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第3-1話 天塚のデッキ選び

「私もコマバト始めてみたいんだけど!」

天塚江留からの突然の提案に、駒場斗真、山森菜蔵、段田舞人、青島岬の4人は驚きを隠せない。

天塚は続ける。

「駒場くん達の勝負をみてたら、皆真剣に勝とうとする姿がカッコよかったし…」

「あの逆転するときの感覚とか、ちょっと気になるなって…」

そう天塚が理由を話した途端、4人がほぼ同時に立ち上がった。

「「「「よし、じゃあ何から知りたい!?」」」」

「うぉっ!?」

彼等の余りの食い付きの良さに天塚は面食らってしまう。

菜蔵が駒場に話しかける。

「いや~良かったぁ〜、これで5人集まったな駒場〜」

駒場も答える。

「あれ以降ずっと5人目が来なくて内心焦ってたもんな!」

実は段田と青島が部員加入以降してから部員集めが難航しており、そんな状況で天塚の自発的なコマバト入門希望は渡りに船といった状況であった。


4人からのコマバトレクチャーは多岐に渡った。

コマの種類、コマの配置、試合の流れ、基本ルール等々…。

大体の内容を天塚が頭に入れたタイミングでアクシデントが発生した。


今後の展望について天塚が一言漏らした。

「じゃあしばらくはデッキは駒場くんと一緒のリトルウォリアーズを使うわね」

駒場はすかさず拒否する。

「ダメダメ、俺に被せんなって!」

「何よケチね〜、じゃあ菜蔵くんの---」

内容を最後まで言い終わる前に菜蔵も答える。

「俺もデッキ被るのはゴメンだぜ」

残りの二人も無言で首を横に振る。

「何なのよ、何がイヤだって言うのよ!?」

天塚は四人に事情を問いただす。

駒場は菜蔵に問いかける。

「同じデッキ使われて、勝負中勝ち筋あるのにミスプレイで負けられるのって、見てて超イラつかねぇか?」

菜蔵も答える。

「分かる分かる、俺ならそこで捲って勝ててたって感情強いよな!」

段田は天塚をフォローする。

「天塚ちゃんが俺達くらい勝負に慣れているなら文句は無いんだけど、今すぐはちょっとね…」

青島はボソッと一言。

「同担拒否」

余りの意固地っぷりに天塚も困惑する。

「何で頑固なのよ〜」


天塚のデッキ選びのため、四人はそれぞれオススメデッキを紹介する。

まずは駒場から、

「俺がオススメするのはコレ!リング・オブ・レジェンド!」

「勝負中に基本的なスキルは大体揃っているし、クセのあるコマも無いからプレイしやすいぞ!」

駒場の手に持つパッケージには、中央に大きな金のリングが据えられ、四隅とリングの中に剣を携えた勇者、ドラゴン、怪鳥、黒衣を纏った悪魔のようなキャラクター、お姫様が配置され、以下にもRPGに登場しそうなキャラクターをモチーフとしたデッキに仕上がっていそうな雰囲気を感じさせる。

天塚はこれを一蹴する。

「私RPGとか興味無いのよね」

続けて菜蔵がプレゼンする。

「俺が紹介するのはコレ!密林覇王!ジャーマン!」

「主役のコマ、ジャーマンを森の動物達のスキルを駆使して強化しまくって、一点突破で相手の防御をブチ壊す、爽快感あるプレイが出来るデッキだぞ!」

菜蔵の手に持つパッケージには、壮大な大渓谷を背景に雄叫びを上げる、筋骨隆々のマッチョマンが写し出されており、緑の端々からリスやサル、クマが顔を覗かせている。

これも天塚は一蹴する。

「マッチョマン主役のデッキなんて、女の子が喜んで使うと本気で思ってる?」

段田は明るい口調でプレゼンを開始する。

「俺のオススメはスクランブル機甲師団!」

「素体となるロボットコマに支援ユニットをカスタムして能力強化!若しくはオプションを発射して遠隔攻撃!ロボットコマがフィールドを縦横無尽に敵をなぎ倒す、爽快感あるプレイが出来るデッキだぜ!」

段田の手に持つパッケージには、ビーム残光や爆発の閃光輝く工業プラントのような場所をバックに、銀色のトゲトゲしい装甲を纏った8頭身のロボットが、崩れたクラウチングスタートのような姿勢で正面に写っていた。

段田の熱心なアピールも天塚の心には響かない。

「中学生でロボットとか、ちょっとガキっぽいし…」

青島は恐る恐ると言った様子で、オススメデッキの魅力について語り出した。

「ぼ、僕のオススメはオドロン!幽霊屋敷…」

「屋敷に忍び込んだ泥棒を幽霊達が家具に憑依して追っ払うっていうのがテーマになってて、相手のコマに反応してスキルを発動しますので…」

「バトルを無効にされた相手の怒り顔を見られるのが最高に気持ちいいデッキですので…」

青島の手に持つパッケージには、古びた洋館が中央に据えられ、その扉から時計やティーポット、衣装ドレッサーの殻を被った様な幽霊達が飛び出してきている。

パッケージ端に移る二人組は、屋敷から追い出された泥棒を写しているのだろう。

気になるのが幽霊のデザインで、キャラクター商品のように愛嬌のあるものでなく、思いっきり描き込まれたリアル調の骸骨のため、とてもおっかないことである。

流石に天塚も丁重に断りを入れた。

「ちょっとパッケージの時点で生理的に無理です…」

四人のプレゼンも空振りとなり、その日の活動はお開きとなった。


(天塚の家)

自宅のリビングで天塚は悩んでいた。

(私の使いたいデッキって何だろう?)

4人のオススメしてくれたデッキが直感的に自分に合わないことは判断できた。

しかし逆にどんな見た目で、どんな戦法だったら使いたいのかの大元のイメージが無いということも理解出来たような状況だった。

(駒場くんみたいに逆境をスキルで跳ね返すみたいなギリギリのプレイは自分には向いていないし…)

(山森くんみたいにパワーを武器に相手に突進するみたいなプレイは自分の性格に合わなさそうだし…)

(段田センパイみたいにコマを破壊して相手を追い詰めるプレイも、破壊されるコマが可哀想だから出来ればやりたくない…)

(青島ちゃんみたいに相手のコマの進行を遅らせながら50ターン経過を待つってプレイも、相手の逆転に怯えながら50ターンも頑張るとか本当に疲れそう…)

「はぁー」

天塚からもため息が出る。

気晴らしにテレビを付けると、低学年女の子向けのアニメの再放送が流れていた。

話の大まかな流れは現代人の人心掌握を目論む悪魔達の侵攻に、現世で研修中の天使が立ち向かうといったものだったと天塚は覚えていた。

(ちょっと前にこんなのやってたな〜)

天塚はそのアニメを見ることにした。


紫色のヤツが放ったビームが一般市民を襲う!

間一髪のところでビームと一般市民の間に主人公の天使が割って入る!

天使が光る壁を展開して一般市民を護る!

何やかんやあって紫色のヤツに天使の放ったビームが直撃して天に昇天する!

一般市民に感謝され、天使の表情も綻ぶ!


アニメを見るうちに天塚の脳裏にある妄想がよぎった。

それは自分が玉座に座り、その眼前に駒場、菜蔵、段田、青島の面子が平伏している光景だった。


4人は口々に天塚を褒め称える。

「天塚様こそがウチのエースです〜」

「いつも大事な勝負を華麗に勝ち上がるそのお姿、感謝の限りです〜」

「我々を全国優勝までお導き下さい〜」

「ほんま天塚はんには足を向けて寝られへんわ〜」

天塚は事もなげに返す。

「私が皆さんを優勝までお守りいたしましょう」


ひとしきり妄想に浸ったあと、天塚は思い立つ。

「そうよ、これだわ!」

天塚はネットでとあるデッキを注文した。


天塚江留:デッキ名「エルの聖域」

天使のような羽根が生えていたり白っぽい服装のデザインが多い。

キャラクターも天使や天界の施設職員のような名前のものが多い。

他のコマのバトルやスキルに対してパワーや耐性付与を行うコマが多い。


(第3-1話 終)

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