Section4
Erna
「それでは、この辺でそろそろ……」
アルフォンスはそう言うと、食事を終わらせるような合図をする。
マリエルさんのサンドウィッチは本当においしかったと思う。
「ごちそうさま、とってもおいしかった」
シエラちゃんはマリエルさんにお礼を言う。
(――私もお礼言わないと……)
「……マリエルさん、サンドウィッチおいしかったです」
「皆さんのお口に合ったようで良かったです。今度、エルスリール家のお屋敷に来たときでもまた――」
「ええ、そうですね、是非お願いしたい」
アルフォンスもマリエルさんのお料理が気に入ったみたい。
「今度お見えになるのは……来週でしょうか?」
マリエルさんが私のほうを見ながら言う。
……ええと、ええと……私が答えればいいのかな?
とりあえずシエラちゃんに聞いてみよう。
「シエラちゃん、どうする……?」
「そうね……ちょっとお庭で散歩でもしながら考えない?」
……お散歩はいいかも。
ちょっと外に出て、気分転換するのもいいよね。
「……うん、そうしよう」
私がお庭に出て散歩する事をシエラちゃんに話すと、アルフォンス微笑んでいて了承してくれたみたいだった。
なんだかあんまり外に出て遊ぶ事とかないから、久しぶりでわくわくしちゃう。
(――こんな時間がいつまでも続いたらいいな……)
たぶんシエラちゃんがいれば続けられると思う。
……そういえば、お庭に行くんだよね。
きっと噴水のあたりには綺麗なお花が咲いていると思う。
……シエラちゃんをつれて一緒に行ったら楽しそう!
「――シエラちゃん、そろそろお庭に行かない……?綺麗な花が咲いてるから……」
「そうね、じゃあ少し外に出て予定を考えましょう」
私がシエラちゃんを誘うと、すぐに答えてくれた。
……席を立つとマリエルさんがシエラちゃんに何か言っていた。
「……お嬢様、私はここに居ますから、お庭の散歩が済みましたら戻ってきてくださいね」
マリエルさんが言うのにあわせてアルフォンスも私に言う。
「私もここに居ますので……エルナお嬢様、シエラ譲と散歩を楽しんできてください」
アルフォンスにそういわれて私は頷いて、私は散歩に行く事にした。
早くお庭に行きたいので、シエラちゃんの腕を取って言う。
「シエラちゃん、行こう……?」
「……う、うん、じゃあ行こうかな」
今日は天気がいいから気持ちよさそう。
……お庭で話しながらシエラちゃんと一緒に楽しく過ごしたいな――
そんな事を思いながら、私はシエラちゃんを案内し始めた。
「シエラちゃん、こっちだよ!」
「ちょっとエルナ、待ってー!」
……シエラちゃん、遅いよー。
早く噴水のところに案内したいのに。
と、そんな事思っている間に着いちゃった。
私は後ろにいるシエラちゃんのほうを振返って叫ぶ。
「シエラちゃん、ここにきて!」
私がそういって立ち止まると、やっとシエラちゃんは追いついてくれた。
「……エルナ、そんなに急いで見せたいものって何なのよ……」
ちょっと息を切らせながら答えるシエラちゃん。
流石に急がせすぎちゃったかな……?
そんな事を考えながら、私は噴水の前に立った。
「うぅ……ごめんねシエラちゃん……でもほら、みて!」
「その前に、大体分かってるなら最初から歩けば――」
……どうかな?
ここに咲いているお花も綺麗だし、シエラちゃん喜んでくれると思うんだけど……
「シエラちゃん、どうかな……?この周りのお花は私が植えたんだよ」
私はシエラちゃんに問いかけてみる。
……でもなんだか聞こえてない……みたい。
「シエラちゃん……?」
「……え?エルナ、どうしたの?」
――やっぱり何も聞いてなかったんだ。
シエラちゃんひどいよ……せっかくの噴水とお花なのに。
「どうしたのって……シエラちゃん、ひどいよ……私が聞いてたのに」
「……ええと――」
もうシエラちゃんなんか知らないもん。
せっかく私のお気に入りの場所に案内したのに……
それにシエラちゃんは他の事考えてるみたいで上の空だし……
「シエラちゃん、何も言ってくれないなんてひどいよ……もう知らないっ!」
私はそう言って走り出す。
こんな事になるなら案内なんてしなければ良かった。
――はぁ……嫌な気分。
しばらく走って、私は小さな建物のベンチに座って一人で考え事をしていた。
なんかシエラちゃんやアルフォンスと揉め事をすると、一人でどこかに行きたくなる。
それが私の悪い癖なのかもしれないけど……
(――でもシエラちゃんだって、何か言ってくれても良かったよね……?)
私が悪いわけじゃないもん。
シエラちゃんにどうかな?って聞いたのに答えてくれなかったシエラちゃんが悪いんだよね。
だから私が悪いわけじゃない……もん。
……でもちょっと寂しい。
シエラちゃんがいないとなんだか退屈になっちゃいそう。
そんな事を思っていると、不意に優しく誰かに肩を叩かれた。
「――エルナ、さっきはごめんね……」
後ろにいたのはシエラちゃんだった。
「……シエラちゃんなんか知らない……」
――もう知らないもん。
「……あのねエルナ、さっきのことなんだけど」
「……」
私はシエラちゃんの言葉を聞き流して顔をそらす。
だけど、シエラちゃんは話を続けた。
「さっき、エルナが噴水の前で私を呼んだでしょ?その時ね、その……なんていうか、思わず見とれちゃって……」
「……え?」
……どういうこと?
「こんな事いうの恥ずかしいんだけどね、エルナがあまりにも周りの景色に合ってたから、なんだか物語に出てくるようなお姫様見たいな感じがして――」
「だからエルナが言ったこととか、聞きそびれちゃったみたい、ごめんね……」
――そうだったんだ。
私に見とれてたって……だからあの時何も聞こえてなかったのかな。
「――シエラちゃん……本当にそうだったの……?」
ちょっと不思議に思ってシエラちゃんに聞いてみる。
「うん……その、本当にごめんね」
じゃあ……誤解だったんだ。
ええと、ええと、どうしよう――
(――シエラちゃんにすごく悪い事しちゃった……)
とりあえず謝らないと。
「シエラちゃん、私もごめんなさい……何だか一人で勘違いしちゃって……」
「ううん、気にしないで!元はといえばちゃんと聞かなかった私が悪いんだし」
「私、シエラちゃんにひどい事言っちゃった……」
私のせいで、お庭のお散歩が台無しになっちゃった。
「だからエルナ、もう気にしないで……ね?」
……でも、シエラちゃんが優しく声をかけてくれたから良かった。
でも次からは気をつけないとね。
「じゃあ、もうだんだん暗くなってきちゃったし仲直りしよう」
「……うん」
私がそう言うと、シエラちゃんは手を差し伸べてくれた。
その手を私は取りながら立ち上がって一言。
「お屋敷に戻ろう……?」
そういって私はシエラちゃんの手を引っ張って、お屋敷に向かった。




