狼煙を上げろ
「では、また新人力比べ大会で」
「はい、よろしくお願いします。ヒナタさんも試合頑張ってください」
リニアに軽く会釈し、ギルドまでの道をまた二人で歩く。
「国家対抗戦に3人で出る」と言っていたが、もしかしてもう承認を取れたようなもんじゃないのか?
それならそうと、あの場で言ってくれれば――
「昨日も言ってたように、この大会前期間は勧誘が禁止されてるの。
だからあの場では「承認します」とは言えないのよ」
「……いい加減俺の心読むの辞めません?」
「あら、バレちゃった?」
やっぱり。この人、超感覚使いだ。
少しでも変なこと考えたらすぐにバレちまう。
「因みにあなたが昨日の夜シてたこともわかるわよ?」
「あぁ、もう死にたい」
メイさんがもう悪魔にしか見えなくなってしまった。
会って二日目の人にもう弱みを握られた。
「ふふっ」と笑うメイの笑顔はやけに楽しそうだった。
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「あ、メイさん!! お帰りなさい!!」
ギルドの入り口前。
掃除をしていたもう一人の受付嬢・ハルナがこちらに駆け寄ってくる。
俺が今いるこの街『アルカード』――まぁ、始まりの街だな。
この街でたった二人の受付嬢がこのメイさんとハルナだ。
メイさんはエルフだったが、ハルナはれっきとした人間だ。
歳は俺とそう変わらない。元気なことと可愛いこと、あと胸が大きいことが取り柄の女の子だ。
もう一度言う。胸が――
「ヒナタさん、サイテーですっ!!」
パチンッと頬にビンタを食らった。
なんで!? ハルナは超感覚持ちじゃないはず。それに声にも出してないし――
「超感覚持ちって大体『共感覚』スキルとセットでついてくることがあるんですよ、ヒナタさん」
あ、悪魔だ。
この女、エルフなんかじゃない。悪魔だ。ダークエルフとかそんなやわなもんじゃないよ、これ。
「見損ないましたっ!! せっかく『灼紅の剣姫』に似てるのに……」
少ししょぼくれるハルナ。
そんなハルナにこそっと耳打ちをするメイ。
「……実は『灼紅の剣姫』も、始めはこんな感じだったんですよ。
私なんて――」
「――ッ//////////!!」
顔を真っ赤にしてその場にへたり込むハルナ。
何を言ったんだ、メイさんは。
その後、大会の最終手続きを終え、長かった一日が終了した。
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――うるさい歓声。
高鳴る心臓。
目の前で俺を見下ろす女性。
両者とも息が荒い。
体力もほとんど残っていない。
それでも、最後の力を振り絞り、剣と杖を交え――
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「……夢?」
見知った天井。
そして。
「おう坊主、今日は大会の日だな!がんばれよ!」
見知ったおっさんの顔と声。
俺は身体を起こし、一度伸びをする。
さっきのは何だったんだろうか。
夢にしてはやけに景色がリアルだった。
いや、空間とかは置いといて。なんか懐かしい感じだった。
あれか? 追体験ってやつか?だったら俺は過去にあれを経験して――負けたんだよな。
多分。あれ? そもそも俺、こっちの世界に来てからまだ戦ってないよな。それに向こうの世界でも負けは一度もしなかった。もちろん引き分けとかもない。
じゃあ何だ?予知夢か?
この大会で、俺は誰かに負けるのか?
それは嫌だ。
『灼紅の剣姫』に”負け”のに文字があってはいけない。それは絶対だ。
俺は勝って、勝って、勝ちまくってそれで――
――それで、「陽葵一月」という人間を認めてもらいたい。
俺は強いんだぞって。凄いんだぞって。
誰でもいい。一人でもいいんだ。誰かに認めてもらいたいだけなんだ。
だから俺は。
「……負けられない、絶対に」




