戦乱の火種
「あやつらは絶対に許さん!」
苦痛の表情を浮かべながら唸る男が居た。
その男とは大桑城を落とした時に逃げられた頼芸である。
「絶対に復讐してやる」
と怒気をこめて呟いた。
一週間の修行を終え、自分は長山城へ戻っていた。
心が晴れ渡っているようで悩みなどなくなってしまったようである。
「戻ったか、十兵衛」
と迎えてくれたのは修行をするようにと恵林寺へ自分を送り込んだ叔父上であった。
ここは平常心を保て!いかに恨みがあっても争いは良くない。
それを学んできたはずだ。
「叔父上、お久しぶりですね」
最大限の笑顔を見せて言った。
「そういえば近々、戦が起こるかとしれん」
と気が重たいといった様子で叔父上は言ってきた。
「そうなのですか?」
一体どこで戦があるのだろうか?
叔父上の様子を見ると自分達も関係がありそうだが……
「尾張の織田家と斎藤家の戦になりそうなのだ」
「えっ?」
驚きで間抜けな声が出てしまった。
大桑城攻めが終わった後に織田家と朝倉家とは和睦をしたはずである。
戦が終わってまだ半年程しか経っていないのである。
いくら何でも早すぎる……
「実は裏にある人物がいるらしい……」
誰なのであろうか?恨みを持たれるような相手が居たかな?
「大桑城攻めで逃した頼芸らしい」
そういえばそんな奴が居た気がする。
血が繋がっているそうだが自分とは関わりがない。
「ここで戦が始まれば、だいぶ不利になる……」
「何故ですか?」
斎藤家の方が兵力的にみても有利であるはずだ。
たったの半年で差がそこまででるとは思えないのだが……
「よく考えてみろ。大桑城攻めはどこで起こった?」
それは勿論、美濃である。
「美濃で起こったのだ。美濃対美濃、要するに内乱だ。ここまで言えば分かるな」
そういう事か!
戦は美濃でしか起こっていない。
兵の消耗は美濃にしか起こっていないのである。
つまり尾張では兵力が十分ということだ。
「これは辛い戦になる……」
と叔父上は唸った。
「戦が起こらない事を祈りますか……」
と言ってはみたが回避はできそうにないだろう。
戦乱の火種はすぐそこにまで迫っていた。




