織田信秀の苦悩
尾張国
「ちと苦しいのう……」
一人の男が頭を抱え悩んでいた。
この男は尾張の虎と呼ばれている織田信秀である。
挙兵するとはいったが不安が影を落としている。
美濃は潤っている。喉から手が出るほどに欲しい土地であるが、果たして勝てるのか?
今の兵力を用いれば勝算は確かにある。
だが隣国の今川はその隙を絶対に逃さないだろう。
出兵したと知ったらすぐに準備を整え、ここ、尾張へと進軍してくるだろう。
ならば早く美濃を攻略せねばならぬがこちらは四千余、斎藤勢は三千に満たないほどだ。
相手は籠城策を取るはずだから押し切るには大分時間がかかる。
三河が欲しいからって松平を攻めるんじゃなかったな……
周りが敵だらけになってしまった。
さらに今は家中でも揉めている。
我が息子の信長の才覚には目を見張るものが確かにある。
あるのだが如何せん奇行が多い。
庇ってはいるものの、いつ織田家が分裂してもおかしくない状態である。
だからなるべく外に敵を作って内輪揉めさせないようにしなければならない。
内輪揉めが起こる原因は主に信長であるが、儂にも問題はある。
跡取りを信長にと決めてからよりヒビが入ったような気がする。
今から、跡取りを信行に変えるか?
だがあいつは単純すぎるからな……
悩みものである。
それよりも今は稲葉山城攻めだ!
頼芸という大義名分は得た。
ならばこの機会を生かさない手はないはずだ。
今、この時間にも今川に情報が漏れているかも知れぬ。
それならすぐに行動するまでだ。
「皆の者準備はできておるか?今すぐ稲葉山城へ向けて出陣じゃ!」
あとは野となれ山となれ、だな。




