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【2巻5/15発売】田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第三章 妖怪の世界に行く

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101.ホテルマン、家に帰る

「おーい、テケテケ勝手にいなくなるなよ!」


 聞き慣れた声に俺たちは顔を見合わせる。


「牛島さん!」

「「「「うっしー!」」」」


 大好きな牛島さんの声が聞こえたからだ。ただ、なぜかこっちの声が聞こえていないのか、気づく様子はない。


「兄ちゃんたちもいなくなって、お前までいなくなったら……」

『テッケエエエエエ!』


 何かを呟いていた牛島さんはテケテケを抱えると、そのままどこかへ行ってしまった。

 気づいた時には鳥居の奥は普段と変わらない森になっていた。


「ふく、もう一回やってみて!」

「ああ」


 ケトに言われて再びお地蔵さんに祈る。


「〝地蔵の祈りは帰還の鍵。さもなければ消える〟」


 ただ、鳥居が光ることはなく何も起きる気配がない。


「……呪うよ?」

「いやいや、訳のわからないことで呪われたら困るよ」


 なぜ鳥居から牛島さんの姿が見えたのかはわからない。

 俺がさっき助けを求めたから、勝手に牛島さんに会いたいと思ったのか?

 ただ、鳥居が光る姿を見て、俺は懐かしく思った。

 きっとこれが初めてではない。

 記憶は曖昧だが、幼い頃に経験をしているような気がする。


「みなさん、早く帰りましょう」

「サラ、お腹空いてきた」


 ずっと走り回っていたからお腹も空いてくる。

 今頃は魔物の数も減って町も安全だろう。


「うどん食べ放題楽しみだな!」


 俺たちはお地蔵さんに手を合わせて、森から出ることにした。



 しばらく歩くと、森の外から激しい音が聞こえてきた。

 まだ魔物との戦いは終わっていなかった。

 俺たちもすぐに駆け寄ると、奥から盾を担いだ男が走ってきた。


「あっ、やぶきん」

「おい、お前らどこに行ってたんだよ!」


 矢吹は心配そうに俺の周囲をクルクルと回る。


「どうしたんだ?」

「どうしたもないだろ! 突然いなくなったからびっくりしたぞ」


 どうやら矢吹は俺たちの姿が見えないことに気づき探していたのだろう。

 矢吹は俺の番熊だからな。


「あの大きな牛は倒したの?」

「アステリオスか? あいつと戦うのは二度目だから楽勝だぞ」


 矢吹は過去に戦ったことがあるようだ。

 一人で畑のダンジョンを探索するぐらいだもんな。


「矢吹もうどん食べるために帰るだろ?」


 囮役は充分に働いた。

 あとはベテランの冒険者に任せればいいだろう。


「いや、俺たちはダンジョンに帰るぞ」

「はぁん!?」


 突然の提案に俺は驚いた。

 うどんのためにせっかく頑張ったのに、食べられないなんて……。


「えー、うどんたべたいよー」

「やぶきん……呪うよ?」

「熱々のうどんが待ってますよ」

「エル、熱々のうどん食べられないじゃん」


 妖怪たちも矢吹をジーッと見つめる。ただ、矢吹も考えを変えるつもりはないようだ。


「ダンジョンでスタンピードが起きれば、長い期間ダンジョンは封鎖される。長いこと帰れなくなるぞ」


 矢吹はこの混乱している状況で帰るべきだと思ったのだろう。

 このまま長いこと滞在すれば、本当に俺たちは帰れなくなりそうだ。

 それに――。


「牛島さんが心配しているかもしれないね」


 鳥居の奥でどこか悲しそうな顔をした牛島さんを思い出す。


「うっしーにあいたいな」

「オイラも帰る!」


 さっきチラッと姿を見たのもあり、牛島さんが恋しくなってきた。


「うどんなら牛島さんに作ってもらえばいいんじゃないか?」

「おっ、それがいいね!」


 牛島さんのうどんは一番美味しいからね。

 俺たちはバレないようにこっそりと獣の闇庭に向かった。



「やぶきん、何かいる?」

「いや、魔物も見張りもいないぞ」


 ダンジョンの入り口には誰もいないようだ。

 魔物の姿も見えないため、帰るなら今がチャンスなんだろう。

 俺たちは急いで中に入っていく。


「うわー、荒れてるね」

「ここがダンジョンのストッパーになっていたのかもな」


 前に迷い込んだ時に俺たちが休憩していたところは荒らされていた。

 光る石もその辺に転がっており、輝きが弱くなっている。

 明かりが眩しくてチンパンジーが近づかなかったことを考えると、矢吹が言うようにこの場所が妖怪の世界に出て行かないように止めていたのだろう。


「石を集めて置いておこうか」


 俺たちは散らばっている光る石を一箇所に集めていく。

 次第に明るさは連鎖するように輝きが強くなり、広間は明るくなっていった。


「これでしばらくは大丈夫かな?」

「そもそもここで生活しなければ、外に魔物が出なかったんじゃないか?」


 矢吹の言葉に俺は静かになる。

 確かにここで生活していた時に石を明かりがわりに持ち運んでいた。

 それが原因だったら俺たちのせいになるだろう。ただ、今頃そんなこと言っても仕方ない。

 あの時は命がけだったからな。

 そして、今も命がけなのは変わらない。


「やぶきん、あっちに何かいるぞ!」

「はいはい」


 矢吹は呆れたように魔物に斬りかかる。

 ダンジョンの中に魔物がいないわけではないからね。


「うどんたのしみ!」

「オイラ大盛りにする!」


 帰ったら牛島さんのうどんが待っている。

 絶対にうどんを作ってもらうからね。


「おっ、そろそろ出口に着くぞ」

「いや、こっちが入り口じゃないか?」

「それもそうか」


 久しぶりに我が家に帰れる。

 それだけで心が落ち着いてくる。

 妖怪の世界が嫌いなわけではないけど、体も休まらないし、何度も薬草採取ばかりで気が滅入りそうだったからね。だが、俺たちは肝心なことを忘れていた。


「んっ……なんか臭いぞ……」


 ダンジョンから出た瞬間、鉄みたいな匂いが鼻を刺す。

 血の匂いが周囲を漂っている。

 まるで妖怪の世界で戦っていた戦場がそのままあるみたいだ。


「なんだこれ……」


 足元には乾いた黒い染みが広がっていた。

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