はみ出す愛
「ではではっ!大会のルール説明をさせていただきますっ!
形式は勝った者だけが次へ進めるトーナメント戦!
最後まで勝ち残った勝者には、金貨10,000枚!
ですが、今回は勝ち負けではなく、自分をアピールすることが大事です!
勝って嬉しい、負けて悔しい。それは当たり前!
最後に自分が後悔しない戦い方をしてくださいっ!!」
ハルナの解説で、会場が盛り上がる。
今回は勝ち負けは関係ない。とにかく目当ての国家に自分をアピールすることが大切だ。
とはいえ、金貨10,000枚は欲しい。何が何でも欲しい。
「はいっ! ルール説明は終わりです!
ではっ、続いて現対国家戦1位【白銀の守護要塞】より、『白銀の魔女』さんからお言葉をいただきたいと思いますっ! では、どうぞっ!」
ハルナは『白銀の魔女』カナデ・ミハマにマイクを押し付ける。
少しめんどくさそうな顔をしつつも、マイクを受け取り口を開く。
「……私はこの中にいる一人にしか興味はないから。
それ以外は、勝手にして」
冷酷。
というか、あまり興味ないって感じだ。
そもそも、あっちの世界では彼女も俺と同じく、元ソロプレイヤーだ。
「剣姫が入ってくれるなら作る」と言って、俺は2つ返事で了承した――らしい。
正直そこの記憶が曖昧だ。
だから俺は、何も知らないまま彼女に国家を作らせてしまったというわけだ。
こっちの世界ではどうなのかはわからないが、あの態度的にこっちでも国家には興味はないのだろう。
「……ではっ、第1回戦を始めるので、選手の方は試合場に来てくださーい」
盛り下がった会場で、ハルナの声だけが響き渡っていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「カナデさん! なんですか、あれはっ!」
試合まで時間があったので、先にお手洗いに来た俺。
トイレから出ると、外で白銀の魔女に誰かが文句を言っている。
物陰に隠れ、こっそりとその様子をうかがうと――
「一人にしか興味ないって! あなたに憧れて国家に入ってくれる方だっているんですよ!?」
「……本当のことだから。それに、リニアだってあの子以外に取るつもりないでしょ?」
「うっ……そ、それは、彼しか来てくれなかっただけだし……」
リニアだ。
リニアとカナデが言い争っている。
あの二人、知り合い――なのか。仮にも国家の主将だもんな。
「……今回こそは、彼を手に入れるから」
「彼は『灼紅の剣姫』じゃありませんよ? だから今度も何もないです」
「……それでも、今回こそは私が手に入れる。そして――」
「彼以外のメンバーは全員クビにする。彼と私が居ればそれだけで最強だから」
なんかヤバいことになってるんだが。
え、なに?白銀の魔女様は俺にゾッコンなの?
いや、まぁ、嬉しいけど……なんというか――
「”メンヘラ”みたい、ですか?」
「うわぁっ!!」
背後から声をかけられる。
俺は驚いて、大声を上げてしまった。
「ふふっ。コソコソしてどうしたんですか、ヒナタさん?」
美しい顔で微笑む悪魔――否、妖精族受付嬢、メイさんだ。
「そんなことしてると、王国騎士団を呼ばれちゃいますよ?」
「いや、別に変なことは――げっ」
目の前で俺を見つめる二人――リニアとカナデの姿がそこにあった。
リニアの顔色がどんどん曇っていく。
「……ヒナタ、君は私の国家に入るべき。私と一緒に、最強を目指そ?」
開会式の時に見せた冷ややかな目ではない。
ちゃんと人を見る目で俺を見つめ、俺の手を握りながらそう伝える。
「……い、いや、俺は……って、何してるんですかっ!」
カナデに握られた俺の手が、いつの間にかカナデの豊満な胸に当てられていた。
「……男の子は、こういうのが好き、でしょ?
私と一緒なら、いつでもこういうことして、いいよ?」
「い、いや。そういうことじゃ……」
正直入りたい。
今すぐにでも、土下座してでも入りたい。
でも、俺は決めたんだ。それを裏切ることは絶対にできない。
それに、リニアとメイさんの俺を見る目が痛い。
「お、俺にはもう将来を誓った人がいるのでっ!!」
「でも、誓っただけでしょ? なら大丈夫。私と誓い直そ?」
より強く、俺の手を胸に当てる。
あぁ、二人の俺を見る目が更に酷くなっていく。ゴミを見る目だ、あれは。
「と、とにかく! 俺はあなたの国家には入らないので!」
俺は力強く腕を振り払う。
このままここにいても埒が明かない。
会場に戻ろう。そうこうしてる間に試合順も回ってきてるだろうし――
「……な」
「な?」
「なんでなんでなんでなんでなんでーーっ!!」
壊れた。
あの、冷酷な彼女が、おもちゃを買ってもらえなかった子供のように駄々をこね始めたのだ。




