番外003 拝啓烏丸ソラ、わたしたちは今困ってます 【イオリside】
正直言いますと、こっちの方『だけ』で物語進めたい、ってくらい設定もキャラも眠ってる
語りたい。語りたいぞぉ…!
目的地へ送り届けてもらえる、その言質は既にとった。
正直、現地の治安方面と終点吶喊までの距離が悩みの種ではあるけれど、わたしたちを騙そうという気も伺えないのだから何かしらの方法は確保できているのだろう、と信用しておくことにする。
騙されたときの対処は、こだまちゃんやこはくちゃんが居る時点で護衛というか武装と言い換えても可笑しくないレベルの対応力が備わっているのだし、そもそもわたしたちを騙して得られるものがあんまりないのでは、とわたしはここ数日で理解した。
理解、させられてしまったのである。
「……………………どうしよう、対価が何にも出てこない……!」
わたし、空五倍子 イオリは頭を抱えて懊悩する。
傍から見たら小柄な子がのたうち回る妙な図が其処にあるのだろうが、ぬぅぅと唸る姿は幼女がやるにはNGだと思われる。
というか誰が幼女か。
よく勘違いされがちだが、身体の成長が遅いだけで中身は立派に女子なので、難しい言葉だって知ってるし状況だって理解できる。
そして目の前にある問題をなんとか解決させようと思い悩むくらいには、世間の同年代女子とは覚悟が違うと自負している。
てゆーか、ソラ君と付き合い出すとその辺りは最低限のクリアラインになってくるから気が抜けない。
『誰かが何とかしてくれる』と甘える女子は男子受けもイイのかもしれないけど、ソラ君の周囲でそれをやっていても彼からの愛情は得られたりはしないのだ。
ソラ君はそれなりに人を見る。
そして彼に献身する他の女子が居ることも見て取られるので……、普通に考えれば男性なら尽くしてくれる人を選ぶだろうし、その上で『ある程度以上』の手間も掛からない女子なら云うことも無い、筈だ。
誰だってそーする。考えなくたってそーする。
というか、わたしは付き合い出した経緯が経緯なので、状況に甘んじていると平然と近くにいるこだまちゃんや愛人志望としてでも寄って来ているほのぼのちゃんにすぐ奪われる恐れが……!
女子としての魅力が……! フェロモン的な意味で強すぎるよふたりとも……!
あ、こはくちゃんはあんまり警戒してないです。ナカーマ。
話を本題へ移そう。
わたし達を目的地へ送り届けてくれる、その対価として要求されたのが『異世界の知識』だった。
何時だったか、ソラ君が言っていた。
『テクノロジー』の語源はギリシア語の『技巧』と『学ぶ・倣う』から組み合わされた比較的新しい概念言語であり、『自然界の(人類にとって)役立ちそうな仕組みを模倣することで一種の【簒奪】を伴う』という意味を内包している、らしい。
この世の全は何某かを奪うことでしか其処に在ることを許されず、特に人間はそれが最も顕著だ。
だから折り合いをつけて、奪うことに、奪える立場に立てたことに感謝を忘れてはならない。
と、そんなことも言っていたのはお爺ちゃんだ。
山奥でマタギを嗜んでいるからこそ、そういう自然哲学みたいなことを良く口にしていたけど、ある漫画なんかで見たアイヌの人たちと大体一緒な思考ではある。
獲って食べた動物の骨を、飾って森とか海へ送り返す、のだったっけ?
流石に栗鼠までそうするのは『残り』が無さそうだ、とぼんやり思った。ちたたぷちたたぷ。
とにかく、はっきりと対価を求められたのだから、応えることにも吝かでもない。
返せないモノを要求されてるわけでも無いから、アルバイト感覚で済ませられると思ったものだ。
貰ってばかりなのは心苦しいし、そんなにだらけてばかりだと成長性や脳にも悪いし。
やる気を損なうのはニートへの第一歩だ。
こんな世界でそんなものに引っ掛かったら目も充てられない。
というわけで、『何が返せるのか』を推考し出したところで、冒頭の科白に帰結する。
……めっちゃ文明進歩してた。
異世界舐めててゴメンナサイ……!
「魔法、はむしろこっちが専門だよねぇ。転位で飛ばされてきたことに驚かれもしてないし、実力勝負できるこだまちゃんやこはくちゃんをあっさりと受け入れてる時点で、『それ以上になにかできる』って思った方が納得できるし」
わたしは指折り、自分たちで提供できそうな知識を数える。
その際に『それが欲しがられるかどうか』で思考しなくては対価として成立しないので、『前提』を推理することも忘れてはならない。
元居た世界での【廃技能】とは違うけれど、その辺はソラ君が専門家で、多分だけど秘匿技術だ。
わたしも『使い手』ではあるけど、分析者ではないので詳しくも無いから説明も難しい。
しかし自分で言っててなんだけど冒険者ギルドでチート能力発揮するタイプのマウントの取り合いみたいだなぁ。
凄い能力や性能を持ってることを明け透けにしてドヤ顔見せて、それを受け入れられたら相手の心の広さじゃなくて別の疑心を持つ展開はあまり見ないけど。
……ふと気になったが、ある意味当然の思考のはずなのに、何故に異世界モノのジュブナイルではそっちが『少数派且つ悪』みたいな扱いになるのだろう。
絶対数ではないけど、そういうのがテンプレートで多すぎる。
書いた人たちこそが世間や社会からすれば少数派のマイノリティなのだから、同じ穴の狢をなじることほど空しい話も無いのでは……?
わたしはぐで●まみたいな恰好で、うすぼんやりとそう思った。
話を戻す。
じゃあ日常での、世間一般での技術格差なんかを明かすのはどうか?
「川沿いだっていう理由があるとはいえ、トイレにウォシュレット配備されてる文明と、どのくらい格差があるの……? 荒野に程近い国なのに乾燥も気にならないくらい快適な生活空間だし、食事も美味しいし、多分保存技術もしっかりとしてるし……」
人間にとって大事なのは衣食住で、それらが不備なく巡ってるのなら口出ししても意味が無い。
逆に必要なのは無駄を生むことなのでは? と日頃の家事のルーティン短縮を想定してみたが、どうにも。
「仕組みはわからないけど、空調完備に炊事洗濯が『ヒト』が関わるまでも無く普及してるんだよねぇ」
全自動洗濯機が、既にあるのだ。
水汲みは水道が完備されてるから当然としても、濯ぎと脱水も充分な手動ではない回転式のが。
自分たちの『魔法』で軽い汚れくらいは落とせていた制服だったが、流石に着っぱなしもどうかと思っていたので尋ねたところ、フツーに洗濯機の存在を教えられて使用許可を貰えた。
ちなみに乾燥機も別枠であった。動力なによ。
じゃあ、と余った時間に娯楽を宛てることも思い掛けた、が、
「単純作業ゲームを教えて広める……? いやいや、下手に文化干渉やらかしたらそれを怒るくらいの思考も相手は持ってるよ、パスパス。頭の使い道と時間を無駄にすることに関して苦言されたりしたら目も当てらんないじゃん」
将棋とかチェスみたいな盤上軍議戦略俯瞰は、下手したら『コイツ指揮官としての才覚を探ってる……?』とか疑われる要因にもなる。
そもそも最初にカマナさんたちに遭った時に、『ディスコルディア』からのスパイか? って疑われてた。
今蒸し返しても良いことも無いので、そういう思考ゲーム系は無し。
異世界転生した人が広める物として割と代表的かも知れないけど、あの人たちは広められる相手側のことをどのへんまで配慮してるのかな。
それとも脳の使い方を開拓して軍事調略を目指してる……?
……ドラ●もんにそんな話があったなぁ、原始時代にタイムスリップして現代技術披露して神と崇められたいの●太の話。
「化石燃料とか電気とか、代替えエネルギーだって要らないんだよねぇ……」
自分たちの世界でそっちが主流になったのは、数十億を超える人類総数にくべられるエネルギーのコストパフォーマンスが美味しいからだ。
生まれるエネルギーと其処から排出される余剰を天秤に乗せてでも、人類を『増やすため』には効率として見過ごしても問題ない程度だったからそちらが主流に換わっていった。
この国、ティシトリアの基本的なエネルギー源にその辺りは無かった。
仕組みを聞くことで要らない疑心を抱かれる懸念もあったけど、尋ねてみると意外と話は速くに語ってもらえた。
『デンキ? セキユ、セキタン? ……ふーん? 地下から採れる黒くて燃える水に燃える石……、……それかぁ』
非常に嫌そうな貌を見せて、テトさんは【巨獣】の餌だと教えてくれた。
荒野の真ん中辺りに噴き出てくる場所が偶にあって、それを採集しようとするとあの巨大な怪物らがズンドコ湧いてくるらしい。
本当に餌かどうかは調べられないので判明しないが、集まってくる以上は国内では扱い切れないとのこと。
そして電気は、というと。
『……ジルニトレアの方で、高空に漂う『でかい鳥』が出現する。そいつは特に嵐の、雷がよく鳴る日に集まって来ては落ちてくるんだ。雷に打たれてな。で、ぴんぴんしてまた飛び上がる。……多分、そいつ『雷』を餌にしてるんじゃないかな、と』
うん、詰んでるね。
テトさんの語る【ジルニトレア】という国では名前も無かったその巨鳥は、ティシトリアの文献に【天鳥】とあったらしい。
直接見た大きさは全長が20メートルほどの8対翼の化け物鳥で、墜ちた拍子でごっしゃごっしゃと建物崩されて『コイツ大陸中に出没するのかよ』と戦慄したそうだ。
話を戻すけど、この国にその辺りのエネルギー問題を考慮する必要が無いのは、国土の開拓と人口の増加を余り見込んでいないためだ。
この世界には、先ほども表した通りに『怪物』が居る。
それらが人類の居住圏に踏み込まないのは、『国』として成立している其処らの国土が、『それ以上』の生物らの庇護下に在る為、らしい。
その生物というのが、ティシトリアでは【竜】と呼ばれている。
正式名称は【蠆呪食む三叉の首】。
『それ』は既に遺骸になっているらしいのだが、国土全域に纏まっているために相応の影響が残っており、それより『小さい生物』である巨獣は実際寄り付きもしないらしい。
じゃあ石油使えね? とも思ったけど、それで煽っても『何が起こるか責任も取れない』ので言を噤む。
沈黙は金。
で、人口増加を考慮しない理由は、彼らの寿命に当たる。
『碌に『竜の祝福』も貰えていないのが軍事国家のディスコルディアでな、彼らと俺たちとの根本的な差異が寿命なんだ。彼らが50も生きられないのに対して、俺たちティシトリアやネフティスの住民は優に10倍は生きる』
現代人からしても長寿国だ。
かてて加えて、彼らは『竜の祝福』の影響か若い時分も永いと云う。
そりゃあ次々と産めや増やせやと、老後の危機意識煽る必要も無い。
そして軍事国家が軍事に傾倒しているのは、こっちの『竜』を簒奪するためなのだろう。
連戦連敗らしく、特にネフティスでは敗戦国家からの挑戦を祭りかの如くに迎えている節もあるという。
本気で可哀そうに見えて来た。
話を戻そう。
支払える対価が見つからないのでは、こちらへの待遇だって変わってくる。
誰だ、異世界にトリップしたら現代知識で無双できる、とか言い出したのは。
何を前提にするか、で大きく変わり過ぎている。
再び懊悩の姿勢となって、異世界転位モノなんて大っ嫌いだ……! と呪詛を吐く。
そんな折に、外出していた3人がどやどやと帰って来たようだ。
「ただいま戻りましたわ」
「お帰り……。どうだった? この国に、何か足りないモノとかあったかな……?」
借り受けた宿は、『とりあえず』と用意された仮宿に過ぎず、何時移動を要請されるかもわからない。
庶民の生活の中に、何某かの要求が隠れているかもしれない、と一縷の望みに縋ってのこはくちゃんやこだまちゃんへの探索許可だ。
その辺りはテトさんからも許可を貰っている。
「とりあえず、そらさんのいる場所までの移動に関しては『鉄道』でどうにかするっぽいですわね。高層ビルみたいなドデカイ蒸気機関車を建造しているのを見学させてもらいましたわ」
「チクショウ異世界転位モノなんて大っ嫌いだ……ッ!」
思わず言葉も荒くなる……!
ファンタジー世界かと思いきやスチームパンクってなんなんそれ……!?
化石燃料無しに蒸気機関エンジン造ってる時点で異世界知識要らないじゃんかバカァ!!!
結構前々から思っていたことなのですが、
『魔法』が『主軸にある異世界』で科学が発展しない理由は実のところ無いですよね
なんだかんだ人間レベルの生命が生きられる世界ならば一定以上の法則や観測は安定している筈ですし、進歩の為に何某かの発展を現地で考察するくらいの理性を伴わせるのなら、原理を応用した技術くらい生まれる筈です
というか、流石にコンピューターとかナノサイズマイクロクラフトとかは無いにしたって、産業革命の代表例としての蒸気機関なんかが出てくると『中世ヨーロッパ感(笑)』が消え失せるかとも思われますが、原理そのものは紀元前くらいには生まれていたっていう説を調べてたら発見したので、こちらのやや原始生活寄りな烏丸ハーレムsideでもぶっちゃけましたw
書き貯め投稿此れにて終了
お次は一週間くらいを目途にエルフsideに話を戻そうかと思ってます
遅れたら…ゴメンね?




