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お出掛け-4

 先に席を確保してくれていた二人の横に私達は腰を下ろした。

 私の隣にイルド、そしてリフィル先輩の隣にエクサス先輩という並びだ。

 こうして並んで見れば、やはりこの二人はお似合いでは無いだろうか?

 ビジュアル的には申し分ないと言っても良い。

 そう思いはするが、この二人は特にそういう関係ではないのだ。

 勿体ないと思う。


「今日はすまないな。俺たちの都合に巻き込んでしまって」

「いえいえ、いつもイルドがお世話になっています」


 先程、リフィル先輩にかけた言葉と全く同じ言葉をエクサス先輩にも返す。

 本当にこの二人の先輩には頭が上がらないのだ。

 もしもイルドの暴走が止まらなければ今の私の幸せで満たされた日常はなかったのだろうから。

 それを思えば感謝をいくらしても足りないのだ


「最近のイルドはとてもやる気に満ち溢れていてな。それも全てはレイラーニ嬢のおかげなのだろう」

「先輩っ!何言うんですか!」

「良いではないか。良き伴侶を持てたという事は素晴らしいことだぞ」


 伴侶という言葉に少し頬が熱くなる。

 確かに遠くない未来にはそうなるのだが、面と向かって言われるとまだまだ照れてしまう。

 少し前にあった騒動で私とイルドはお互いの想いを再確認した。

 長く居ればこそ起きるであろうすれ違い。

 決定的な間違いを起こし、別れることにならなかったのは目の前に居る二人のおかげだった。


「そうですね。イルドさんはもう少しレイラーニさんに感謝をするべきですよ」

「まぁまぁリフィル先輩。イルドは本当に頑張ってますから」

「うぅ……なんとか名誉を挽回させてもらおうと日々頑張っております……」

 

 特にリフィル先輩は私に対して同情的であった。

 知らぬ間に裏切られそうになっていたのだから他人から見ればイルドはそれはそれは酷い男に見えるのだろう。

 以前にお礼を言いに行った際には何度も「本当に良いのですか?」と確認をされたものだ。

 そういう馬鹿な所も私としては可愛いし、未遂に終わったし、最近は今まで以上に優しくしてくれる。

 だから不満はないが、もう少しだけ私に特に優しいイルドを楽しませてもらおうと思っていた。


 私達はとりあえずは飲み物と皆で摘めるような本当の軽食を頼んだ。

 咄嗟に店に連れ込んだのはリフィル先輩との内緒話が目的であってお腹は空いてないので仕方ない。

 運ばれてきた軽食に思い思いに手を付ける。


「中々美味いな。良い店を教えてもらってしまったようだ」

「このお店はよく使っているのですか?」

「あ~レイラーニとのデートで何回か来たことありますね」

「でも、良かったです。お二人の口に合って。特にエクサス先輩がどう思われるかは少し不安でしたから」


 はっきり言って庶民の味と言って良い店だ。

 私達としては美味しく感じるが、恐らくは普段から良い物を食べているだろう二人にどういう反応がされるかは少しだけ不安だったので安心した。

 特にエクサス先輩は本当の上流階級なので私には想像ができない食生活を送っている可能性があった。


「別に俺も特別良い食事をしているわけではないぞ。恐らくだがお前たちとほとんど変わらんな」


 その言葉に私は声には出さないが「へぇ~」と思ってしまう。

 やはり大貴族と言えば想像がつかないような美食に慣れているものだと思っていたのだ。


「カリニオン家はあまり表には出ていないですが貴族としては珍しいくらいに金銭に関してシビアなようですよ。だからこそ、商家であるラインズと強い繋がりを作っているという側面はあるのでしょうね」

「そこまでシビアでも無いとは思うが……清貧を旨にしているわけでもないしな。普通だ普通。それに、無駄に贅沢三昧をしてはそれはそれで味がしなくなりそうだしな」

「そういった思想も家の教育の賜なのでしょう。私としてはとても良い教育方針だと思います」


 ラインズ家の娘であるリフィル先輩からすれば金銭感覚がしっかりしているというのはとても良い印象のようだ。

 これは思わぬところでエクサス先輩の好感度が上がったのでは無いだろうか。


「ところで、この後なんですけど」


 私が切り出した言葉でリフィル先輩に微妙に緊張が走るのがわかった。

 キリッとした顔で何人もの相談事を解決してきたとは思えない可愛らしさに笑いそうになってしまうがここは我慢。

 私の提案で今日がどうなるか決まるのだから。


「リフィル先輩の用事を済ませる前にイルドの買い物に付き合ってもらってもいいでしょうか?」

「え?俺の買い物?」

「ほら、今度の行軍試験用に色々と入用だって言ってたじゃない。折角頼りになる先輩が二人も居るんだからアドバイス貰ったらいいじゃない?」


 私が提案をしたのは別の買い物へと誘導する事だった。

 そして思いついたのは行軍試験用の装備を見に行くという事だ。

 はっきり言って若い男女が行くのには不適切には思える場所だが私としては悪くない場所だと考えていた。

 何故ならエクサス先輩は学園の中でも屈指の強者。

 直接的な戦いだけではなく軍事に関係する事ならば右に出るものはいないと噂される人だ。

 そのエクサス先輩の魅力を引き出すのであれば戦いに関する場所へ誘導するのが良いのではないかと思ったのだ。


「ふむ、確かにそろそろ行軍訓練の時期か……装備関係か?」

「あ~確かにアドバイスとか貰えたら嬉しいです。長期行軍訓練は初めてなんですけど装備は自前で用意ですから」

「自分で選ぶとは偉いぞ。中には人任せの奴等も居るからな」

「という訳で!この後は武器などを取り扱ってるところに行きましょう!」


 男二人が次の試験内容について熱く語り始めそうになるのを止める。

 エクサス先輩もイルドも軍畑の人間なので話題には事欠かないのだろう。

 だが、私はそういう専門的な話をさせるためにこの話題を振ったのではない。

 ここで重要なのはエクサス先輩がイルドに格好良くアドバイスする事によってリフィル先輩からの好感度が上がる事なのだ。


 私は是非この二人の関係が上手く行けば良いなと思っていた。

 親しくさせてもらってから頻繁に思うのだ。

 何故この二人は婚約解消したの?と

 そう思いはするが事実として二人の関係は白紙に戻ってしまっているわけで、そうなればもう一度新たな関係を作らなければならない。


 エクサス先輩はわかりやすい。

 私がイルドから聞いていた話や今日の態度などを見ても彼はリフィル先輩の事を特別気にかけているように見える。

 直接的に恋愛感情ではないにしろ特別な女性という意識はあるように思えた。

 一度、婚約を解消してしまったという事が複雑化させてしまっているだけだ。


 対してリフィル先輩はというと、はっきり言ってよくわからない。

 この先輩は感情を余り表に出さないのだ。

 勿論、悪感情を持っていないという事はわかっている。

 何度も相談を受けているという話だし、今日もこうやって遊びに付き合ってくれている。

 だけど、それが一体どういう感情なのかはわからない。

 色々と世話を焼いているという事だけど身内には甘いらしいので単純に友人に対する態度なだけという可能性も大いにあり得る。


「武器屋の後はそうですね~服とか見に行きませんか?イルドは恥ずかしがってあんまり意見言ってくれないんです!」


 なし崩し的に当初の目的の前に多くの寄り道を入れる。

 それは今日の予定を買い出しから友人との遊びに変える作業。

 二人の仲を深めるという意味もあるし、私自身も尊敬する先輩達と遊べるのは嬉しい。

 それはイルドも同じように思っていてくれるはずだ。


(すぐにどうこうは無理だろうからゆっくり進めて行かないとね)


 もしもこの二人が親密になるとすればリフィル先輩の感情が動いた時だと私は思った。

 その来るべき日に備えて、エクサス先輩は好感度を稼がなければならないのだ。

 コツコツと積み上げていけばきっとお似合いの二人が出来上がる。

 私はその手助けになれればと考えた。

 それは彼等にとっては余計なお世話かもしれないけど。

 


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