表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
79/86

生徒会室に疑念は踊る-9

 あれから数日が経った。

 あの後に生徒会の中でどのような話し合いが行われたのかは私たちは知らない。

 果たしてあの真相をレイヴンさん達に話したのかどうかもだ。

 これ以上関わるべきでは無いと判断した私とエクサスさんは速やかに手を引いたからだ。

 もっとも、エクサスさんはスッキリしない結末だったので後ろ髪を引かれていたが私が無理矢理に引き離した。

 カーリアン会長は確かに優秀な人物だけれど、それだけでは無かったからだ。

 なるべく距離を置いておきたい。

 私はそう思ってしまった。

 

「どうやら次の生徒会長はレイヴンに決まったようだ。カーリアン会長が結局は指名したようだな」


 図書室の定位置に居た私へとエクサスさんが教えてくれた。

 どうやって丸く収めたのか知る由はないけれど、まぁ収めたのだろう。

 彼女の立場ならどうとでも出来るのだから。

 

「そうですか。恋人の件はどうなったか知っていますか?」

「選挙で決着が付かなかったからな。無効試合にしたそうだ。概ねは最後に会長が言ってたとおりだな」


 会長が描いた着地点がほぼそのまま実現されているのだろう。

 突発的な行動だっただろうに最終的には彼女が望んだとおりの結末というわけだ。

 ああいう人には深く関わるべきではないと私の本能が言っている。

 敵になるのは問題外だけれど味方になったとしても油断ができない。

 そんな関係は私は疲れてしまうと思うから。


「まぁ、その後に二人共がもう一度告白して振られたらしいがな」

「それはそうなるでしょうね……彼らはカーリアン会長の試験に合格できなかったのですから」


 自分を疑った人をパートナーに選ぶ。

 はっきり言って普通は逆だろう。


「あの人のパートナーになる人は大変ですね。能力が高い分、理想も高い。そして理解がされづらい」

 

 信じてくれた人を選ぶならわかるが、彼女からすれば信頼はされている状態が普通なのだ。

 立ち位置が普通の人とは明確に違う。

 彼女は人の上に立つ存在であり、それを自覚していた。

 そして、その責任を真正面から受け止めていた。

 そのためか、言っていることは正しく感じられるのにそこに至る過程が常人離れしていた。


「まぁ……対等な人間が条件というのは理解できますけどね」


 伴侶には自分と対等な人間が良いという望みは理解できる。

 家柄も能力も容姿も全てが最高峰。

 そして信念や理想も高潔となれば、それに比する人は本当に限られるというのは少し可哀想ではあったけれど。

 今回の行為の是非はともかくとして会長が求めた物は多くの人が求めている物だろう。


「あら嬉しいわ。図書室の魔女にそう言ってもらえるなんて!」


 突然声をかけられたほうを向けばそこには柔和な笑みを浮かべたカーリアン会長が居た。


「会長!?」

「ふふふっ。もう会長じゃないわよ。エクサス君が言っていたようにレイヴン君に引き継ぎましたからね」


 ドキッっとして背筋が伸びる。

 相変わらず美しく屈託ないカーリアン会長。

 特に何か圧を掛けてきているわけではないというのにだ。

 あの部屋で見せた圧倒的な上位者とも言うべき存在感が頭を離れないのだ。


「色々お世話になったわね。あの時はお礼を言える雰囲気でもなかったから改めて挨拶をと思ってね」

「……色々と思う所はありますけれど、とりあえずは任期満了お疲れ様でした」

「ありがとう。これで私は生徒会長じゃなくて一人の女の子に戻れたわけね」


 楽しそうに笑う彼女の姿は確かに多くの男性だけでなく女性も魅了する物だった。

 この姿、この仕草、この声に一体どれだけの人間が囚われているのかと思うと何とも言えない気持ちになる。

 綺麗なだけではない側面を見た私であっても、そう思ってしまう。

 

 そんな風に私は考えていたのだけど、そんな私よりもエクサスさんは少しだけ険しい顔をしていた。


「カーリアン会長。一つ……俺から言わせてもらっても良いですか?」

「あら?エクサス君が私に?何かしら?」


 あの時、私はそそくさと生徒会室から退室した。

 生徒会室はカーリアン会長の領域であり、どんな状況であっても彼女の掌の上であると感じてしまって居心地が悪かったからです。

 恐らくはエクサスさんも言いたいことがあったのかもしれませんが彼は私を尊重して部屋を一緒に出てくれたという事でしょう。

 もしくは改めて考えたら言いたいことが出てきたのかもしれません。

  

「色々あるのでしょうが、今回に関しては会長が間違っていると俺は思います」

「それは私も理解しているわよ。悪者は私。今更言われるまでも無いわ」

「いえ、違います。投票用紙を処分した事ではなく……まぁ、あれも悪いのですけど」

「?」

「俺が言いたいのは会長が“対等な立場の人間を求めている”という事についてです」


 エクサスさんの口から出たのはカーリアン会長の行為ではなく、そもそもの元となった理由についてでした。

 対等な人間こそがパートナーに相応しい。

 そもそもの考えが間違いだとエクサスさんは言いました。

 それは私としても意外としか思えない意見でした。

 

「そんなにおかしいでしょうか?会長が求めた物は決して悪い物ではありませんし、非現実的な物でもないと思いましたが……」


 私はカーリアン会長が求めた物は理解できる物でした。

 その手段はともかくです。

 ですから、エクサスさんがそこを否定する理由がわかりませんでした。

 しかし、続く彼の言葉を聞いてその考えを改める事となるのでした。

 

「求めたのは間違いじゃないと思います。しかし、会長は急ぎすぎているのだと思うのです」

「私が……急ぎすぎ?」

「最初から対等である関係なんていうのはありません。それこそ家柄や立場や年齢や……ありとあらゆる物が俺たちは違います」


 とても真剣な顔をして真摯にエクサスさんが語りかける。

 その言葉はカーリアン会長に向けられている物だというのに私に向けて語られているようにも思えてしまう。

 今となっては聞くだけで落ち着く低い声が図書室に染みていく。

  

「だからこそ、時間をかけて、言葉を重ねて、対等になっていくんだと俺は思います。そうしていつしか最良のパートナーになる。最初から全てを満たしている人間なんて……きっと居ないと思うんです」


 同じ大貴族であるエクサスさんの言葉だろうか。

 色々な実感が籠もっている言葉だからだろうか。

 笑みを絶やさないカーリアン会長の表情の奥に今までとは違う何かが見えた気がした。

 数旬、会長はエクサスさんの言葉を噛みしめるように黙っていた。


「次に伴侶を選ぼうとした時は……少しだけで良いので相手の先を見てあげて欲しいのです。現在だけではなく成長するであろう未来の姿を」


 エクサスさんの言葉に篭められた真摯な想い。

 そう遠くない未来の話。

 会長の心を射止めようとする人は必ず出てくる。

 勇気を振り絞ってカーリアン会長と対峙することになるであろう見ず知らずの男性へ向けての援護射撃。

 そしてそれは、目の前の人に多くを求めすぎていた女帝へのアドバイスでもあった。


「そうね。うん。エクサス君の言う通りね」


 会長が軽く頷く。

 自身の内へ問いかけた末、納得したのか。

 その顔は今まで見たこともないくらい本当の意味で晴れやかな笑顔になっていた。


「思い上がっていたわ。そうよね。うん。あはははっ!こんな当たり前の事言われるまでわかってなかったなんて!」

「か、会長?」

「なんか、今更だけど凄い納得しちゃった。そっかぁ期待していたと言えば聞こえが良いけど、理不尽な願望を押し付けてたのね。あんなに慕ってくれてたのに……悪い事しちゃったわ」


 しみじみと呟いたその声音は優しく、何かを悔いるような響きが籠もっていた。

 振ってしまった男子二人に対して思う所があったのかもしれません。

 傍から見れば彼らは十分すぎるほどに優秀であり会長の事を想ってくれていたはずです。

 今更、彼らの想いを受け入れるという事にはならないでしょうけど。


「色々持ち上げてくれる人がいたけれど私もまだまだって事ね」

 

 カーリアン会長の目が輝く。

 自身の内に潜む問題を解決できたとその目が語っていた。

 そうなればこの会長はさらに魅力的に輝く事でしょう。


「ありがとうリフィルさん!ありがとうエクサス君!あなた達のおかげで私は学びを得たわ!」


 私達の方を向いて礼を言う彼女の頬は上気しているようで今までで一番魅力的な表情をしていた。


「いえ。俺は単純に実体験を語っただけですから。俺も……何も知らないで悩んだ事がありますから」


 それは何もわかっていなかった頃の私達の事だろうか?

 それとも別の事だろうか?

 何にせよエクサスさんの言葉が会長の琴線に触れた。

 それだけは確かな事だった。


「急ぎすぎていたか……ふふっ!あぁ良いなぁリフィルさん!羨ましいわ!」

 

 急に大きな声を上げるカーリアン会長。

 私の手を離して立ち上がったかと思えば演劇の役者のようにターンを決めて高らかに謳う。

 そんな彼女を見てエクサスさんが満足そうに笑っていた。

 彼はきっと、会長の問題が解決したことを純粋に喜んでいるんだと思う。


「そうだ!エクサス君!私の恋人に立候補しない?これでも結構良い女だって評判なのよ!」

「いぃぃ!?それはちょっと……」

  

 今まで見たことがないほどに魅力的な会長の表情。

 実は悪戯好きだという話も今ならわかる。

 この笑顔にやられてしまった男性が一体どれくらいの数居るというのか。

 それを引き出したのがエクサスさんだという事がどうにも気に入らないし、そのエクサスさんをからかっている会長も何となく面白くない。

 チラチラとこちらを見る彼への態度も少し冷たくなってしまうという物です。


「全く……エクサスさんも冗談を真に受けないように」

「う、受けてない!受けてないぞ!えぇぃ会長もからかわないで下さい!」

 

 柔らかい日差しが図書室の中に差し込む。

 いつものように騒がしい日常。

 こんな日々を重ねながら、私達はお互いを理解していくのでしょう。

初めて書いたものを1回全部消すという経験をしました。

区切りの良い所まで書いてから投稿をしているので余計に間隔が空いてしまいました。

良くないですね。


評価をしてくれた方、ブクマをしてくれている方、いいねしてくれた方、そして読んでくれた皆さん。

ありがとうございます。


楽しんでいただけたのであれば次の更新を気長にお待ち頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ