Section9
Sierra
――いよいよこの日が来てしまった……
コンサート当日、朝はいつもマリエルが起きてる時間と同じくらい早く起きて、バタバタとご飯を食べたり着替えたりと準備に追われていた。
だいたいの準備などはマリエルをはじめとしてお世話係の人がやってくれるから私はテキパキと動けば良いだけなんだけど……
やっぱりそれだけでも難しいと思っちゃうところが私はまだまだ子供だと思う。
そして今はエルナと一緒に舞台裏にいるんだけど、本番になって緊張してきてしまった。
「シエラちゃん……?どうしたの?」
「うーん、ちょっと緊張して来ちゃって――」
「大丈夫だよ!ちゃんとやってきたことを出し切ればきっとうまくいくと思う!」
――なんだか、今日のエルナはすごく自信がある……
いつもだったら私が励ます側なのに、今日は逆だ。
「……エルナ、何で今日はそんなに自信があるの……?」
私は疑問に思っていたことをエルナに聞いてみた。
「シエラちゃん……ほら、見て」
エルナが指差したのは――舞台裏からのぞく観客席。
大勢の人が集まっていて、みんな静かに舞台を見つめている。
私の後ろを回りながら、エルナは口を開いた。
「みんな見に来てくれてるんだよ、シエラちゃん」
「アルフォンスも、マリエルさんも、シエラちゃんのお父様も……」
確かに、よく見たらこの前約束したアネットもちゃんと来てくれている。
一番前の席に座りながら私の出番を待つように。
――そして、お父様は観客席の上段のほうで見守っている。
位が高い人はあの上のほうの席から私たちの演奏を鑑賞するんだよね。
王様は来ていないようだけれど、アルジェントの大きなコンサートだけあって、名家の貴族も出席しているのがわかった。
私が周りを見渡しているのを見て、エルナは言う。
「――シエラちゃん、みんながいてくれたから私ここまでこれたと思うの」
「アルフォンスがいなかったら、私は身よりもないまま死んじゃってたかもしれないから……」
(――そうだよね、エルナにとってアルフォンスは本当に大切な存在……)
エルナは両親がいない。
そんなエルナが、今は私を励ますように自信を持ってコンサートに望もうとしてるんだ。
(――私も、がんばらなきゃ!)
「そうだよね、みんなが見てるんだからがんばらなきゃいけないよね」
「……うん、シエラちゃん、がんばろう」
「ありがとうエルナ、一緒にコンサートでいい結果を出して絶対ブロンシェルにいこう!」
「うん!じゃあ私そろそろ出番だから、行ってくるね」
エルナはそう言って舞台へあがって行く。
やっぱり、いつもよりなんか凛々しい感じ――
エルナがお辞儀をしたところで、拍手が聞こえてきた。
(――いよいよね……)
私は拍手が聞こえなくなった後、エルナがピアノの前のイスに座るところを固唾を呑んで見つめていた。




