キレた一哉
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「悠人先輩、今日も一緒に帰りましょうね」
昼休みの別れ際に香澄ちゃんから誘われた俺はもしかしたら担任に呼ばれて教室にいないかもと告げると、香澄ちゃんは疑いもなく笑顔で職員室で待ってますと言い苦笑いしながら別れた。
午後の授業はいつも陽当たりが良い席のおかげで、つまらない担当教科の先生の声が子守唄に聞こえ意識がどこかへと持っていかれそうなのを耐えているため、いつの間にか放課後を迎える。
帰りのSHRで微かに感じていた予感は的中し、帰る前に職員室に来るよう早川先生に言われた俺と秀平はクラスメイトに見送られながら教室を出る。
「・・・・悠人、やっぱあの2人のことだよな?」
「あぁ、間違いなくね・・」
職員室に呼ばれるという面倒なイベントに気が進まない俺は、この後にある職員室に入った瞬間に浴びる教師達の視線が嫌なため強引に秀平を先に入らせるよう誘導しジャンケンに勝った。
頼りになる親友の背中に隠れるように職員室に入ることが成功し、そのまま早川先生が座る席へと向かい途中で誰にも呼び止められることなく辿り着けた。
「ちょっとだけ、待ってて」
パソコンに向かって何か作業していた早川先生は、一区切りついたようで座っている椅子を回転させ振り返り見上げながら口を開く。
「・・先生は、欠席した雨宮さんと一条さんの親御さんに連絡して確認したの・・・・休んだから体調を聞いた流れで噂話に関することをね」
「「 ・・・・ 」」
阿吽の呼吸で、秀平と俺は黙ったまま先生を見る。
「結果的に学校で広まっている内容は、概ね事実だったわ・・ただ、流石に相手の男が誰なのかなんて先生から聞けなかった。2人の家族がこれからどう判断するか学校側から何も言いませんが・・・・」
早川先生のハッキリしない言葉を聞きながら、結局俺たちに何を求めているのか学校はどう対応するのかわからず、そのまま職員室から追い出されるようなカタチで廊下へと出る。
「・・悠人先輩?」
職員室のドアを閉めると俺に気付いた香澄ちゃんが声をかけて歩み寄って来る。
「香澄ちゃん、ここまで来てくれたんだ」
「はい、教室に行くと理香先輩が教えてくれました」
「高橋さんがね・・まぁ、帰ろっか?」
「はいっ」
「なら、俺も」
秀平とも一緒に帰ることとなり、3人で歩き話す話題は雨宮と一条そして一哉に関することばかりだった。
一哉はあの日に救急車で運ばれてその後どうなったか知らないため、アイツのことが何故か気になる俺は香澄ちゃんと秀平と別れた後に1人で、小さい頃の曖昧な記憶を頼りに一哉の家があるだろう場所へ行くことを決める。
先に秀平が別の道へと歩き別れ香澄ちゃんをいつもの場所で、少し立ち話をしてから手を振り、見送った俺はスマホで時間を確認しアイツの家がある方へと向かう。
辿り着けるか不安だったけど幼い頃からの風景と変わっていなかったため、なんとか一哉の家を見つけ歩きながら表札を見て一哉の家だと確信し、通り過ぎた先にある公園のベンチに座る。
「何やってんだろうな〜俺は・・・・」
陽が暮れる時間が日に日に遅くなっている夕陽を見ながら呟き、いろいろ裏切った男を拒絶して来た俺が今更になって調べようとするとは思ってもいなかった。
冷静になって別にここにいても得るものはないだろうと思い、もう帰ろうとベンチから立ち上がると正面にある公園の出入り口から入って来た男女と視線が重なった。
俺と視線が重なった男女は息を合わせたかのようピタッと足を止めてジッと俺も方を見ている。
これが暗い夜の公園の照明だけならば、この距離でも互いに人が居るていどの認識で終わったのだろうだけど、今はハッキリと顔が認識できるため、そこには一哉と皆瀬だと一目でわかった。
一哉の隣りに立つ皆瀬咲希はポニテではなく髪を下ろしているから、あの頃は俺のリクエストでポニテを続けてくれていたのだろう。
このまま対峙するような状況にどうやって切り抜けようかと考えるも、一哉は雨宮と一条がどうなっているか知っているのか聞きたくなった。
「・・・・・・よっ・・久しぶり」
「・・・・」
一哉に無視されてもいいと思いながら声を先にかけるも反応は無いなと思っていると、しばらくして舌打ちした音が聞こえ顔を逸らされた。
「その子は、一哉の今の彼女?」
今の2人を見ても聞いてしまうのかと、俺は自分の胸の中で呟き失笑する。
「関係ないだろ?」
「あぁ、関係ないよな・・・・あの2人が、ああなってなかったら・・な?」
「浮気されたことか?」
「違うだろ? お前が寝取ったんだ」
一哉の悪意に満ちた表情へと歪むのを皆瀬に見られないよう立つ一哉は、なかなかの役者みたいだ。
「寝取った? だれに?」
「お前にな? その子も誰かから寝取って手に入れた、新しい彼女なんだろ?」
俺が新しい彼女と言うと、皆瀬の表情は複雑になっている。
「ははっ・・後輩って良いよな? 幼馴染なんかより、全然良いぞ? 悠人くん?」
「へぇ・・英聖高の女子に手を出したのは、同級生だったろ?」
「ちっ・・アレは遊びだよ遊び・・わかんねーかな?」
「知りたくもないね・・ってか、あの英聖高の女子はお前が本命って言ってたけど?」
「・・・・」
「まさか、無言の肯定か? それとも遊んだ数が多すぎて、どの子か思い出せないか?」
「黙れ・・俺には咲希がいれば満足なんだよ」
一哉が彼女を逃さないようギュッと抱き寄せる姿は、まるで拘束しているように感じた。
「遊びまくっているクセに、よく言えるな? 本当はキープの間違いだろ!?」
キープというキーワードに皆瀬はビクッとして一哉を見上げた。
「はっ? 咲希がキープな訳ないだろ?」
「一哉お前・・本気で言ってんのか?」
俺の言葉に一哉は苛立ち始めているのが容易にわかる。
「さっきから、なんなんだよ!?」
「どうせアレだろ? 結衣と葉月とデキないから、その子を性の捌け口にしてんだろう? 可哀想に・・」
「はぁ!? だから、なんなんだよ!? 何が言いたいんだ、てめぇは!!」
「・・・・」
探りながら一哉と話していたけど、本気で2人が妊娠している事実を知らない反応だ。
「ま、まさか・・悠人、お前・・2人を自分の女にしたのか? 中古を? そうなら、マジでウケるんだけど・・・・寝取られた女を寝取り返すとか」
大声で笑う一哉の姿を見て、コイツと話すの疲れるなと苦笑いしながら本題を口にした。
「そんなもん、もう考えてないしこの先も無い・・それより、お前は2人の子供のパパになるんだから働けよ?」
「子供? 誰がパパだ?」
「お前だよ一哉。結衣と葉月は、お前に孕まされて病院に行ってるぞ? おめでとう! 一哉パパ?」
「なっ・・・・」
驚愕する一哉に捕まっていた皆瀬はサッと離れたため、視線を彼女に向ける。
「キミは、どうなのか知らないけど高校生なんだから避妊しないとダメだと思うよ?」
他人行儀で話しかけた皆瀬は、スッとお腹に手を添えながら後退っている。
「アイツらが妊娠? そんなわけないだろ・・アホか?」
「もう学校中で2人が妊娠した噂で盛り上がっているからな? 担任も2人の親に聞いて事実だって聞かされたとさ」
「ヤダ・・そんなの無理無理無理。ありえない・・」
皆瀬は思い当たる節があるのか急に言動がおかしくなり、さらに一哉から離れて行く。
「一哉、キープの彼女が離れているぞ?」
「・・さ、咲希? どこ行く気だ? 待てよ・・なぁ?」
「イヤ・・子供なんて無理・・・・」
「なっ・・後輩がちょうしのんなよ? 今なら許してやるから、黙ってこっちに来い・・戻れ」
「ち・・ちっ・・近寄るな!」
皆瀬は近寄る一哉が動いた距離だけ離れ、そして逃げるように公園から出て行った。
「・・捨てられたな? 一哉」
「悠人、おまえ・・お前のせいで・・あと少しだったのに、邪魔しやがって!!」
激情しキレた一哉が俺に襲い掛かって来たため、このまま返り討ちにしてやろうと身構えたところで誰かに見られているような視線を感じた俺は、致命傷にならないよう防御へと切り替えたのだった・・・・
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