試合開始の宣言(ゲームスタート)
大会当日。
ギルド周辺には大勢の参加者が集まっていた。
見えるだけでも100人以上はいる。これを今日一日だけで終わらせるらしい。
勝ち負けは関係ない、と言ってはいたが一応トーナメント戦でやるらしい。
賞金は金貨10,000枚。無駄遣いしなければ、生涯遊んで暮らせるほどの金額らしい。
「参加者の皆さんは、こちらに並んでくださーい!!」
入口付近でハルナが参加者を整列させている。
こう見ると、やっぱ人手不足だよなって感じる。
「ねぇ……あれって」「いやいや、似てるだけだろ」
周りの参加者が俺を見てコソコソと話している。
一応メイさんに「とりあえずオッドアイだけ隠しておきましょう」と言われ、カラコンを付けたけど結局容姿が似てるから意味がないんだよな。
「……っと、忘れてた忘れてた」
ポケットから参加証を取り出す。
これが無いと大会に参加できなくなるからな。
別にフリとかじゃないからな?参加寸前に無くすとか言うフリじゃないからな?
しっかりと参加証を握りしめ、列を進んでいく。
人間、獣人、妖精族。 竜族まで参加している。
皆、試合前の緊張やら興奮やらでザワザワしている。
それくらい、この大会は新人にとって大切な大会なのだ。
「では次の列、入場してくださーい!!」
ようやく自分の並んでいる列の番になる。
参加証は――ちゃんと手に握られている。大丈夫。
「はい、参加証くださーい」
俺はハルナに参加証を手渡す。
これで参加は確定した。
「はい、次の方――」
俺はギルドの入口を過ぎ、受付前に貼り出されたトーナメント表の前に立つ。
さて、俺の順番は――2会場の7番目か。
開会式があと30分後か。どうしよう、友達とか知り合いとかいないし。
周りは仲間内で集まって駄弁ってるのに俺ときたら……
「ねぇ、あなた……」
友達がいないことに悲しんでいると、背後から声をかけられる。
振り向くとそこには、銀色の長髪を靡かせ、人を蔑むかのような冷ややかな目を持った女性――
『白銀の魔女』カナデ・ミハマがいた。
「……白銀の魔女さんが、俺なんかに何の用ですか?」
「あなた……私と同じ匂いがする」
「匂い……ですか? すんすん……」
俺は自分の身体の匂いを嗅ぐ。
特に何の匂いもしないはずなんだが。それに白銀の魔女と同じ匂いとかするわけがないだろ。
「うん、同じ”強者”の匂い」
「強者の匂い……?」
「ちょっとカナデさん!!」
カナデの名前を呼びながら、走ってくる青年。
同じ国家の人だろうか。
「はぁ……はぁ……この後、主将会議があるって言ったじゃないですか!!
勝手にうろちょろされるとこま……置いてかないでくださ……どぅえぇぇぇぇ!!」
カナデに説教をしていた青年が俺の姿を見て、後ろに吹っ飛ぶ。
「け……剣姫!『灼紅の剣姫』!! なんで!?」
「この人……剣姫じゃない、よ? 髪も目も違う……」
「えっ!? あ、ほんとだ。似た人か」
いきなり落ち着くな。
というか『白銀の魔女』はやっぱりわかってたか。
「でも、匂いは一緒。私と同じ強者の匂い。
だから、うち、来る?」
「カナデさん!! 勧誘はダメですって!! それに彼は挨拶に来なかったでしょ!!」
「……じゃあ、大会が終わったら、私のところに来て?」
「カナデさん!!」
あぁ、この青年も大変だな。
なんだかお母さんみたいだ。
「すいません、お兄さん。失礼します!」
青年はそう言ってカナデを連れて行く。
「おい、あの新人。『白銀の魔女』に話しかけられてたぞ?」
「しかもビビってねぇ。何者だ?アイツ」
「俺なんて目の前で「どいて」って言われてちびっちまったよ」
周りでまたコソコソと話し始める参加者。
俺を見る目がどんどんと”強者”へと変わっていく。
そこにのしかかる”強者だから”というプレッシャー。
ここで簡単に負けてしまえば、「なんだ、ただのハッタリか」となり、俺への注目が無くなってしまう。
口元が緩む。
あぁ、これだ。
この”プレッシャー”が欲しかった。
この”強者だから”っていう圧が欲しかった。
ここで勝つことで俺は、更なる注目を浴びる。
そして他の強者も俺に注目する。そうなるとどうなる?
俺がどれだけ強いのか、力比べをしに来る。
それを伸してこそ強者だ。
「開会式5分前となりました!! 皆さん、会場へ入ってくださーい!!」
「入ってくださーい」
参加証を回収し終えたハルナが、今度は会場への案内を行う。
それに次いでメイも案内を行う。
さぁ、もうすぐだ。
俺の強者への第一歩が。
俺の最強伝説の序章が、もうすぐ始まろうとしている。
ぞろぞろと会場へ入ってくる参加者。
皆、気合は十分だ。互いが互いを睨み合い、「俺こそが強者だ」と目で訴えかけている。
「ごほん、あー、あー。マイクテストマイクテスト」
壇上でハルナが音量チェックをしている。
彼女はどれだけ働くんだ。過労で死ぬんじゃないのか?
「……よし!」
チェックを終えたハルナが、元気よく、声高々に叫ぶ。
「それでは!! 第105回「新人力比べ大会」を開始させていただきます!!」
「皆さん、準備はいいですねっ?」




