№029 あ ! やせい の えるふ が なかま に くわえたそう に こちら を みて いる ! 【学級裁判第2回開催間近】
タイトルから烏丸を更迭しました(笑)
「遺伝、っちゅう言葉が『専門的に』使われるようになったんは1900年、メンデルの研究成果が認められるようになったんが始まりやな。正しくは研究発表されたんがその30年以上前のことで、認められたんが本人の死んだ後。ダーウィンが先立って出版しとった『種の起源』が『進化論』を唱えた影響が強く響いたみたいでな、優性劣性を両立させる視点がどうにも望まれんかったらしいわ」
開幕解説。
関西弁に近いイントネーションで、カイチョーが自身の知識を披露する。
へぇ、と先のガチャで排出した押すと鳴るドデカイボタンで応える準備をしていたものの、ふと気になったボクは疑問符のままに質問を重ねた。
「あれ、ダーウィンって『人間は猿から進化したー』って唱えて、教会からメッチャ怒られた人じゃなかったっけ? 同じ穴の狢じゃないの?」
「言い方がアレやが、まあほぼ同論やな」
同じ界隈で喧嘩してたの? なんで?
「喧嘩はしとらん。それらの意見を取りまとめるモンらが、『似た話聴いたぞー』ってな。同時期に出張っていた他にも居る『研究発表』をな、ガンガンバッサバッサ斬り捨ててったんや」
「学者って頭いいひとの集まりなんじゃなかったっけ」
「取りまとめとったんは学者そのものではなかったし、『学術の細分化』が今ほどフレキシブルに行かんかった時代やからなぁ。新説暴説異聞異論と、神学だって優勢やった時代やが、科学発展の先駆けでもあった時代やし。聴いた話を鵜呑みにするんも、実験して実証して事実を確認するんも、中々に今ほどにも情報速度が行き届かんかったんや。詳しくは烏丸くんにでも訊きぃ」
今、彼居ないんだけども。
「話を戻すで。聴いての通り、『遺伝』が広義で意味と共に浸透し始めたんは此処100年ちょいの話やが、考え方そのものは紀元前からあった。『親が子に似る』、『血が受け継がれる』。ヒポクラテスがそこら辺を言及しとったっちゅう記述もあるしな」
「ヒポクラ……、河馬?」
「それはヒポポタマスや。紀元前のギリシアだったかの医者や、けっこうな偉人やで、尊敬せぇ」
学校の授業みたいになってきたなぁ。
漠然とした感想を抱きつつ、曖昧に頷いて続きを促す。
「偉人で医者はさておき、血統に於いての概念は漠然とやが何処にでも生じるもんや。野生生物は『匂い』を重視して雌雄互いの『準備』を察知するその際に、近親ではないことも把握するそうや。本能的に、そこらへんは後々危ういっちゅうことを知覚しとるのかもね」
「あ、それは知ってた」
女の子という枠組みなら姉妹・幼女・熟女・クリーチャー娘・擬人化・女性化・男の娘と縦横無尽に無分別に、年がら年中発情しっぱなしの何処かの東洋の雄っさん共とは豪い違いだ。こいつら未来に生きてんナ。
「野生動物に限った話でも無くな、エスキモーの古いしきたりとか、日本の山間部なんかでは嫁さんや娘を客人に『貸し出す』風習があったらしいわ」
「えー……、なんかフェミニンな方々に色々と騒がれそうな話ぃ……」
「タッくん、フェミニンは『女性的』とかそういう意味合いで、主にファッション用語や」
うるっせぇ! こまけぇこたぁイイんだよ!(逆切れ。
「まあ、『フェミニスト』な。騒がれんのは判るが、そこらの風習は血を淀ません為の措置でもあったらしいわ。『六部殺し』みたいなんだけやなかったとは思うが、客人から貰えるモンを貰う代わりにヒトヨのお楽しみ、みたいな側面もあったらしいけど」
「ああ、今日の烏丸くんみたいな話ね」
なんでこんな講義が始まったのかと云えば、まあ要するに『そういうこと』だ。
今更ながら、此処は森の奥エルフの村。
隠れ里、と言った方がすんなり頷ける。
多分だけど『国』からは隠れ続けてるのではと憶測が通る村の、未だに酋長の家の一角だ。
童●を殺すセーター(背中空き)が普段着っぽいエルフらの、人妻臭の凄い酋長の。
そんな彼女に『えっちなことしてほしい』と頼まれて、烏丸くんはホイホイ話に乗っかった。
だいたいこんなあらすじ。
……自分で纏めてなんだけど、すっごい美人局な感。
だいたい間違ってはいないのだけど、そのまま押し通そうとすると彼への風評的に色々と不備が蔓延りそうな。
まあ良いか、やってることは変わりないのだし。
「で、前回にしっかりと説明もしてくれた酋長の話題をそのまま引き継いで、カイチョーは結局何が言いたかったの?」
メタァな言葉で口遊みつつ、明日から使える豆知識を披露してくれた生徒会長へ向き直る。
目の端の方で、どうにも喧々とした空気があるのだが、そこらへんは今はスルーしておくしかない。
「いやな、前にも烏丸くんが言うとったやんか、この世界での言語の話や」
「……そんな話題、振ってたっけ?」
雑学抱いてる人って、情報量が多い弊害か一気に語るよね。
スレッド遡らないと注釈が難しいや。
「正しくは、タッくんがさっき振った『遺伝』に関する説明やな。概念としてはこっちの世界でも紀元前からあったんやから、異世界で似たものが生まれとっても可笑しないやろ」
「えー、でもそれって同じ言葉を使っている説明にはならなくない?」
「せやから、うちらに掛かっとる『この世界』成りの『法則』が働いとるんや、多分。翻訳されとるんやない? 意味を通じるように」
「あ」
そういえば、此処って異世界だのに言葉が通じるんだったね。
むしろ意思疎通が出来ないことが世間では非常識すぎて、一周廻って頓着する方が異常みたいな見方されるのが多いのだろうけれども。どういう『世間』だよ、ってなw
で、その辺りは『そういう法則』が働いている所為で、時折字幕放送みたいにルビが振られて意味と言葉を二重に把握する時がある。
それが『働かない』と、前回の引きみたいに同単語で通じちゃうから、重箱突くみたいに変な部分が気になっちゃう、と。
ナルホドナー。
まあこの辺も烏丸くんからの受け売りだけど。
そう捉えると、遺伝という言葉が実は違くとも、同じ概念があるのだから通じる言葉で通せばいいや、みたいな感じかな。
なんだか、法則そのものに人格があるような、妙にうすら寒い話になってくる。
「――だから、いい加減に機嫌を直してくれませんか。先にも言いましたが、彼本人の希望に沿わないことはしないと」
「知りません! 貴女たちなんか重税掛けられて搾り取られてしまえばいいんです!」
胡乱な解釈への漠然とした懸念を払拭すべく、というわけでは無いのだろうが。
シャーロットさんとエーリウさんの言い争いの声が、こちらにまで届き始めて気にしないわけにはいかなくなってきた。
今日、何回『漠然』って言葉使ったんだろう。
カイチョーのトリビアる話題逸らしに乗っかって、国家が絡みそうな話からはごくごく自然にフェードアウトしたかったボクらではあったけど。
流石にキャットファイトな展開をこの場で興されるのも見過ごせないので、そろそろ止めようかと重い腰を上げる。
本当に腰が重い。
それもこれも、ほいほいハニーなトラップ未確定に乗っかった烏丸くんの尻拭いで、隠れ里発見をどう取り扱えばよいのか判断を付けられないローラ&リヴィさんらが姫様を停めようとしないことが悪い。
『言い争い』と呼ぶには酋長であるエーリウさんの言は宥める様で、逆に鬼の首を獲ったかのようなシャーロットさんは脅してるかのような言い分に成って来たことが流石に見咎められるので。
どちらも『里または国』の代表的な立場に収まる方々で、そちらだけで決められれば良いのではと静観したかったのだが。
シャーロットさんが己の旦那様を『取られた』と思い込んで、感情的になっちゃってるのがいただけない。
ていうか云う事が普通に怖いわ。流石は王族。
もっと可愛らしい女の子だったのになぁー、全部烏丸くんが悪い。
「まあまあ、落ち着きなよシャーロットさん」
「ですがキンジョーさまっ」
「大体決めたのは烏丸くんで、ホイホイ乗っかって今も乗っかってるであろう彼が悪いんだから。帰ってきたらそっちで話を付けるべきだって。国が絡みそうなことに、感情で決定を下しちゃうのは普通に駄目だと思うよ?」
「むぅ……」
可愛い(語彙消失。
剥れる幼女とか、こんな妹欲しかった、みたいな感情が一遍に脳内駆け巡っていや幼女じゃねーわ落ち着け、と一瞬で思考を取りまとめる。
カナちゃんがアイドルをマスターさせたり女体化英雄と絆を育むソシャゲにジャブジャブ課金する気持ちが少しだけ分かった。
「ちょっと、金城、ヨダレヨダレ」
「おおっと、ぐへへ」
小首を傾げるシャーロットさんにじゅるりと何かがこみ上げて来たボクを、桃園さんに窘められつつ。
ボクは決め顔で話題を逸らした。
「さておいて、カナちゃんまでは引っ張って行かないんですね。あと言葉にしたからには、エーリウさんが先立ってお相手を務めるのかと思ってたのですけど」
「言葉のチョイスといい……、キンジョーさんは随分と明け透けなのね、見た目は随分と可愛らしいのに……」
あれ、呆れられてる。なんで?
「カナエさんにも頼んだけど、さっきも言った通り、本人の望まないことは無理には奨めないわね。こういうことは、やはり本人の感情が重要だから」
「ああ……、カナちゃんロリコンだものね」
「ちょ」
思わずしみじみ頷くと、エーリウさんも『漸く把握できた』みたいな様子で。
目を見開いたかと思えば、同席していたカナちゃんに向き直って頭を下げる。
「……流石に、子作りに適さない子までは差し出すわけにも行きませんので。申し訳ありません……」
「いやマジになって謝らないでくれ!? タクの言葉は冗談だから! 俺はそういう趣味だから断ったわけじゃないからな!?」
おお、意味合いが通じた。
法則掴むまでも無く、便利と云えば便利だね、この世界の言語翻訳云々は。
ちなみに、彼女らエルフは子作りに適した年齢になると、ローラさんの言ったように乳が膨らんで腰が引き締まって尻が太くなる、つまりは『男を誘う身体へ』とかなり急速に仕上がるらしい。
エルフじゃなくてサキュバスなんじゃないのか、このひとたち。
「あと、その例えに則ったの。私はこう見えて適齢期も過ぎてるし、もっと適した子らに仕込んで貰えまいか、と」
? あ、彼女が『お相手』を務めない理由か。
おk、把握。
ていうか、『仕込む』とか云うな。
え? お前が言うな? サーセン。
「適齢期……。充分、お若く見えるのですけど……?」
どっかでつらつら脳内描写した如く、人妻臭がムンムン(死語)なエーリウさん。
実際にそういうわけ、まあ要するに旦那さんが居る、とかいうわけでは無いそうなので、イメージとしての喩えとして彼女の外見はその通りだ。
そしてそれをそのまま捉えれば、大概の男子でもストッと、鴨撃ちの如くに墜とされるであろうことも間違いなさそう。
……実はさっきの翻訳の話がまだ利いていて、子供を作れる『排卵期』を過剰翻訳してる、って可能性は無いかな……?
ホラ、人間って年中発情期だっていう話だし……?
「それはまあ『お相手』として務めるだけなら出来なくも無いのだけど、流石に先立って4、5人は産んでるし。こんなお婆ちゃんを相手にするなんて、あれほど若い子だと猶更嫌でしょう?」
「………………エーリウさん、失礼ですけど、御幾つ?」
「もう7X歳、人間ならどんな殿方でも嫌厭されてしまうわね」
と、慈母の笑みを微かに浮かべる、その様すらも色っぽい。
あと翻訳さん、伏字の意味、無くない?
「やあやあお待たせー、仲良くやってるようで何より」
若干空気が死にかけたタイミングで、のっそりと烏丸くんが戻って来た。
早いような、掛かったような。
さておき色々と香水臭い男子って、普通に嫌な顔で迎えちゃうよね。
「……身体くらい洗って来たら?」
「ああ、やっぱ匂いますか。部屋は香油焚いてましたんで、移っちゃってるな、とは思ってたのですが」
あ、早々に抱き着こうとしていたシャーロット様が女騎士コンビに羽交い絞めにされてる。
まあ淑女としては、他の女の匂い漂わせる男に飛びついて欲しくは無いだろうしね、姫様だし猶更。
「香油……、前のシャーロット様の時も思ったけど、それってデフォルトなの?」
「みたいですねぇ。特に高貴な身分の閨での作法みたいですよ」
「あ、聞かなきゃ良かった」
エーリウさんが常識的にお婆ちゃんな年齢であった事実が尾を引いているらしい。メンタル的に。
アロマがどうのこうのと性病予防の一環として焚かれてるなどと、伴って披露されたトリビアな知識を聴く余裕はない。
やっぱり中世ヨーロッパ的世界観なんてのはクソだな!(極論。
「それはそうと、エーリウさん、スーリスからの伝言で、直ぐに来て欲しい、と」
「わ、わかりました。浴場は、」
「それも聞いてますし、準備も出来てるそうなのでお先に使わせていただきますねー」
予め残してあった『荷物』から、手ぬぐいやら何やらを取り出して再び出て往く烏丸くん。
なんだかんだで、彼が異世界漫遊を一番楽しんでいるよね……。
後でハーレムの子らにチクったろ。
「……。お風呂の支度もスーリスの手筈だったはずなのに、呼びつけにお客様を使うなんて……」
……なんとなく、だが。
『お店』っぽい雰囲気を醸す溜め息を落としつつ、ボクらへ頭を下げて部屋から去って行くエーリウさん。
そんな方々を見送って、ふと思うことはひとつである。
これ、全年齢でお披露目して大丈夫な話かなぁ……?




