馬と馬車と輜重隊
鳥かご作戦フェーズ2
梅雨の時期もいつの間にか過ぎ去り、暑い中、国境から続く街道を我が帝国軍が国旗を意気揚々と掲げ、綺羅びやかながら実用的な鎧を見せつけるように騎兵が行進し、馬車が連なって進んでいる。
馬車と輜重隊がいるとはいえ、徒歩兵がいないため、進軍速度は速い。約束通りに到着する。
軍隊を時間通りに動かすのは、途方もない労力だ。食事から下の世話まで必要だし、徒歩兵もとなれば、さらに骨が折れる。
指定した野営地に到着し、そこを経由して街へと向かう。街からの案内役が来ていたが、こちらが完全武装の騎兵隊であることに、ビビり散らしている。
その様子を馬車の中からイゾルデ外務大臣閣下は面白そうに笑っている。俺は変装して侍従の格好をし、外務大臣たちの侍従という体をとっている。
襲撃もなく街に到着すると、街の入口では小集団が待ち構えていた。
事前情報通り、街を覆う城壁は高いが一本の重厚な壁で、堀もなく、周りには畑が広がり、戦を想定した作りではないのが見て取れる。
手入れはされているものの、熱心ではないのだろう。壁からは目立つ雑草が見えていた。
騎兵の合間から見える入口で、エテリアル外務大臣と挨拶している、ゴテゴテに着飾った小太りの女性が領主だろう。
そして、もう二人。あれが王国から送られてきた奴らだろう。この場で得た情報は、宿に通されてから時間をかけて整理し、既存の情報と照合しよう。
「お疲れ様でした。ここなら大丈夫ですよ。周囲は二百名規模の騎士たちが守り、防諜体制もしっかり確認済みですから。それで早速ですが、今回の会談相手が、ちょっとおかしなことになってます」
「侍従の格好をして、口に綿を入れ、かつらを被ると、暑いったらありゃしないんだ。どういうことだ?王家が連れてきた、あの二人のことか?」
ヴィーとリラに紅茶を淹れてもらっている間、はしたないと言われそうだが、服を持ち上げて扇ぐ。
「もう、はしたないですよ?そうです。あの二人は、王家側が出した会談相手ですが、二人が所属する派閥が違います。
一人は王家の役人ですが、もう一人は領主独立独歩を主張する派閥のナンバー3くらいで、伯爵位です。
ここでおかしいと言うのは、街の領主、王家側の役人、独立独歩派の伯爵と、王国側の三者が全員異なる派閥に属しているという点です」
「?独立独歩なら、この街の領主もそうじゃないのか?」
「いいえ。この街の領主は、国王派にすり寄ってはいますが、日和見主義の小心者で、下手くそな博打打ちです」
「発言をよろしいでしょうか~?」
リラから発言の許可を求められる。二人とも許可を出す。
のんびりした感じだが真面目な顔をしてても、ほんわか笑顔で緊張感がない……。
「日和見しているか~、自分の存在感を消したかったか~、ではないでしょうか~」
「ほう?後者について。そう思った理由はなんだ?」
「あの領主~、挨拶の時、最初こそ前に出ましたが~、あとは下がって~、ホストの面目だけは最小限保つけどさ~、さっさといなくなれーって感じで~、内心では恨めしく思っている感じがバリバリです~」
「でしょ?ミケ君、面白い考え方をするから、連れて来て学ばせてるんだ。私もその意見に賛成だ」
確かに、鋭く、面白い視点で意見を出してくる。
「そうだな。確かに一理ある意見だ。ありがとう。素晴らしいな。こんな人材を連れているイゾルデ閣下が羨ましい限りだ。この後ヴィーがお使いをして、最終判断を行うが、とりあえずこちらのことは漏れていなさそうだな」
「あ、ありがとうございます~。それで、その~。ミケさ……ん個人的に報奨を出していると耳に挟みまして~。私も参加してもよろしいでしょうか~?閣下の許可も、道中一応第五の方たちには話して~。『あーしが貰うからあげないっすよ!?』と、許可を得ていますし、アヴィエラにも聞いていますが~。ミケさ……ん次第だと、素っ気なく返されまして~……」
彼女は、意外と辛辣なことを言う。だが、素直に感情表現をしてくると思っていたら、「報奨争奪戦」に参戦したいと言ってきた。
ちらりと閣下を見ると、楽しそうなので許可を与える。
ただし、ふさふさの耳と尻尾を見て、ちょっとした意地悪を仕掛ける。
「おや。ヴィーにまで聞くとは珍しい。これは俺の奴隷だぞ?わざわざ聞く意味はあるのか?それともあれか?奴隷は人であり、解放すべきという手合いか?」
「いえ~。普通の貴族ならしないでしょうが~、我が家は裕福とは言えませんでしたが、一人だけ奴隷がおりまして~。彼女は年季が明けても奉公してくれる大切な姉です~。
結婚して出てくなんて言われたら~、泣いてしまいます~。同じと言いましょうか~。空気をお二人から感じ取りまして、横から行くより、直接行ったほうが良いと判断した次第です~」
「だってさ、ヴィー、どうよ?許可はヴィー次第で」
驚いた顔をしたヴィーが慌ててるが、面白い。
「えっっ、私ですかっ?ええと、問題はないと思います。どこぞの羊獣人のように、私を試してきたわけでもありませんし、観察しましたが、良いのではないでしょうか?数も多いほうが、ミケさーんも楽しいのでは?」
試して来たって。俺が鉄火場に放り込まれて、その後お出かけのあれか。
あの時の簡易報告は聞いているが、詳細は面倒だったし、楽しそうだったから、放置していたんだよね。
リラも「誰だろう?」って一瞬迷ったようだったが、『!』って頭に浮かんで驚いているのも、表情に現れていて面白い。
許可も出たし、楽しそうだから、報奨争奪戦に入れてやろう。
「イゾルデ閣下、問題はないな?俺から個人的に報奨を与えるのは?」
「えぇ、問題ないですよ?流石に引き抜くのだけは許しませんが、今後育って美味しくなったら個人の自由です。どっぷり嵌って抜けられるとは思いませんがね」
「だ、そうだ。報奨は、俺が叶えられる範囲と、財布の中身の範囲でな。個人の金はそんなにないから、体で払うことになる。そうそう、一応ここにいる間、防諜の関係で俺はミケだ。よろしくな」
「あっ、ありがとうございます~。か、体でなんて……そ、そんな……はずかしい……」
意外と初々しい娘なのか、それとも計算なのか。分からないが、ここまで話を聞いた限り、問題はなさそうだ。
だが、面倒なものを引き寄せるのが皇族なのだ。
これは初代皇帝様から憑かれているから、変な呪いでも付いてるんじゃないかな……?
何やら失礼な事を想われておる気がする・・・!そしてカリスティアがソワソワしっぱしじゃあ、ロリ巨乳揉むぞっ




