# 第十五話 ## 「学校がなくなる日」
# 第十五話
## 「学校がなくなる日」
「……え?」
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中村誠一は、
封筒を持ったまま固まっていた。
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何度読んでも同じだった。
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そこには、
信じたくない言葉が書かれていた。
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**『老後学校運営見直しについて』**
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そして。
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**『来年度をもって閉校予定』**
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誠一は思わず立ち上がる。
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「嘘だろ……」
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手が震えた。
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翌日。
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教室に入ると、
すでに大騒ぎになっていた。
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「見たか!?」
村上が叫ぶ。
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「見ました!」
和子も青ざめている。
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「閉校って本当なんですか!?」
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黒川先生は静かだった。
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そして。
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ゆっくりうなずいた。
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教室が静まり返る。
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「利用者数の問題です」
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「予算の問題もあります」
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先生は続ける。
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「まだ正式決定ではありません」
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「ですが非常に厳しい状況です」
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誰も言葉が出なかった。
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誠一は教室を見回した。
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美月。
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健太。
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翔太。
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和子。
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村上。
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みんなの顔が浮かぶ。
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この学校で出会った。
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笑った。
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泣いた。
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支え合った。
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ここはただの学校じゃない。
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自分にとって、
もう一つの家族だった。
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昼休み。
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美月が泣いていた。
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「嫌だよ……」
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健太もうつむく。
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「なくなるなんて」
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翔太も黙っていた。
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誠一は胸が痛かった。
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すると。
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村上が立ち上がる。
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「諦めるんですか?」
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みんなが顔を上げる。
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「え?」
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村上は珍しく大きな声を出した。
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「私は嫌です」
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「せっかくできた居場所なんです」
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「諦めたくありません」
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その言葉に、
教室の空気が変わる。
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和子もうなずく。
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「私もです」
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「この学校で人生が変わりました」
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翔太も言う。
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「僕も……」
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小さな声だった。
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でも確かだった。
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「ここがなかったら」
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「まだ一人だったと思う」
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教室が静かになる。
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そして。
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美月が立ち上がる。
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「守ろう!」
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元気いっぱいの声。
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「学校を守ろう!」
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その瞬間。
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拍手が起きた。
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誠一も立ち上がる。
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「そうだな」
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「やれるだけやろう」
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七十二歳。
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でも。
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まだ諦めたくなかった。
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その日の放課後。
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一年一組は作戦会議を始める。
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「署名活動!」
健太。
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「地域の人に知ってもらう!」
美月。
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「卒業生にも協力を頼む」
和子。
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「SNSも使うべきですね」
村上。
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「SNS?」
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「中村さんは知らなくて結構です」
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「失礼だな!」
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教室が笑いに包まれる。
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久しぶりだった。
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重い話なのに、
みんな笑っていた。
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なぜなら。
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一人じゃないからだ。
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数日後。
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商店街。
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駅前。
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公園。
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誠一たちは署名活動を始めた。
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「お願いします!」
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「老後学校を残してください!」
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最初は集まらなかった。
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だが。
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少しずつ増えていく。
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地域の人たちが足を止める。
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「そんな学校があるんだ」
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「面白いね」
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「応援するよ」
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署名が増えるたび、
みんなの顔に笑顔が戻っていった。
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そしてある日。
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誠一たちの活動が、
新聞に掲載された。
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町中で話題になる。
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支援の声も増えた。
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黒川先生は言った。
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「みなさん」
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「本当にすごいです」
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誠一は首を振る。
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「違いますよ」
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先生が不思議そうな顔をする。
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誠一は笑った。
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「学校が僕たちを変えたんです」
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「だから今度は」
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「僕たちが学校を守る番なんです」
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教室のみんながうなずく。
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しかし。
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その時だった。
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職員室から一本の電話が入る。
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黒川先生の顔色が変わる。
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そして。
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静かに言った。
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「市長が会ってくれるそうです」
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教室がどよめく。
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ついに。
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学校の未来を決める話し合いの日が来る。
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一年一組最大の挑戦。
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その代表に選ばれたのは――
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中村誠一だった。
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「えええええ!?」
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校舎中に誠一の悲鳴が響いた。
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### 次回
# 第十六話
## 「七十二歳の演説」
市長を前に緊張する誠一。
「無理だ!逃げたい!」
しかし仲間たちは背中を押す。
老後学校の未来を懸けた、
人生で一番大切なスピーチが始まる――。
涙の存続編、クライマックス。




