第6話 -酔いすぎ注意-
「ちょっと、お嬢さんに聞きたいんだけどさ」
「はい?」
食事もお酒もいい感じに進んだころ、セラフさんが私に問いかける。
「その、フレンっていう子はどんな子?」
「え?」
「ちょ!おい!セラフ!」
明らかに動揺を見せるシーザーさん。
「どんな子…ですか?」
「うん、最近よくこいつがその子の話ばかりしていてね!どんな子なのか気になっていたんだ。」
「お前は、余計なこと言うなよ」
微かに頬を赤らめながら嫌そうにするシーザーさん。
お酒のせい、とういことにしておこう。
「――優しい子ですよ。とても。誰かのことを一番に考えて、自分のことは後回し。
今日も、気になっている人に食事に誘われたらしいんですけど、私が話したいことがあるって呼んだら私を優先してくれて。」
「え!?」
下を向いていたシーザーさんが、顔を上げる。
「ん?どうかしました?誰から誘われたのかは、私も人伝に聞いたのでわかりませんが…」
「いや、え、だって、それ」
ワタワタしだすシーザーさんに、思わず笑いそうになる。
「そして、いつも一生懸命です。彼女は」
隣で眠るフレンに、視線を向ける。
「紡ぎ人の仕事も、人との関わり合いも、これまでの人生も――
凄く、一生懸命で見ているこっちも頑張らないとなって気持ちにさせてくれる。」
「確か、彼女はこの街の出身じゃなかったよね?」
流石、陛下の側近。
そういう調べはついているんだ。
多分、シーザーさんがフレンの話をし出したころに調べたのだろう。
「そうですね。
アクアティアの出身です。彼女の母親がいろんな男性とかかわりを持つ人だったらしく、ウエンティス出身の人との間に身籠った子なんだそうです。
自分とは違う魔法を使う我が子を、邪魔になった母親はこの街に、彼女を捨てました。」
「…酷い話だね。」
セラフさんが顔を歪める。
「フレンは、この国のどこかにいるであろう母親と、顔も知らない父親に会うために色々なところで出会った人にこの話をしています。
もしかして、って思ってくれる人がいるかもしれないからって。
そして、今、部外者の私があなた達にこの話をしたのは、私たちとはまた違う繋がりがあるであろうと思ったから。
別に、探し出してくださいとは言っていません。
でも、知らなければ気にもしなかった話に、この話と繋がる話があれば、教えてください。」
2人の顔見て、頭を下げる。
「もし会えて、彼女が何をして何を話したいのかはわかりませんが、
フレンは、幸せになるべき人です。」
――――――――
「私の家でとりあえず面倒見ます」
「――んっ、シエルぅ…?」
シーザーさんの背中おぶられ私の家まで送ってもらっていた時、シエルが目覚める。
「あ、起きた?」
「んんー?だれぇ?」
「シーザーだよ」
声をかけるシーザーさんと、その隣でフレンのことを見るセラフさん。
「シー、ザー…はっ?!」
「うわっ!突然動いたら危ないよ!フレンちゃん」
「あ、ごめんなさい!え?は!?え?!」
慌てふためくフレンに思わず笑ってしまう。
「ちょっと!シエル!!笑ってないで!なに!?どういうこと?!」
「ふははっ、酔っぱらって店で寝たフレンを、シーザーさんたちに運んで貰っている所よ」
「いやいや!なんで、シーザーさんいるの?!」
「たまたま会ったのよ。それで少し一緒に飲んで、今
ちなみに、そちらの方が昨日助けて下さったアレル陛下の側近の」
「セラフ・リチャードだよ!よろしくね!」
凄い勢いでセラフさんの方を見るフレン。
「え!あ!えっと!
フレン・ヴェリスです。あ、えと、よろしくおねがいいたします…?」
何も状況が飲み込めないフレンの様子に、私は思わず爆笑した。
―――――――――
「じゃあ、フレンちゃん!ちゃんとお水飲んでね!」
「はい、あの、本当にすみませんでした…」
「全然だよ!
昼間も誘ったけど、今度一緒に食事でも行かない?」
「え!いいんですか?こんな醜態さらしたのに!?」
「あははっ、むしろもっと色んなフレンちゃんを見たくなったよ」
帰り際そんな話をする、シーザーさんとフレン。
「完全に、俺らは蚊帳の外だね」
隣で少し呆れた様に笑いながらその様子を見るセラフさん。
「ある程度の勝算があること伝えちゃいましたからねーシーザーさんに」
「でも、まぁ、フレンちゃん天然そうだからまだまだ、シーザーは振り回させるんじゃないかな」
「楽しそうですね」
「長くあいつのこと見て来たけど、あんな風なシーザー見るの初めてだからね!
楽しくてしょうがないよ」
今度は少し、嬉しそうに笑うセラフさん。
「言い忘れていたけど、そのバレッタ綺麗だね!すごく似合ってる。」
「え?あぁ、ありがとうござます。
たまたま入ったお店でいい出会いがありまして」
「そっか」
「はい、あとはいい靴に出会えればいいんですけど」
「靴?」
「はい、もともと古い靴ではあったんですけど昨日全力疾走したりなんだりかんだりでついに、壊れ始めてて…」
「いい靴屋に出会えるといいね」
「はい」
そんな話をしながら、私たちは解散した。
フレンは私の部屋に入るや否や、どうして起こしてくれなかったと文句を言っていたが
どこか嬉しそうにする彼女に、私もなんだか嬉しくなった。
――――――――――
――数日後
「さぁ、飛び立ちなさい。紡がれた言葉を届けるために」
私はいつも通り、紡ぎ人の仕事をしていた。
数日前には、色々なことが起きたが時間は勝手に過ぎていくわけで。
いつまでも、失くした髪のことや程度の良い靴に巡り合えないことを嘆いていてもしょうがない。
「シエル、すまないが使いを頼まれてくれないか?」
お昼休み、フレンと昼食をとっていたところにロイド局長がやって来た。
「構いませんよ?」
「この手紙を、王宮に届けてほしいんだ。」
「え、王宮ですか?なんで私?いつもはロイド局長が行っているものですよね?」
「俺も後から向かう予定ではあるんだが、早急にこの手紙が必要らしくてな
俺はこれから会議が入ってどうしても行けなくてな。
シエルならアレルと他の奴らとも、挨拶しているから丁度いいだろ」
悪気無く笑うロイド局長
「何が丁度いいのかはわかりませんが、届ければいいんですね。わかりました。」
「それで、フレン。」
「はい?」
「シエルと一緒に行ってくれるか?」
「え!?私もですか?!」
目を大きく見開くフレン
「つい最近あんなことがあった後だから、俺が心配でな」
「いや、私なら大丈夫ですよ?
王宮に行くならどの道を通っても人目はありますし」
「いーや!一緒に行く!!」
「フレン…。」
「俺も、会議が終わり次第すぐに向かうから。頼んだ」
そう言い残すと足早にロイド局長が会議室に向かっていった。
「じゃあ、お昼食べ終わったら向かおうか」
「うん!私、王宮なんて初めて行くから緊張しちゃう!」
楽しそうにするフレン。
私たちは、少し急ぎ目で昼食を食べた。
――――――――
「紡ぎ人の、ルシエル・ブルーとフレン・ヴェリスです。
ロイド・ハーヴェルの命により、急ぎの手紙を持参いたしました。ご確認願います。」
私がそう衛兵の方に伝える。
「承っております。どうぞこちらに」
「え?」
「何か?」
「ここで手紙をお預けして、ではいけませんか?」
首を傾げ訪ねる。
「重要な手紙とお聞きしております。」
そう言うと、衛兵はまた歩みを進めた。
私たちは、戸惑いながらもそれに続いた。
―――――――――
〈コンコンコン〉
「紡ぎ人 ルシエル・ブルー様
並びに、フレン・ヴェリス様お連れいたしました。」
一度来た覚えのあるアレル陛下の職務室前で、衛兵がドアを鳴らす。
「どうぞ」
中からは、ノルさんの声が聞こえた。
扉が明けれる。
「失礼いたします。」
「しっ、失礼いたします!」
フレンの声が裏返る。
まぁ、緊張するよね。
「ルシエル・ブルーと、同僚フレン・ヴェリスです。
ロイド・ハーヴェルの命により、急ぎの手紙を持参いたしました。」
「ありがとうございます。こちらで預かりますね。」
ノルさんに手紙を渡す。
「わざわざ悪いな、手間をかけた。」
声のする方を見ると、アレル陛下の姿。
「いえ、仕事ですので。」
「ロイドも仕事なはずなのだが、俺宛の手紙はよく後回しにされる。」
「あぁ、伝えておきますね」
「頼む」
「お嬢さん、フレンちゃん!この間はいきなり悪かったな!」
セラフさんがこちらに笑いかける。
「セラフさん!!本当に、申し訳ございませんでした!!!」
フレンがバタバタとセラフさんの前で頭を下げた。
「いやいや!フレンちゃんが謝る事なんてないよ?!」
「いや!私が全面的に悪く手ですね!」
「はぁ…。」
2人の様子を見てため息をつくノルさん。
「私たちも丁度休憩を挟もうとしていたところでしたので、一緒にお茶でもいかがです?」
私とフレンは、その提案に頷くことしかできなかった。




