフターが証明出来ないとして抗議は却下されてしまった。


菜蔵の慌てぶりに、4人にも動揺が広がる。

駒場が段田に尋ねる。

「相手なんか急に雰囲気変わってません?」

「どうやら不味い展開になったっぽいな」

天塚は三度絶望する。

「えぇ~、またノーヒントに逆戻り〜!?」

「振り出しに戻るですので」


(40ターン目)

菜蔵は予定通り精力増強の発動と菜王バンプキングの登場を行い、その過程のラッキーヒットでL級潜水艦を1体撃破することが出来た。

それでも菜蔵には大きな課題があった。

(ポイントが足りてねぇ…)

ゲームももう終盤戦、現在のポイント獲得数は菜蔵が30で深海が36である。

ヒットさせるのが絶望的なS級潜水艦を候補から除外すると、菜蔵が勝利するためには残り10ターンでL級潜水艦を2体とも撃破する必要な状況だった。

菜蔵は再び考える。

(ヤマカンは絶望的、視線も当てにならない、何か無いか俺の経験、俺の過去…)

菜蔵は盤面の状況ではなく、過去の激闘からヒントを得ようと試みたのだった。

逆転した勝負、逆転された勝負…。

菜蔵の頭の中に思い浮かんだのは、記憶に新しい駒場との激戦であった。

一瞬の油断、そして手痛い敗北。

勝敗が決した時の駒場のセリフが聞こえてくる。

(俺の決まりフェイバリットが出張って来たんだ、逃げ場はねぇと思いな)

逃げ場、逃げ場…。

その時、菜蔵の頭の中で散らばっていたワードが一つの回路を形成し、スパークを発生させた!

「分かったー!!」

「たどり着いたぜ、かくれんぼ戦術の完全攻略方法!!」

「!?」

「「「「おぉー!!」」」」

自身に満ち溢れた菜蔵の様子に、控え席の4人の期待は最高潮に達する。


「お前は最初に深海潜行の条件を突き付けて来た!俺はそのままルールを理解し、潜水艦モンスターは自由自在に動き回れるもんだと"誤解"していた!」

「しかし実際は俺に教えていない隠されたルールが存在していた!」

「まず第一に、潜水艦モンスターは前後方向にしか動けない!そして第二に、潜水艦モンスター同士は同じ列に配置出来ない!どうだ!?」


「あぁっ!」

菜蔵の推理を元に、各潜水艦モンスターのヒットマスを書き出していた天塚はあることに気が付いた。

L級潜水艦A…3-Aマスでヒット

M級潜水艦A…2-Cマスでヒット

M級潜水艦B…4-Iマスでヒット

L級潜水艦B…1-Hマスでヒット

菜蔵の言う通り、潜水艦モンスターのヒットマスは列の重複が存在しなかった。

「確かに列に被りがない!」

「つまり菜蔵の推理が正しいなら…」

「残りの潜水艦モンスターはB、D、E、F、G列に必ず潜んでいるってことなので!?」


菜蔵は深海に問いかける。

「どうよ、馬鹿なりに捻りだした俺の推理は?」

「…………」

深海は答えようとしない。

しかし明らかに菜蔵から目を背けようとするその態度からは自ずと答えが察せられる様子だった。

菜蔵は少しはにかみながら深海に言葉を投げかける。

「さっきは性悪とか言って悪かったな、やっぱお前性悪じゃねぇわ、嘘が下手すぎる」

菜蔵は自分のコマを移動させ始める。

「ジャガイモ兵士を3-Bマスまで移動!」

ジャガイモ兵士が移動の途中、メッセージが表示された。

〈被弾マスに接触。バトルを開始します〉

「ヨッシャ、ビンゴ!」

菜蔵の推理は的中し、潜行中だったL級潜水艦Cは自動的に撃破された。


明らかに勝確の流れに控え席は大盛り上がりだ。

「これで残りはD、E、F、Gの4ライン!」

「菜蔵のコマの移動力なら最大3ラインまでは確認出来るから…」

「SでもLでもどっちかヒット出来れば勝確の状況ですので!」


(50ターン目)

G列に潜行していたL級潜水艦Dも無事撃破し、後は深海のターン終了を待つだけとなった。

菜蔵は余裕の態度である。

「途中まで訳分かんなくてマジに負けるかとヒヤヒヤしたが、俺様の推理力に掛かれば敵じゃなかったぜ」

「……フッ」

「フッフフフフフ…」

深海が震え出す。

顔が隠れていても、笑っている様子なのは明らかな雰囲気だった。

「耐えた…、やっと耐えた…、私の勝ち…」

「ハァッ!?」

深海のまさかの勝利宣言に、気が動転しかける菜蔵。

「何言ってんだよ!?仕掛けは攻略したし、ポイント数も俺の方が上!どう考えても俺の勝ちだろうが!」

「……昇格プロモーション出来る…」

「なっ…!」


昇格プロモーションの単語に菜蔵の不安が増大する。

確かに深海はゲーム中一度もEXデッキからEXモンスターを登場させていない。

(EXモンスターを登場させてはいけないって縛りがあるかもと思っていたが、思い違いだったか!)

後悔してももう遅い。

深海は発言を続ける。

昇格プロモーション条件は、S級潜水艦が50ターンの間フィールドに残り続けること…」

「ぶっ」

余りの達成条件の厳しさに、思わず菜蔵は吹き出してしまう。

(50ターン!?あんな高速でマスを開示され続ける状況で50ターン!?正気じゃねぇぞコイツ!?)


「見てよこれ…」

天塚が3人にメモを見せる。

それは先ほど菜蔵の推理を確認するため、潜水艦モンスターのヒットマスを書き記したものであるが、ある事実を表していた。

「D〜F列に、ヒット記録が無い!」

「つまり両脇に潜水艦モンスターを配置してひっきりなしに動き続けることで中央のラインへの注意を薄れさせた?」

「どんだけ綱渡りのデッキだよこれ!?」

「本当の潜伏先は頭の中ってことですので!?」


深海が号令を掛ける。

「急速浮上!怨敵に正義の裁きを!SS級潜水艦 ダモクレス!!」

1-Eのマスの地面が急速に膨れ上がり、巨大な鉄塊のような潜水艦が姿を現した。

「SS級潜水艦 ダモクレスのスキル発動!フィールド上のコマ1体に4ダメージを与える!」

「何だ、結局大した効果じゃ…」

「…を10回繰り返す!」

「ハギャーッ!!」

合計40の大ダメージ。

無論菜蔵のコマは跡形も残らなかった。


「勝者深海爽奈、1戦目は鉄鉱中の勝利!」

ジャッジの宣言が下り、1戦目が終了した。

菜蔵は放心状態で椅子に持たれ掛かっている。

(理不尽なルールに耐えて、必死に攻略方法にたどり着いて、結局負け…、負け…?)

「ちょっとちょっと…」

菜蔵の頬をつつく者がいる、先ほどまで闘っていた深海爽奈だ。

「もう…終わったから…戻ったほうがいいよ」

「おぉ?あぁ…そうだな…」

菜蔵は重い体を起こして控え席に向かおうとする。

「あ、ちょっと…」

深海が呼び止める。

「さっきの勝負…、負けるかと思って最高にドキドキ出来た…、また勝負してね…」

「んぉ?あぁそう、またねまた」

敗北のショックに頭が回っていない菜蔵は、適当な相槌を返して控え席に戻っていった。


「本気ですまねぇ〜…」

菜蔵は酷く落ち込んでいた。

威勢の良い態度を取った結果が黒星スタート。

体格が一回り縮んで見えるくらい落ち込んでいた。

余りの落ち込み具合に、たまらず他のメンバーはフォローに入る。

「大丈夫だって大丈夫だって!あんなの初見殺しで誰だって回避出来ないから!」

「こっから3タテできれば、一敗なんて誤差みたいなもんだよ!」

「いつまでも沈み込んでちゃ駄目ですので!」

駒場は試合場に向かう。

「親友が凹んでんだ、こっちが引っ張りあげてやらないとな!」

天塚は駒場にエールを送る。

「駒場くん、頑張ってー!」


対する鉄鉱中チーム、要塞香は不敵な笑みを浮かべる。

「おいでませ挑戦者さん、私に勝利を贈って下さいな…」


(第5-2話 終)

この作品、全力で書いています。

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