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第4話 県大会会場へ急げ!どうした青島!?

7月中旬、早朝4時30分。

空の色は黒から青に白み始めるがまだ人々の多くが眠りに耽っている時分、天塚江留のスマホのアラームがけたたましく鳴り響く。

「うぅ~ん…」

天塚はアラームを止めて、パジャマ姿で部屋のカーテンを開ける。

「…いや(起きるにはまだ)早いて…」


六角中学校は岩手県の沿岸に位置し、そこから県央の盛岡にある大会会場に11時までに到着するためには朝6時の高速バスに乗るほか交通手段が無い。

眠気との勝負、大会は既に始まっているのである。

(眠い眠い眠い眠い…)

天塚は、もし瞼を3秒閉じてしまったら寝落ちするであろう強烈な眠気に耐えながら必要な身支度を進める。

「行ってきまーす」

天塚は身支度(着替えとスマホ)を整えると、待ち合わせ場所となっているバス停併設の待合室を目指すため家を出発した。


(朝5時)

天塚が待合室に到着すると、既に先着の姿があった。

駒場斗真である。

「駒場くん、おはよう」

「オッス〜江留ちゃん」

「駒場くんは何時にココに着いたの?」

「4時」

「4時!?じゃあそれから1時間は?」

「普通に起きてた」

「嘘でしょ…」

天塚は絶句してしまう。

自身ですら強烈な眠気にギリギリ打ち勝ってこの場に来れたというのに、まるで早起きを苦にしてしなさそうな駒場の様子に畏怖すら感じていた。

(授業中は寝ているどころか死んだように動かない状態のクセに…、オンオフのクセ強すぎでしょ…)


(朝5時10分)

待合室に居るのは天塚と駒場の二人だけ。

外から聞こえるのは鳥の鳴き声くらいしかない。

天塚が駒場に話し掛ける。

「駒場くんはさぁ、もし全国優勝できたら叶えたい願いとかってあるの?」

「私は超が付くほどの大金持ちになって〜、好きな男の子取り巻きにして〜、好きなことだけやって過ごせる勝確ライフが手に入ったら良いな〜って」

天塚は身ぶり手ぶりを混じえながら駒場に説明する。

駒場も叶えたい願いについて答えを返す。

「アイツと闘う」

「"アイツ"?」

天塚は首を傾げる。

駒場はアイツについて補足する。

「ほら、コマバトの公式の動画で大会の開催について告知してたヤツだよ」

「えっ神田神男!?」

「そうだよそれそれ」

駒場のまさかの回答に、天塚も理由を聞かずにはいられない。

「せっかく何でも願いを叶えられるチャンスだっていうのにそんな願い事でいいの!?もっと"強いコマが欲しい"とかそれこそ"全世界の人とコマバト勝負がしたい"とか色々あるでしょ!?」

「強いコマなんていつか手に入れるから今じゃ無くていいし、全世界の人とのコマバト勝負もいずれ行くからそっちも今じゃ無くていいよ」

天塚は開いた口がふさがらない。

天塚の中では手が届かないようなイメージの願いであっても、この男の中では既定路線のようである。

駒場は続ける。

「大人にコマバト勝負挑んでも誰も相手にしてくれないっていうのにさ、アイツはわざわざ大会まで開いてくれるんだぜ!?しかも何でも叶えるってオマケ付きで!あんなの絶対にコマバト馬鹿に違いないぜ!」

「コレを逃したら一生大人相手に闘えないような気がする!だからアイツと闘いてぇ、負けてもいいから闘いてぇ!」

「…じゃあもうそれで良いわ」

余りにコマバト至上主義な駒場の考えを、事の重要性を説いて改めさせようという考えが一瞬天塚の脳裏によぎった。

しかし目を輝かせて自分の願いを熱弁する駒場の熱意に押されて行動には移さなかった。

(多分コイツは地球が爆発するとしてもコマバト勝負を続けるんでしょうね…)


(朝5時25分)

待ち合わせ時間は朝5時30分。

既に山森菜蔵と段田舞人も到着し、残すは青島岬だけとなっていた。

痺れを切らした菜蔵が言い出す。

「青島の家行くぞ!!」

「おう」「うん」

その提案に駒場と天塚は同意し、3人は青島の家に向かった。


(朝5時40分)

青島の家。

その部屋の主である青島は未だ夢の中であった。

「ンゴ」

だらけきったその寝顔はいつまでも眺めていたくなるような愛らしさがある。

が、その姿にブチギレの菜蔵は自ら目覚まし役を買って出た。

「起きろ青島ー!!」

「あぴゃっ!?」

余りの轟音に、一瞬で飛び起きる青島。

「ハイハイ、青島ちゃんの着替えを手伝うから男子は入室禁止!」

天塚に急かされ部屋を追い出される駒場と菜蔵。

廊下での待機中、菜蔵が呟く。

「…流れで女子の部屋に入っちまったよ…」

怒りと焦燥感があったとはいえ、青島への配慮に欠けた行動を取ったことを実感し反省する菜蔵に、駒場がフォローを送る。

「大丈夫だって、これから毎日起こしに来れば普通に入れるだろ?」

「いや、理由つけて入りわけじゃねぇからな!?」


(朝5時58分)

「急げお前らー!」

段田の激が飛ぶ。

既にバスは発車準備が整っている状況である。

「「「今行きまーす!!」」」

3人はバス停に向けて全力で急ぐ。

菜蔵の背中に青島がおぶさり、青島の荷物は天塚が手に持っている。

この状況下で青島は掟破りの二度寝を実行中のため、今は荷物扱いとなっている。

「何でこの状況で寝られるかなぁコイツは!」

菜蔵は歯を食いしばり、青島の横暴に耐えていた。

何も背負っていないはずの駒場は何故か足取りがおぼつかない。

早起きのツケが頭に回り始めていた。

こうして波乱の中、一行はバス搭乗に間に合ったのであった。


(大会会場)

「それではこれから『全国コマバト選手権』県大会を始めさせていただきます」

屋内運動場に各校の代表者は並ばせられ、大会運営職員からの開会宣言が行われている。

大会とはいえ絢爛豪華な会場演出もなく、観覧席に人も居ない。

対戦用のテーブルが等間隔に置かれ、壁際には待機者用の椅子と観戦用モニターが置かれているのみである。

ステージにはスクリーンが設置され、勝敗結果がリアルタイムで確認できるようになっている。

大会運営職員から大会のルールについて説明が入る。

「勝負は3ポイント先取、各試合につき1ポイント、引き分けの場合は次の試合にポイントを引き継ぐものとします」

今回の出場校は良鳩中学校、有鳥中学校、大小中学校、山脈中学校、割当中学校、金色中学校、鉄鉱中学校、そして駒場達六角中学校の計8校。

この8校で全国大会出場への切符を争うこととなる。


1回戦の相手は鉄鉱中学校である。

職員の合図のもと、お互い向き合い挨拶が交わされる。

「これより1回戦を開始します、両チーム、礼」

「「よろしくおねがいします!!」」


六角VS鉄鉱戦、1戦目は菜蔵VS深海の組み合わせである。

「負けんじゃねぇぞ菜蔵〜」

駒場が控え席から菜蔵に声を掛ける。

「当たり前だ!貧弱なコマなんてぶっ飛ばして勝ち名乗りを挙げてやるぜ!」

声高らかに返事を返した菜蔵であったが、フィールドに目を移した瞬間、一気に血の気が引いていく。

「嘘だろオイ…、コマが…、ねぇ…」

なんと相手の陣地にコマが1体もフィールド上に存在していないにも関わらず試合開始が宣言されてしまった。

対戦相手の紺色の髪色の赤目の少女は、静かに盤面を見据えている。

この理解不能な状況から、菜蔵は勝利を掴むことが出来るのだろうか!?


(第4話 終)

この作品、全力で書いています。

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