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エデンオブ・オーディール  作者: 斑鳩恭


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7/11

狼煙を上げろ

「では、また新人力比べ大会で」


「はい、よろしくお願いします。ヒナタさんも試合頑張ってください」


 リニアに軽く会釈し、ギルドまでの道をまた二人で歩く。

 「国家対抗戦に3人で出る」と言っていたが、もしかしてもう承認を取れたようなもんじゃないのか?

 それならそうと、あの場で言ってくれれば――


「昨日も言ってたように、この大会前期間は勧誘が禁止されてるの。

 だからあの場では「承認します」とは言えないのよ」


「……いい加減俺の心読むの辞めません?」


「あら、バレちゃった?」


 やっぱり。この人、超感覚(テレパシー)使いだ。

 少しでも変なこと考えたらすぐにバレちまう。


「因みにあなたが昨日の夜シてたこともわかるわよ?」


「あぁ、もう死にたい」


 メイさんがもう悪魔にしか見えなくなってしまった。

 会って二日目の人にもう弱みを握られた。

 「ふふっ」と笑うメイの笑顔はやけに楽しそうだった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あ、メイさん!! お帰りなさい!!」


 ギルドの入り口前。

 掃除をしていたもう一人の受付嬢・ハルナがこちらに駆け寄ってくる。

 俺が今いるこの街『アルカード』――まぁ、始まりの街だな。

 この街でたった二人の受付嬢がこのメイさんとハルナだ。

 メイさんはエルフだったが、ハルナはれっきとした人間だ。

 歳は俺とそう変わらない。元気なことと可愛いこと、あと胸が大きいことが取り柄の女の子だ。

 もう一度言う。胸が――


「ヒナタさん、サイテーですっ!!」


 パチンッと頬にビンタを食らった。

 なんで!? ハルナは超感覚持ちじゃないはず。それに声にも出してないし――


「超感覚持ちって大体『共感覚』スキルとセットでついてくることがあるんですよ、ヒナタさん」


 あ、悪魔だ。

 この女、エルフなんかじゃない。悪魔だ。ダークエルフとかそんなやわなもんじゃないよ、これ。

 

「見損ないましたっ!! せっかく『灼紅の剣姫』に似てるのに……」


 少ししょぼくれるハルナ。

 そんなハルナにこそっと耳打ちをするメイ。


「……実は『灼紅の剣姫』も、始めはこんな感じだったんですよ。

 私なんて――」


「――ッ//////////!!」


 顔を真っ赤にしてその場にへたり込むハルナ。

 何を言ったんだ、メイさんは。

 

 その後、大会の最終手続きを終え、長かった一日が終了した。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



――うるさい歓声。


  高鳴る心臓。


  目の前で俺を見下ろす女性。


  両者とも息が荒い。

  体力もほとんど残っていない。

  それでも、最後の力を振り絞り、剣と杖を交え――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……夢?」


 見知った天井。

 そして。


「おう坊主、今日は大会の日だな!がんばれよ!」


 見知ったおっさんの顔と声。

 俺は身体を起こし、一度伸びをする。


 さっきのは何だったんだろうか。

 夢にしてはやけに景色がリアルだった。

 いや、空間とかは置いといて。なんか懐かしい感じだった。

 あれか? 追体験ってやつか?だったら俺は過去にあれを経験して――負けたんだよな。

 多分。あれ? そもそも俺、こっちの世界に来てからまだ戦ってないよな。それに向こうの世界でも負けは一度もしなかった。もちろん引き分けとかもない。


 じゃあ何だ?予知夢か?


 この大会で、俺は誰かに負けるのか?


 それは嫌だ。


 『灼紅の剣姫』に”負け”のに文字があってはいけない。それは絶対だ。

 俺は勝って、勝って、勝ちまくってそれで――


 ――それで、「陽葵一月」という人間を認めてもらいたい。

 俺は強いんだぞって。凄いんだぞって。

 誰でもいい。一人でもいいんだ。誰かに認めてもらいたいだけなんだ。


 だから俺は。


「……負けられない、絶対に」

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