タバコと美少年さいこー
第5騎士団団長 ヴァリラ視点
紫煙が盛大に炊かれた部屋の中、煙幕かと思われるほどタバコを吸っている。
あぁかわいい子の手をにぎにぎした後と密室デート後にやるタバコは非常に美味い。
「お疲れ様でした。殿下との密室デートはどうでしたか?私を差し置いて。そしてタバコで煙たいです、換気して禁煙してください。若者がいないからって吸うのやめてもらっていいですか?私だって未だピチピチ20代です。」
そう言って苦言を呈して来るのは副官の一人で堅い方のナイリアシナ。若い若い言いながら29歳。若いながら副官を任じられるだけの実力も彼女の後ろ盾となる実家も太い娘だ。
惜しむべくは小言が多いことか。もう一人副団長はいるが、ゆるフワした奴で締めるときは締められるやつだ。二人セットのマジメとゆる子で丁度良い。
「ピチピチ20代って……そらお前未婚だからってそう言うか。」
すごい笑顔で睨まれる。出会いがないのはどうしたって国外に行くからで、国外で出会い意気投合できる男なんぞハニートラップか美人局か間諜かスパイのどれかしかない。既婚で仕事を振る私が悪いと言いたいのか、それとも可愛い男の子と密室デートしたことが悪か。
窓が開けられ梅雨時のモワッとした空気と紫煙が入れ替わる。
「可愛い殿下ではあったし、16歳とは思えないほど利発とした出来の良い皇太子様であったぞ。
ただなぁ、為政者として採点するなら100点満点で60点と言った所か。普通なら合格ラインではあるが我が隊なら追試レベルであるな。隣室で待っている間のアヴィエラはどうであった?確か15だったか16か17歳であったろう。」
「閣下については、年下好きの甘々にしては辛口評価ですねその心は?やはり甘々に甘やかしたいからですか?」
トゲが含まれたような貶されたような事を聞かれた気がするがスルーをする。
「甘やかしたいのはある。考えてみろあの可愛さを。それが目の前にいて密室デートだぞ。デートの甘い空気は全くなかったがな……。
採点理由だったな、順を追っていこう。まず加点だが尋問においては初めてなのにビビリもせず力む事なく過不足なく卒なくやっており、あんな暗く陰湿な場所で死を前にした者の前に立ち交渉をやってのけた事だ。
減点もある。わざわざ一族郎党の処刑を追加で殿下自身より伝える必要はなかった。対象は素人で水と寝不足で衰弱し出来上がっており、そこに悪い情報を与えるのはあまり褒められたことでない。
やけっぱちになられて適当な事を答えたり土壇場で裏切りなんて目も当てられない。殿下に嘘を見抜くだけの経験とスキルがあるとは思えない。
処刑を伝えるなら尋問官が先に伝え、嘘と非協力的なら不利益になると刷り込ませた方が効果的だ。」
「報告書を読みましたが過不足ない所は同意見です。ですが、尋問やごうも……強化尋問は下々の者がやるから殿下のような天上の方が知る必要はないと考えられ教育から外されていたのではないですか?」
「確かにそうだ。だが下々のものがやりました知りませんじゃ為政者としては困る。勝手に強化尋問を行えてしまう余地が生まれてしまうのは政治においても軍人として責任を負うものとしてもまずい。
次に、この部屋での会談においても複数の加点と減点がある。こちらが何らかの意図を持って二人切りのデートを作った事を見抜いた事は加点しよう。だが陛下の思惑を読み違えている事は大きな減点だ。
そもそもこの件で、お使いに出したラクトーシャからも同じような提言があった。責任者として第9騎士団を動かし闇から闇で後ろから短剣と拷問で関係者の情報を抜き出し皆殺しにする方が簡単で帝国のメッセージも明確で、帝国と神仇なす者に短剣と鉄槌を下すとな。
だがそれをわざわざ神と陛下は皇太子殿下にまずは、第5騎士団に任せた。
この意図は表からのやり方を学ばせる事、と我々は国外外交の場というアウェーにおいて最後の剣であり盾である。その盾を使って今回、陛下は教え辛い事を安全性を高めてやらせようとしている。
初めて処女を切る事は大変だし、小競り合いに出したは良いが戦の最中に流れ弾で事故が起きて貰っては困る。尚且つ管理できていない所でトラウマになって殺しが出来なくなってもらってはもっと困る。父というより、皇帝としての愛だな。」
「とか言いつつ大減点をしないで頭を任せるところを見るに、殿下に光る所か、かわいいショタを気に入りましたね。」
私は目を反らしつつあの年若き殿下を思い浮かべ、無視を決め込む。こいつのことだからどうせ分かっているので目を反らす。痛い所をサクサクついて来るから反らす。
新年のパーティなどで会ってもココまで二人きりなどなかったのだ。ときめきは大事だ。
「後はこちらがセクハラまがいで主導権を握ってからの紳士的な立ち直りは良いがそこは経験の差でしかたがない、年嵩の差か。
嫌になるね。手は柔らかく、身体はいい匂いがしそうな所がまたそそられる。セクハラをいかに跳ね除けるかって言った所は私が直に手とり足取りやりたい所だ。」
「不敬罪を帝城にタレコミましょうか?それともショタコンが頭を侵食なさいましたか……。旦那様にちくりますよ?旦那様を差し置いて若い殿下にセクハラしておりましたと。」
刺々しい顔と目で見てくる。
聞こえないし聞こえない。お耳はきこえなーい。愛する旦那様にちくりはまじでヤバイので話題を変えてしまおう。
「それで、お前の方はどうだった?皇族の奴隷だ。身分に関わらず英才教育を一身に受け、殿下の快刀であり盾そして裏切ることがない絶対の親友。奴隷身分なのでパーティには出席出来ないため面識もなく会うのはほぼ初めてだが感情が読めなかった。」
「一緒にお茶をした私も全然読めませんでした。こちらのことは警戒していませんでしたが、感情を上手く隠していました。
帯剣こそしていませんが、ふわっとした上着とロングスカートの下に短剣か何かを仕込んでいます。試合なら私はのされそうですね。しかし決死の対人経験や殺しの経験が浅いため、殿下を人質に取るとか、殿下に刺客を送って焦らせれば余裕で崩せます。
言うならば訓練は上出来な鉄の新兵です。」
「だがまだまだ浅いか、こいつを実地訓練とは面白そうだ。」
鉄の新兵とはよくいったものだ。私なんてもう全盛期をとうに過ぎ、体力も衰えつづけ訓練も経験と小手先の技術でなんとかと言うのに……。眼前の副官だって騎士としては決して弱くはない、一番とは言えないが上位に入る。我々は護衛で時間稼ぎや防御に長けている。
我が隊もさらにあの従者と同じぐらい訓練を……。いやそんな事をしたら今いないラクトーシャを筆頭にボイコットと抗議の嵐がやって来ると想像出来る。今でも隊員達からいつも婚期がーとか婚期がーと恋人がほしいーブチブチブチと文句言われ続けているのに……。
「それで、誰を殿下の護衛とするのです?閣下が直でつくわけには行きませんよ?流石に次男坊の護衛にしては豪華過ぎますし、平騎士だと我々の企みに気づけず終わってしまいます。」
「候補はお前か、ラクトーシャか、さてどうする?お前を前に言うのも何だが年功序列ならお前だし、若いモン同士でくっつけるもいいが、甲乙つけがたいぞ。」
堅い育てをして堅実な騎士を育てるか、寄り添った育てをして個性を活かす騎士にするか。
「そうですね、騎士学校を出たばかりの新人騎士や兵士を育てる役割は彼女が一番ですし、私は苦手です。後かわいい殿下をいじめるのは気が引けます。男をいじめるのはちょっと趣味に合わないです。」
どっちにしろ、後か先かの違いなんだがなと思いつつタバコを吸う。
「どうせ、領都で合流する予定だ。先はあいつにして、その後は状況で柔軟に判断と言った所か。今回の一件を持ってきたのが神だからこそ根は深く護衛期間は長くなるぞ。ご期待通り殿下を立派な騎士ならぬ世にも珍しい男騎士にしてやろうではないか。」
「かしこまりました。長旅の準備をします。ま、感のいいもの多いのがこの団です。気づかれるでしょうが、殿下が対象とまでは分からないでしょう。
私達を飼いならすぐらいの男になっていただきたいですね。そのための、血と汗、涙を体験していただきましょう。」
二人して可愛い殿下育成計画をしていく。
あぁさすが愛する神と皇帝陛下、素晴らしい。
この歳まで実子は持てなかったが、次代の皇帝を育てるなど最後の花道にふさわしい。
かわいいじゃろう?だがな、真髄は天然な所じゃあ。




