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Entwined complexity  作者: emiru
過去編(第二章)
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Section6


Sierra

一通りの食事を済ませた後、私たちはエルスリールの家に帰る仕度をしていた。

もうそろそろ日が沈んじゃうからエルナに帰る挨拶しないとね。

「エルナ、それじゃ私たちは帰るね」

「うん、シエラちゃん、また来週ね!」

「そういえば、今度の食事会はどちらですることになったのですか?」

アルフォンスに聞かれて、私は本来の目的を思い出した。

私が答えようと思ったら珍しくエルナが口を開いた。

「シエラちゃん、来週シエラちゃんのお屋敷に行ってもいい……?」

「うん、またいろいろ話そうね」

結局今度は私のお屋敷で食事会をすることになった。

そんなやり取りをしながら、私とマリエルは帰路につくことにする。

エルナにお別れを言って、私は馬車に乗り込んだ。

馬車の中でゆったり揺られながらくつろいでいるとマリエルが話しかけてきた。

「――お嬢様、お疲れですか?」

「……え?疲れてないけど……」

「それなら良いのですが……」

マリエルは何か言いたそうに言葉を区切りながら話している。

こんなことをマリエルが聞いてくるときは私が何か気にかけているときだと思う。

(――何か顔に出てたのかな?特に疲れたってことはないんだけど……)

「マリエル、私疲れているように見える……?」

「……はい、見たところお疲れのようだと思いましたが……」

「うーん、疲れてはいないんだけど、なんだか今日はいろいろあったなって思ってはいたかな」

「エルナお嬢様のことですか?」

――さすがマリエル、考えていることをすぐ当ててくる。

確かに今日は色々あったし、そのほとんどがエルナとの間のことなんだよね……

マリエルだったらちょっと考えれば分かっちゃうことだったのかもしれない。

「うん、ちょっと軽く喧嘩……というかすれ違っちゃって」

「……そうでしたか、どんなことがあったのかよろしかったら聞かせてもらってもいいですか?」

マリエルにそう聞かれて、私は今日のエルナとの間にあったことを順に話していく。

まず、噴水の前で絵になっていたエルナが綺麗だと思ったこと。

そして私がエルナの話を聞いてなくてすれ違っちゃたこと。

でも最後にはちゃんと仲直りしたこと。

私が話している間、マリエルは私の話を静かにうなづきながら聞いていた。

まるでそれは、小さいころに私がお母様に話したような感じだった。

マリエルと話していると、しばしばそんな風に感じることがある。

――お母様は今は病気で寝込んでいるけれど……

でも、病気で寝込んでるからこそ、そんな風に感じるのかもしれない。

あまりこんな風に話すことがないから、ふと小さいころの感情を思い出す。

マリエルはでも、そんな雰囲気を持っている。

だからこんなに気軽に話すことが出来るのかもしれないし、お母様がマリエルに世話係を任せたのかもしれない。

そんなことを思いながら、私は一通りマリエルに今日のエルナとの出来事を話して帰路についた。


しばらくしたある日、私はいつものように音楽室でピアノの練習をしていた。

だけどもうコンサートも近いし、練習にも気合を入れて望んでいる。

間違えた部分を何度も何度も弾きながら、少しづつ弾けるようにしていく。

私は朝からピアノに夢中になりながら鍵盤をたたいていた。

――気がつくと、途中何度か休憩を挟みながらではあったけど、あっという間に昼過ぎまで時間が経ってしまっていた。

ピアノを弾いているといつも時間を忘れてしまう。

マリエルが何にも言わなかった時は本当に日が暮れちゃうほど弾いていたこともあるし…

とりあえず、もうお昼になっちゃったことだしそろそろ昼食を食べないと。

そう思って私がは音楽室を出ようとすると、ちょうどマリエルが私を呼ぶ声がした。

「――シエラお嬢様、玄関まで来ていただけますか?」

私はマリエルに返事を返してから少し考える。

(――玄関?私を呼んでいるってことはお客さんかな……)

誰が来たのかを考えながら玄関のほうへ向かう。

ちょうど玄関に向かって歩いている途中にマリエルに会った。

一応私に来客かどうか確かめるついでに誰が来たのかを聞いてみる。

「マリエル、私にお客さんだよね?」

「はい、そうですよ」

「お客さんって……誰?」

「アネットお嬢様ですよ、お昼をご一緒したいとのことで……」

――アネットが来てくれたのね。

私とお昼を一緒に食べるためにわざわざ来てくれたのかな……?

「アネットお嬢様は玄関でお待ちしておりますよ」

「……あ、そうだったんだ」

(――かなり待たせちゃってたら謝ろう……)

マリエルに呼ばれてから結構時間が経ってるし、いつまでも待たせちゃってたらせっかく来てくれたのにアネットに悪いよね。

そう思って私は急いで玄関に向かう。

すぐに玄関まで来て扉を開けると――

「シエラお姉さまー!!」

「ア、アネット!?」

扉を開けたとたんにアネットにいきなり抱きつかれてしまった。

突然のことで、かなり驚いちゃったけど……

(――相変わらず……ね)

私より4歳くらい年下だから、なんとなくそれが可愛いというか……許してしまう。

アネットは私の従姉妹にあたり、私のことはいつも「お姉さま」と呼んでいる。

マリエルとも仲がよくて、家に来るとよく話をしているのをときどき見かけるんだけど……

(――話していることをちょっと聞いてみると、私の話なのよね……)

私がそんなことを考えていると、アネットは私に尋ねてくる。

「お姉さま、お食事をご一緒してもいいですか……?」

「……うん、大丈夫。さっきマリエルから聞いたから」

「やったー!もし駄目だったらどうしようかと思っちゃって――」

……本当はちょっと忙しかったりするんだけどね。

でも、リュミエールの屋敷からここまで来てくれたんだし、ちょっとお昼を楽しむくらい大丈夫かな。

そう思った私は、アネットとお昼を楽しむことにした。

玄関の前から中庭に移動して近くにあるベンチにアネットと一緒に腰掛ける。

「お姉さま、今日はパンを焼いてきたんです!」

「そうなんだ、アネットが作ったの?」

「ええと、私は手伝っただけなんです……」

――そうだよね。

すごく上手に出来てて、見るからにおいしそうだし。

アネットがこれくらいの物を作れたら正直すごいと思う。

「ちょっと味見してもいいかな?」

「はい!あの、ジャムとかも持ってきたので一緒に食べてくださいね」

そう言ってアネットは持っていたバスケットの中から瓶の中に入ったジャムを取り出した。

(――これはオレンジのジャムかな?)

疑問に思った私はアネットに聞いてみる。

「これって、オレンジのジャムだよね?」

「そうですよ、これは私が作りました!」

「……え?ジャムは全部一人で作ったの?」

「はい!このジャムは私が一人で作ったんです」    

「それはすごいじゃない!おいしそう」

ジャムの入ったビンを見てみても、きちんと作ってあるような気がする。

パンよりもジャムの方が作るのは難しいと思うんだけど……

(――私じゃパンもジャムも作れないし……)

そんなことを考えていると、アネットが口を開いた。

「……お姉さま、そろそろ食べませんか?」

「うん。ごめんね、何か食べる前にこんなに時間かけちゃって――」

「そんなことないです、私お姉さまと話せて嬉しいから……」

「ありがとうね、それじゃあ食べていいかな?」

「はい、いっぱいあるのでどんどん食べてくださいね」

アネットに勧められて、パンにジャムをつけて食べてみる。

オレンジの甘酸っぱい香りが口に広がり、すごく風味があっておいしい。

「――すごくおいしい」

「本当ですか!がんばって作ってよかったです」

「また今度作ってもらえるかな?」

「はい、お姉さまのためなら作ります!」

「あはは……ありがとうね」

何だかアネットって、私のことになるとすごくがんばってくれるんだよね。

嬉しいんだけど……ちょっと複雑な気持ちがする。

「あの、お姉さまって今度のコンサートに出るんですよね?」

「うん、そうだけど……それがどうしたの?」

「すごいじゃないですか!わたし絶対見に行きます」

「アネット来てくれるの?」

「当たり前です!お姉さまの晴れ舞台を見逃すわけには行かないので!」

「ありがとう……」

なんだかいつもアネットと話していると、アネットの勢いに押されちゃうんだよね。

……でも、アネットのこういう陽気なところは女の子らしくていいと思う。

こんな風にアネットとお昼を過ごしたのは、いい気晴らしになったかもしれない。

私はそんな気分の中でもうすぐ始まるコンサートのことを心の中に留めながらお昼を過ごすのだった。


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