Section11
Sierra
――とうとう私の番がきた。
エルナの演奏はほぼ完璧だったし、強弱のつけ方も今まで演奏した中でたぶん一番だった。
(――私も成功させないと、一緒にブロンシェルにいけなくなるんだよね)
そんなことを考えていると、また緊張してしまう。
でも……今は緊張してちゃいけない。
舞台に上がってエルナと同じようにお辞儀をする。
拍手が聞こえてきて……また緊張。
本当だったらここで緊張してちゃいけないんだけど……
ちらっとエルナを見てみると、うれしそうに微笑んでいる。
(――エルナに負けないようにがんばらないといけないよね)
お辞儀をし終わってあたりがシーンとするところで、わたしはイスに腰を下ろした。
鍵盤に手を乗せて、最初の一章節を弾き始めようとした――その時。
何かが聞こえた――すごく大きな乾いた音が。
(――何が……起きたの……?)
――パーン――
連続して三、四回聞こえる音。
それが、銃声だとわかったときには……あたりはもう大騒ぎだった。
観客が次々とあわててホールの外に出ようとしている。
そんな光景を、私はただ淡々と見ていた。
唖然としている私に、エルナが走ってくる。
「シエラちゃん!大丈夫?」
「うん……大丈夫」
なんだか、またエルナに助けられちゃってる――
いつもとは立場が反対でちょっと混乱してしまいそう。
今混乱の真っ最中だけど……
「エルナ、さっきの銃声だよね……?」
「うん、たぶんそうだと思う」
私たちがそんなことを話していると、アルフォンスとアネットが舞台に駆けつけてきた。
「シエラ嬢大変です、モデラスト候が――」
(……え?)
一瞬耳を疑った。
そんなことはありえないとも思った。
でも舞台の上でいまだに聞こえる銃声は……紛れもない現実だった。
「――お父様が……そんな」
……足に力が入らない。
私はエルナに抱きかかえられるように倒れこんでしまう。
「シエラちゃん!しっかりして!」
驚くほど大きなエルナの声。
――不意に男の人が二階の観客席から落ちてくるのが見えた。
きっと護衛兵に撃たれたんだろう。
……その時に、あの男の人がお父様を撃ったなんて考えは私には浮かんでこなかった。
私は何も考えられないまま、エルナに抱き抱えられてうずくまっていた。




