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手紙を魔法で空に飛ばしていたら、天然な第二王子の目にとまり、まんまと振り回される結果になりました。  作者: らいあ


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第5話 -BGMと、コーヒーの香り-

「相変わらず人が多いわね」


私は、ロイド局長に貰った休暇を有意義なものにするべく、ウエンティスで一番の賑わいを見せる市場にやってきていた。


食べ物も書物も娯楽用品もここなら何でも揃う。

他の三つの街から仕入れた珍しいものも売られているので、いつも街の人で溢れ返っている。


その活気あふれる様子に少したじろいでしまっていた。

夕方には、フレンとご飯を食べに行く約束をしているから、それまでにバレッタと新しい靴を見つけたい。


短くなった髪は紡ぎ人の仕事の時に、風でなびいて邪魔になりそうだからそれを止められればと思っている。

靴は、昨日全力で走ったり、こけたりしたせいで壊れかけてしまっている。

気に入っていた靴だっただけに、凄く残念だ。


出来るだけ人が少ない方へ、少ない方へと歩いていたら、気が付けばメインの道から反れてしまっていた。


「こっちにもお店はあるのね…。あまり来たことが無いから知らなかった。」


遠くの方で聞こえる活気のある声たちを聴きながら、少し静かな路地を歩いた。

そこでなんとなく目についた雑貨屋に入ってみた。


「いらっしゃいませ」


入ると落ち着いたBGMと、コーヒーの香りがした。


「あれ?コーヒー?」


不思議に思い思わず呟くと、レジに立つ女性が少し笑いながら「あぁ」と声を漏らす。


「2階でね、旦那がカフェをしているの。

1階が私の店で、各々好き勝手に好きなことしているのよ。」


柔らかく笑いながら説明してくれる。


「そうなんですね、すごい素敵です。

あとで、2階にもお邪魔させていただこうかな」

「んふふっ、ありがとう。ぜひそうしてあげて、あの人きっと喜ぶわ。」


そのまま私は、店内を見渡した。


「今日は何か探し物?」


キョロキョロ私を、気にかけてくれる。


「最近髪を切ったんですが、風で顔にかかってしまうので留めたくて…。」

「あら、そうなの?

なら、こっちの方かな。髪留めとかバレッタとか色々あるわ」

「うわぁ、本当にたくさんある!ありがとうございます」

「ゆっくり見ていってね」


そういうと、またレジの方に戻っていった。


色とりどりのヘアアクセサリーたちは、店内の光に照らされキラキラと輝く。

その中に一つ、銀色と深紅に輝く石が付いたバレッタに目が留まる。


手に取ってみると、さらに輝きが増す。


「この石は、魔石ですか?」


レジに持っていき聞く。


「それは、グレラードとフレイジアで取れた石を使っているわ。

さほど大きな魔力は施されていないけど、その土地の力は宿っている。」

「グレラードとフレイジアの――。」


説明を受け改めて、その石たちを見る。


「あなたの髪はとても綺麗な黒髪だから、その石たちがとても美しく映えると思うわよ?」

「そう、ですかね?」

「ええ、きっとね」


見つけた時からもう既に、心惹かれていたんだと思う。


「最初はそんな綺麗な髪、留めてしまうのは勿体無いと思っていたけれど

そのバレッタなら、留めた姿も見たくなるわ」

「ふふっ、店主さんお口が上手いですね」

「んふふ、まぁね。

なんて、本心を伝えたまでよ?」

「わかっています。ありがとうございます。

これ、ください。」


私はレジに向かった。



「エリー、今夜の食事なんだけれどさー

おや?お客さんがいらしたか」


会計を進めてもらっていると、2階から恐らく旦那さんであろう方が降りて来た。


「あははっ、ごめんなさいね。さっき話した旦那。」

「こんにちは」

「こんにちは、いらっしゃい。いいものは見つかったかい?」

「はい、とても良い買い物が出来ました。」

「それはよかった、良ければ上で休んで行かないかい?」

「はい、そのつもりでした」


そういうと、嬉しそうに笑ってくれた。


「今日の夜は、貴方に任せるわ」

「わかったよ、エリー」


ほんの数分触れ合っただけで、この2人の柔らかく優しい関係性がわかる。

カフェで旦那さんが話してくれた。

今日は2人の15回目の結婚記念日なんだという。

――だから、今日は早めに店を閉じお祝いをするんだととても幸せそうに話していた。



「では、お邪魔しました」

「あははっ、お姉ちゃん不思議なことを言うね!僕らは店をやっている側だ

いつでもお邪魔してくれて構わないよ。」

「あ、そっか――。」


ケラケラと2人に笑われる。

また来ると約束し、その場を後にした。



―――――――



「ちょっと!!髪!!!どうしたの!?」


一緒に夜ご飯を食べるため、フレンと合流すると何よりも先にそう言われた。

思わずその反応に笑ってしまう。


「とりあえず、中に入りましょう。詳しく話すわ」



――――――――



「その盗賊、ぶっ飛ばしに行こう」

「へ?」


私が昨日あったことを話すと、フレンはいきなり物騒なことを言い出す。


「ふざけんじゃないわよ!なんなの?!そいつら!!」

「ちょっと、落ち着いてよ」

「落ち着いていられるわけないでしょ?!

シエルが怖い思いさせられて、髪までそんなにさせられて!!!

あ!髪は短いのも似合っているからね!」

「ふふっ、ありがとう」


興奮するフレンに、思わず笑えて来てしまう。


「ロイド局長たちが助けてくれたし、処罰も与えてくれているからもう十分よ」


私はそう伝えるけど、フレンは不服そうに口をとがらせる。


「シエルがいいなら、いいけど…。

よし!じゃあ今日はたんと飲もう!食べよ!!その、アレル陛下との話も聞きたいし!」

「アレル陛下との話?別に、何もないわよ?助けていただいただけだし」

「いや、格好良かったとかその、どうだったーとか色々あるじゃん!」

「無いわよ!特に」

「えー??」


フレンの謎の盛り上がりに、私も引っ張られ盛り上がる。

気が付けば、テーブルの上は空いたお皿とコップだらけに――。


そして向かいには、酔っぱらって左右にゆらゆらと揺れるフレンの姿。

私は、割とお酒は強い方だがフレンはそこまでではない。


普段なら私も止めるが、きっと私に気を使って盛り上げてくれているのだろう。

彼女の優しさに、嬉しくなりつい飲ませすぎてしまった。


「ねぇ、シエルぅ?」

「ん?」

「よかったよぉ、本当に」

「なにが?」

「シエルが無事で」

「……………。」


へにゃへにゃした声でフレンが、言う。


「陛下たちと、ロイド局長に、感謝だねぇ」

「…ええ、そうね。本当に」


そして力尽きた様に、フレンがゆらゆらさせていた頭をテーブルに倒す。


「いや、寝られると困るのだけど」

「んー、寝ない、寝ない…」

「――いや、寝るでしょ。」


明日は、風書局は休みで仕事はないがここからどうやって帰るか。

魔法を使えば一発だが、魔力も使うし、少なからず酔っている私では若干の不安もある。


「…おぶる?いやぁ、それは面倒だよな」

「あれ?お嬢さん?」


聞き覚えのある声に振り返る。


そこには、セラフさんの姿と――。

あれ、誰だっけ。

どこかで見覚えのある男性が立っていた。


「あ、昨日はありがとうございました。」

「いやいや!お礼を言われるようなことは何も!今日はお休み?」

「はい、ロイド局長に休めと言われました。」

「あははっ!確かにね!」

「驚きました、王宮の方もこんな下町のお店に来られるのですね。」

「よく来るよ!アレルもたまにお忍びで来たりするし!」


いいのか?それは、護衛的には

なんて考えてしまう。貴族様の考えることはよくわからない。


「俺なんかは、ずっと王宮にいると窮屈でね!」

「お前は、馬鹿みたいに来てるよな

「んな!馬鹿とは何だよ!シーザー!それに毎回付き合ってくれるお前はなんなんだ?!

阿呆か?!」

「あぁ。シーザー・アウディ」

「え?」「え?」


あ。口に出ていた。


「申し訳ございません。突然」

「いえいえ?って、あれ?そっちで寝てるの、フレンちゃん?」

「あ、ええ。そうです」


フレンに目線を向ける。


「今日、食事をお誘いしたんだけど振られちゃってね。君との約束だったんだね」


フレン、

好きな人に誘われていたのに、私を優先してくれていたんだ。


彼女の優しさに改めて、心が温かくなる。


「申し遅れました。ルシエル・ブルーと申します」

「あ!君が、シエルか!」

「え?」

「フレンちゃんと話していると、よく君の名前が出るんだ!」

「え、悪口とかです?」

「んははっ!そんなわけないじゃん!」


ゲラゲラと笑うシーザー。


「お嬢さんと知り合いか?」


セラフさんが不思議そうに尋ねる。


「私との知り合いというか、私の友人と知り合いですね。

この寝てるのが、フレン・ヴェリスです。紡ぎ人の仕事仲間で友人です。」

「へぇー!すごい偶然もあるもんだな!

俺は幼い頃、体が弱くてアウディ家で薬を買っていたんだ。その時に、シーザーと出会った。それから気が付けば今だな。」

「アウディ家は、王宮お抱えの薬屋だからね」

「へぇ、とても長いお付き合いなのですね」


王宮お抱えの薬屋だなんて、フレンは知っているのかしら。


「フレンちゃんも寝ているみたいだし、飲み相手にご一緒してもいいかな?」


シーザーが言い出す。


「そうだな!ここで出会ったのも縁だろう、いいかな?お嬢さん」


第二王子の側近と、王宮お抱えの薬屋にこの提案をされて、断れる平民はいるのだろうか。


「えぇ、もちろんです。」

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