羊ちゃんデート
昨夜は風呂に入り、湯上がりに紅茶を淹れてもらった。その後、ヴィーは明日の打ち合わせに行くと言って部屋を出ていき、俺は一人になった。
ゆっくりと民の日常を垣間見て、その余韻を噛み締めることができた。その後、ベッドで本を読んでいるうちに、いつの間にか寝落ちしていた。悪夢を見ることも、ひどい寝汗をかくこともなかった。おかげで朝食も美味しく感じられた。
アヴィエラからブリーフィングが始まる。
「では、本日のブリーフィングを開始します。昨日と同様、本日も殿下は宿を出られますが、行き先が異なります。昨夜、ラクトーシャ様と相談し、街ではなく、少し離れた草原まで出かけることになりました。目的地は森ではなく草原ですので、周辺の警戒もしやすいでしょう。
護衛班、演習班、第九から、何かございますでしょうか?」
「護衛からは特にないっす。今日はあーしらが主導っす!」
「演習班も特にないな。領主館の出入りにも変化はなく、平穏そのままだ」
「第九……特に……ない。昨日……夜……一人死んだ……情報……確度……変わらない……続行」
そうか、誰かが死んだか。まあ、どうせ死ぬ運命だったのだ。早いか遅いかの違いでしかない。
「ありがとう。今後の予定は変わらず、ということでいいな?」
「問題……ない。適宜……情報更新……される」
「分かりました。ありがとうございます。他に何かございますでしょうか?
あ、ちなみに今回、殿下が騎馬で行かないのは、ラクトーシャ様が二人きりになりたいからではありません。馬を並走させながら話しかけるのは恐れ多いと、チキンになって避けたわけでもありません。ラクトーシャ様はチキンハートではございませんので、皆様、覚えておいてくださいませ」
「ちょ、ちょっとぉお!何言っちゃってくれてるんすかー!?あーしはチキンなんかじゃねーっすよーーーー!!!」
「そうだ。こいつはチキンハートガールではなく、純情ピュア100%のチェリーガールだ。間違えるな。……残念だ、私も護衛班に加わりたいが」
「そうだったな。ぴーぴー鳴くものな」
「ふふ……面白……可愛かった」
「あぁぁー!あーしの味方はいないっすかー?!」
ラクトーシャは皆にいじられ、ヴィーにまでいじられるとは……。
だが、今は楽しもう。昨日だってそうだ。過去の亡霊に囚われ、沈んだ気持ちになっていた。そんな状態では楽しめないし、せっかく楽しませようとしてくれたヴィーとルミナにも申し訳ない。今日のヴィーとラクトーシャに期待しよう。
「……とのことですが、その話はひとまず置いておきまして。では、そろそろ行動を開始します。本日もよろしくお願いいたします」
草原へ向かうための馬や装備を準備している間に、俺も出かける支度を済ませる。少し待っていると、従者風の服に着替えたヴィーが、準備ができたと呼びに来た。
あれ?ラクトーシャは?そう思っていると、騎士服や制服とは違い、スポーティーながらも可愛らしいシャツと七分丈のパンツを着たラクトーシャがやってきた。癖っ毛をお団子に結び、少しもじもじしている。どうやら、着替えに時間がかかったらしい。
動きやすそうだし、よく似合っている。
「動きやすそうでいいね。似合ってるよ」
ラクトーシャは照れているが、どうやら今日は、ヴィーが御者を務め、ラクトーシャが俺の話し相手になってくれるようだ。
まるで二人だけのデート……。ヴィー!謀ったな!!
「で、でん……。んんっ。ミケさん、お待たせしました。さあ、参りましょう?お手を拝借しても?」
おや?外交官のエスコーターとしての皮を被ったな。いつ剥がれ落ちるかな?素が出るまで、少しつついてみるか。
「手でいいのか?腕も組んでもいいぞ?」
「い、いえ。今日は私が手を引かせていただきますとも。ええ」
そう言って手を引かれ、馬車の前まで案内される。
「段差がありますからね」
そう言いながら、丁寧にエスコートしてくれた。馬車の中は対面式で、乗っているのは俺とラクトーシャの二人だけ。ヴィーは御者を務め、周囲には騎馬の護衛がついて出発した。
思えば、ラクトーシャと本当に二人きりになったことはなかった。食事会にはほかのメンバーもいたし、最近は演習班に入っていたため、顔を合わせる機会も少なかった。
「そういえば、二人きりなんて初めてだな。今日は楽しみにしてるんだ」
「にゃっ、なに、いきなり言うんですか?!」
「まるでデートのようではないか。どこぞの狼娘が気を回して、こんなことになったがな?」
「っっ。きょ、今日はアヴィエラがあーしを案内して、それを見守り、見届けるのがミケさんなだけです!本当はあーしだけで案内したいっすけど……」
だんだん慌ててきているが、まだ崩れないか。最後のほうは声が小さく、聞き取れなかった。時間はたっぷりある。楽しまなければ、ヴィーが作ってくれた機会がもったいない。
「おや?俺とのお出かけは嫌だったか……。それは……」
「そ、そ、そんなことはないっすよ!!あーしにはもったいないぐらいで……」
「じゃあ、今から領主館に行って、お目付け役をナイリアシナに売り渡すか?交代で」
「だ、だめっすよー!あーしはミケ君とアヴィエラとのお出かけが嬉しいっす!ちょー嬉しいっす!」
このラクトーシャをいじるのは、やっぱり楽しい。普段の硬い態度から、照れて崩れた姿まで、いろいろな表情を見られる。
「そうかー。じゃあ今日は、ヴィーに楽しませてもらおうかね」
「あー!あーしじゃないんっすか?!」
「だって、今日はヴィーがラクトーシャを案内するんだろ?」
「うぅーー……」
何やら頬を膨らませ、むくれてしまった。そんなことをされると、いたずらで押したくなるのが人情というものだ。
なので、両手で頬をむぎゅっと押してみる。
「ぶふっ!なにするんすかー?!」
「いたずら」
そう答えると、また文句が飛んでくる。そんな掛け合いを続けているうちに、ふと気になったことがあったので聞いてみた。
「そういえば、よかったのか?昨日みたいに街へ行くんじゃなくて」
「そうっすねー。あーしはあーしのやり方で楽しむっす!それが街だろうと、草原へのお出かけだろうと関係ないってのが、あーしです。あーんしてもらうとか、するとか……羨ましいっすけど」
楽しむというところまでは聞こえたが、最後のほうは声が小さくて聞き取れなかった。
「お前のことは、個人としても仕事の面でも信頼しているぞ?例えばだが、お前が今いきなり乱心して、俺を拉致しようとするだろう?」
「は、はい?」
「根回しは当然、護衛部隊全員に済ませてあって完璧。ヴィーは阻止しようとするだろうが、俺を盾にしてしまえば、ヴィーを簡単に封じられる。今日は絶好の機会だ」
「そうですね。ミケ君のおっしゃる通りです。私が本当にやるなら、こんなふうに馬車で二人きりになったところでミケ君を捕まえて黙らせます。それから、御者をしているアヴィエラを殺して埋め、発覚を遅らせて偽の報告をし、頑張って逃避行します。地の果てまで追いかけられるでしょうけど、どこまで逃げられるか分からなくても、逃げます。
そう考えると、ミケ君を鉄火場に叩き込んだ後のアヴィエラからすれば、成長しましたね」
ラクトーシャは優しい笑顔で、前方で御者を務めるヴィーを見た。確かに、その通りだ。
あの直後なら、ガルルルと威嚇して、誰も近寄らせないようにしていただろう。特に前科もあるしな。
「まさか、こんなことになるとは思わなかった。いつもの間延びした話し方もいいが、その真面目な感じもギャップがあっていいな。
どっちが素なんだ?」
「嬉しいことを言ってくれるっすね。そうですね、どちらでしょうか?」
何やら、試すようなことを言ってくる。少し気になるが、この人はヴィーとはタイプが違うものの、どこか似ている気がする。
自分の黒い部分を隠し、蓋をして、目を背けている。ヴィーは蓋をして徹底的に封じ込めようとするが、その点ではどこか同じだ。
「試すか?前回の比ではなく、いじるぞ?」
何やら冷や汗をかいて慌てるくらいなら、言わなければいいものを……。
「主従揃って、あーしのことを試してくるっす!どこの誰がこんな教育してるっすか?!」
「そりゃあ、神殿教育の賜物だな。主に神様が皇族をフランクに育て上げるんだ。だから、今まで不敬罪が適用された奴なんて、そうそういない」
「そういえば、そうだったっす!他国でこんなふうにフランクに接したりしたら、普通は不敬罪っすよね。ましてや、鉄火場に叩き込んだりしたら、一族郎党皆処刑されて当然だったっす。
ってか、あーし、神様に拝謁したことって一回しかないんすよ。生まれて五歳の時に神殿へお参りしたぐらいっす。それも簾越しっす。
神殿にいらっしゃるのは分かるんすが、いつも神殿から見守ってくれている、って感覚っすかね?」
普通の民草や貴族にとって、神様とはこんなふうに、ふわっとした存在なのだろう。だが、関わりの深い皇族からすると、まったく違う。一生頭が上がらず、絶対的な上位者。そして、俺たちが高位貴族と呼ばれる立場に生まれた理由も知っている。
俺たち青い血は、何の理由もなく突然生まれたわけではない。何らかの功績や経緯があって成り上がり、前王国から今の国が成立する過程で貴族位が生まれたのだ。
「ふふっ。まだまだ、そんな調子じゃあ上には行けないな。これから皇族と関わるうちに分かるから、覚えておくんだな」
「?分かる?何がっすか?」
「神様が」
「えっ?神殿にいらっしゃるのでは?」
「いらっしゃるぞ?」
「?…………。どーゆーことっすか?!」
「ああ、知らないからこその幸せだな。いつか思い知る日が来るだろう。いや?片鱗なら、もうすでに見ているはずなんだがなー」
「いやぁああ!!知りたいような、知りたくないようなっす!」
そんな他愛もない話をしていると、そろそろ目的地に着くとヴィーから案内が入った。
「さすがエスコートするだけある。話術も達者だな。時間があっという間に過ぎてしまう」
「て、照れるっす」
目的地は、空が大きく開けた見晴らしのよい草原だった。中央には一本の大きな木があり、その木陰は過ごしやすそうだ。周囲には、ほかに誰もいない。そこに馬車を止め、少し離れた場所に騎馬の護衛たちが馬を止めていく。
「では、簡単な設営を行いますから、ミケさ……んとラクトーシャ様は、そこら辺で待っていてください。ラクトーシャ様は、ミケさ……んのお相手をしていてください」
「えっ、あーしもやるっ……」
「ミケさ……んを放置ですか?」
は?何いってんのこいつって顔をしたヴィーが護衛部隊に聞こえるように言うとまわりから。
「隊長?男性をほっぽっておく気ですか?」
「さいてー」
「淑女の風上にも置けない」
「取って代わる?」
「シバク?」
なんて話をこそこそとせず、聞こえるように相談し始める。
「「「「やるか!」」」」
「あーしの隊、反乱の危機ッ!?」
そんな掛け合いをしつつ、部隊の一人から強く進言を受けている。
「反乱を起こされたくなければ、すっこんでいてくださいませ、隊長」
「はいーっ!!ミケ君、そんな理由で反乱回避のため、一緒っす」
「えーっ、どーしよーかなー?反乱祭りも楽しそうだしなー」
「や、やめてーっす!男を巡って争いが起こるのが世の常っす!」
その通りで、国が傾く理由にもなる。悪い顔をしている自信はあるが、やめるつもりはない。
「ここで俺も『手伝うー』って参加するのも楽しそうだよねー?」
「精一杯お相手するから、許してほしいっす!」
拝み倒される勢いだったので、了承することにした。そうして、ラクトーシャの相手をしつつ、あるいは相手をしてもらいつつ、時間を潰す。
やがて、普通サイズと大型のシートが一枚ずつ設営された。……なんか、大型のほうは場所が遠くない?
え?普通サイズのシートを、俺とヴィーとラクトーシャで使えって?何だかんだ言って、君たち、ラクトーシャのことが好きだよね。絶対に否定するだろうけど。
シートにヴィー、ラクトーシャと横一列に座ると、紅茶と茶菓子が出され、ゆったりとした時間が流れ始めた。
しばらくすると、ヴィーが「これ、どうぞ」とバスケットを差し出してきた。
「おやつ代わりのサンドイッチです。私は護衛班に差し入れをしてきますので、中座させていただきます。あ、これ、濡れタオルです。では、ごゆるりと」
驚いていると、ヴィーはそそくさと行ってしまった。後ろをついてきて、スンスンしてくるヴィーが……。いや、そうではなく。
ヴィー、謀ったな!二回目。
ラクトーシャの差し金かと思って隣を見ると、こちらも驚いていた。俺は隣に座るラクトーシャの顔を見上げる。
「ヴィーが、ああも成長するとは……。ありがとうな」
「ええっと……。なんて言うか……」
「じゃあ、食べるとしようかね。何がいい?取るぞ」
「えっと……じゃあ、ジャムが欲しいっす」
さて、たっぷりといじるぞー。悪代官のようなやり口で、少々強引ではあるが、楽しい。
「これか。ほら、あーん」
「じ、自分で食べられますので……」
「ほら、まだ手を拭いてないでしょ?濡れタオルは俺がぽーいして隠したから、ありません」
「じゃ、じゃあ、失礼して……」
観念したかのように、顔を赤らめたラクトーシャがサンドイッチを口にする。
「おいしい?」
そう聞くと、「おいしぃよぉ」と、とろけるような声が返ってきた。甘やかしまくると、どうなるのか試してみたい。
そう思いながら、俺もサンドイッチを食べる。
「おお、確かに美味しいな。卵もハムも野菜も、どれも美味しい」
「ええ、美味しいっす」
照れながら答えるのが可愛いなぁ。じゃあ、もっと甘やかして、ドロドロになるまでやってみるか。
「おっと、口の端に付いてるぞ?拭いてやるから、じっとしてな」
「は、はいっ!」
ラクトーシャは目をぎゅっと瞑った。からかうのもいいが、ここは普通に拭いてやる。別の方向から攻めてみよう。
「じゃあ、俺にも食べさせてくれるか?ジャムのやつでよろしくな」
緊張した様子で頭をふるふると揺らしながらも、食べさせてくれる。まだまだ、いじるぞっ。照れたところも面白い。
「し、失礼して……。あーん」
「あーん。うむ、ラクトーシャが食べさせてくれるから、美味しさ倍増だな」
「な、ななな……。あぅぅ、恥ずかしいよぉ……。って、あーしの隊の皆、こっち見んなー!恥ずかしいだろー!?」
真っ赤になりながらも、俺には文句を言えないらしい。怒りの矛先を変えて、護衛班に文句を飛ばした。そうして、互いに「あーん」をして食べさせ合っているうちに、おやつは終わった。
そこへ、下手人のヴィーが戻ってくる。
「ラクトーシャ様、美味しかったですか?」
確信犯のような顔ですまして聞いてくるヴィーに、真っ赤になったラクトーシャは「ぐぬぬぬ」としか返せないようだった。紅茶を淹れ直してもらい、腹八分目で食事を終えた。ほっと一息ついていると、だんだん眠くなってくる。
昼寝など、いつもはしないのだが、こうも開放的で、そよ風が気持ちいいと眠気に抗えない。
そうだ!枕が欲しい。
ヴィーに頼むのではつまらない。だって、いつでも頼めるからだ。ちょうどいい相手が隣にいるじゃないか。ぺたんこ座りをしている、彼女が。
「ラクトーシャ、ちょっとお願いしてもいいか?」
「な、なんでしょうか?」
おずおずと聞いてくる。さっきから、いつもの間延びした口調が出てこない。
「そのままでいてくれよ?あと、しーっ」
そう言って、ぺたんこ座りをしているラクトーシャの膝に、横から頭を乗せる。ああ、柔らかくてちょうどいい感じだ。
ラクトーシャが小さく「んひぃぃぃっ」と声を上げているが、気にしない。
「ああ、気持ちいいな。ありがとう。すまない、眠くなってきた」
「あぁ……男女逆転も悪くない……」
何やら小さく呟いているが、気にしない。すると、どこからか薄いブランケットがかけられた。ラクトーシャの膝枕を受けている俺に、こんなことができるのはヴィーしかいない。
「ちょっと護衛班のほうに紅茶を届けてきます」
そんな声と、ヴィーが離れていく音が聞こえた。
「助けぇ……」
ラクトーシャが呟いたが、その声は誰にも拾われないまま消えていった。しばらくして、俺は膝枕をされたまま、話しかけた。
「ここでは非公式で、俺はミケ君だよな」
「え、ええ。そうですよね」
「少しだけ、弱いことを言ってもいいか?今回、ここに連れてきてくれてありがとうな。やっぱり、初めて自分の手で人を殺すのは、心に堪えたみたいだ」
「ミケ君……」
「それで、みんなが心配して、街に連れていってくれたり、こうして草原に連れ出してくれたりしたおかげで、元気になった。感謝しているぞ。
間延びした話し方も、真面目な話し方も、どちらもお前らしくて可愛いよ」
「んっ、んんん……。きゅんくるぅ……」
よし、追撃しよう。どろどろに甘やかすとどうなるのか、気になるのだ。
「これから公務で国外に行くこともあるだろうし、こういった護衛任務も回ってくると思う。受けてくれるか?俺としては、ぜひ受けてほしいところだ」
「えっ、ええ、わたわた私も、ぜぜぜひお願いします」
目を閉じたまま、少しだけ目を開ける。ラクトーシャの顔は、変わらず真っ赤だった。
俺は右手で、その頬をそっと優しく撫でる。ラクトーシャがあわあわと声を上げているのを聞きながら、再び目を閉じた。
膝枕の心地よさに、そのまま眠ってしまったらしい。
気がつくと、少し時間が経っていた。それでも、ラクトーシャの顔はまだ少し赤く染まっている。膝の上から見ると、ヴィーも戻ってきていた。表情はいつもと変わらないが、犬耳の角度からすると、少し不機嫌らしい。
……夜は構ってやろう。
そうして起き上がり、ラクトーシャに礼を言う。
「膝枕、ありがとうな」
頭をなでなですると、ほわほわした髪質が気持ちよかった。そんなことをしているうちに、帰る時間になった。
「帰りはあーしが馬車の御者をするっす!」
そう宣言すると、ラクトーシャは逃げるように御者台へ向かっていった。ちっ……。帰りも二人きりだから、もっとドロドロにする予定だったのに。
馬車に戻ると、遠慮しているヴィーを隣に座らせた。頭と犬耳をいつもより多めになでなでしてから、ふさふさの尻尾を抱き枕のように捕まえる。それからヴィーの肩にもたれかかり、頭を預けた。
尻尾を撫でながら、今日はありがとうな、と礼を言う。
「やっぱり、お前とは長く一緒にいるからかな。一番触り心地がいいし、こうしていると安心する」
そう言いながら、優しく撫で続ける。
ヴィー自身は気づいていないのだろうが、手の中の尻尾は少し嬉しそうに揺れていた。
おーどろどろに甘やかされたいものじゃ。この世界では普通女が男に尽くし、甘やかすのが常識じゃ。




