閃光の剣士達(ソードブレイカーズ)
「さて、どこの国家にするか……」
大会の手続きをしてもらっている間、俺はボードに貼られている『国家評価表』を眺めていた。
国家評価表というのは、その名の通り『国家』を評価した表だ。
ギルド職員やその国家に所属している人、他の国家の人に評価をしてもらい、それが数値化されている。
今月の評価は、『白銀の魔女』率いる【白銀の守護要塞】が首位を独占している。
やはりこの世界でも彼女のいる国家は強い。
そもそも彼女以外にも手練れが数多く存在している。
例えば『悪鬼』ウォレスマン。彼は国家内で『白銀の魔女』に次ぐ二位の強さを誇っている。
スキル「死の宣告」は、「この呪いを持つ者は即死ダメージを受ける」という呪いを攻撃に付与できる。更に、彼は「無の一撃」という触れるまで見えないという魔法を使用してくる。
つまり、最強だ。
見えない何かに触れたとき、もうそのバトルは終了しているのだ。
では、何故そんな最強な攻撃を使う彼が二位なのか。
まぁ、彼女が一位の時点で察するだろう。それを難なく躱し、更に同じことをやってのけたのだ。
ウォレスマンはさぞ悔しかっただろう。
今まで誰も躱せなかったこの見えない攻撃が初見で躱され、更にそれを真似されるという屈辱。
それほどに彼女は強いのだ。
「……まぁ、無難にここだよな」
こんな二強を相手になんかしたくない。
前世だって倒すのに苦労した二人だ。もう二度と相手になんか――
白銀の守護要塞の評価表の横。
名前のところを意図的に塗り潰したであろう評価表が貼られているのに気がついた。
「誰だよ、こんな悪戯した奴」
評価の内容を見るなり、弱い国家なのだろう。
それに国家所属人数2人って……それは国家として成り立っているのか?
「ヒナタさん、お待たせしました。手続きが完了しましたので、国家の候補を――あら?」
「あぁ、メイさん。これ、誰がやったんですかね」
俺は塗りつぶされた評価表を指差す。するとメイは「それは……」といい、青のパンフレットを開く。
「【閃光の剣士達】ですね。あの『灼紅の剣姫』がいた国家です」
「剣姫が……でもなんで2人? もっといたんじゃ……」
「彼がいなくなってから、みんな抜けていったんです。 彼がいないのなら、この国家はもう終わりだって」
「……つまり剣姫だけが強くて、他の人はみんな彼に頼りきりだったと」
「全員が頼りきっていたわけじゃないんですけど、大体あってます」
酷い話だ。
自分で強くなろうとはせず、他人の名声をあたかも自らの手柄のように扱っていた。
そんな奴、他のところに行っても同じことを繰り返すだけだ。
「リニアさんも頑張ってはいるんですけどね」
「リニアさん?」
リニア――どこかで聞いたことのある名前だ。
どこで聞いたんだっけか。
「閃光の剣士達の現主将です。剣姫に憧れて所属を決めたらしいのですが」
あぁ、思い出した。
あの俺の後ろをちょこちょこ付いてきたあの女の子だ。
いつも俺の後ろをついてきては俺の戦い方を真似してきた子。
そこそこ真似は出来ていたが、いざ実践となるとうまいこといかなくていつも隅っこで泣いていた。
「そう……なんですね」
「恐らくこれを塗り潰したのも彼女でしょうね。他と比べられたくないからこうしたのでしょうけど、他の評価表を見れば、どこのが塗り潰されているのか一目瞭然なんですけどね」
そう言ってメイは、名前の塗り潰されていない評価表を上から貼り付ける。
「で、どうされますか? 所属候補」
俺はも一度評価表に目をやる。
ぜひとも入りたいと思っているのは『白銀の魔女』率いる【白銀の守護要塞】だ。
だが。
「【閃光の剣士達】に決めました」
メイはその言葉を聞いたとき、はじめて俺に笑った顔を見せてくれた。
「ふふっ、ヒナタさんならそう言ってくれると信じていましたよ」
そう言って、メモ帳に何かを書き始める。
「ここが拠点です。まだ所属できるかはわかりませんが、とりあえず挨拶ということで明日、訪問しましょう」
メイはそう言って、拠点までの地図が書かれたメモを俺に渡す。
空中で描いたにしてはやけに線が綺麗な地図だ。これも彼女のスキルなのだろうか。
俺はそのメモをポケットにしまい、ギルドを後にした。




