Section10
Erna
――舞台に上がって、挨拶をすると大きな拍手で迎えられた。
その規模の大きさに少しまた、気が重くなっちゃう。
……でもさっきシエラちゃんと約束したんだから、絶対に成功させたい。
横目で舞台裏のシエラちゃんをみると、緊張しながらも私を見守ってくれてるように思える。
(――シエラちゃん、アルフォンス、私頑張るね)
いつもは何一つできなくて不器用な私だけど、今日は頑張ると決めたんだもん。
顔を上げて、イスに座って深呼吸。
私は観客の皆が静まったのを確認しながら、鍵盤に指を乗せる。
割と落ち着いた感じで、私は最初の章を演奏し始めた。
音がずれないように、早くも遅くもならないように、慎重に――
滑らかな音が流れながらも、私は気をつけて演奏していく。
……気のせいか、一秒一秒がすごく長く感じる。
(――もうそろそろ中盤……)
曲が中盤に差し掛かったところで、私は思わず緊張してしまう。
……ここは、一番苦手なところだから。
ミスをしないようにと自分に言い聞かせるけど、思うように指が動かない。
一番曲が早くなったところで、右手の演奏が……追いつかない――
(――あ!)
鍵盤に乗せた指を次の鍵盤に乗せようとした時、案の定追いつかず少し音がずれてしまった。
――間違えちゃった……
一番苦手なところだけに練習を多くしてたけど――
でも、ここで演奏をやめるわけにはいかない。
最後まで弾かないと……まだ分からないから。
――しばらくして終盤に入ると、自分でも思ったよりうまく弾くことができていた気がした。
最後まで気を抜かないように、丁寧に演奏する。
一番最後まで弾き終わったところで、私は手を止めた。
(――なんとか、最後まで弾けた……)
私は手を置いて顔を上げると……大きな拍手が聞こえてきた。
……気をとられるのもつかの間、舞台に立ってお辞儀をしないと。
そそくさと前に出ながら、私はおじぎをする。
なんとか舞台の裏に回りながらシエラちゃんを見ると、満面の笑みを浮かべていた。
「エルナ!すごくよかったよ、今までの中で一番うまいと思う!」
「……ありがとう、シエラちゃん。シエラちゃんも頑張って!」
「うん、なんかエルナの演奏聴いてたら負けてられなくなってきたよ」
シエラちゃんも俄然張り切っているみたいでよかった……
何はともあれ私の演奏は思ったよりよかったみたい。
なんかちょっと安心しちゃった――
「エルナ、じゃあ私頑張ってくるね」
「うん、シエラちゃん、頑張ってね」
そう言って私はシエラちゃんが舞台に上がるのを見送った。




