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逆転世界における現人神様の箱庭生活  作者: けちゃらー第一号被験者
20/53

ノック・ノック

 コンコンコン。


 通路側の扉から、控えめなノックが響く。

 ボケていたとはいえ、護衛を無力化した気配も、足音すらしなかった。気が付かないほど間抜けでもないはずだ。薄着で間抜けな格好ではあるが。


 即座に臨戦態勢に入り、置いておいた弩を扉に向け、窓から離れる。ヴィーも扉から離れ、剣を構えて通路側と隣室側を警戒する。護衛や従者であれば、隣の部屋からノックをするだろう。ましてや、こんな夜中に男が泊まっている部屋へ来る。

 襲撃者か、殺し屋か、夜這いか淫獣め。問答無用で殺されても文句を言えないような行動だ。



「誰だ!こんな夜中に!!答えなければ弩で扉ごとぶち抜いて殺す!」


 ヴィーがよく響く声で警告する。

 これは護衛への確認も兼ねている。不審者が扉の前にいるぞ。お前ら何やっている、と。


 そして俺は声を出さない。襲撃だった場合、声でこちらの位置がバレるのを危惧しているからだ。



「あらぁ。流石にこんな時間に、良い雰囲気でしっとりしてるところを邪魔されたからって、殺気立たないのー。

 やっていることがことだから殺害予告はしょうがないけどぉ、本気で殺しにかかられるのは、ちょっとねー」


 聞き覚えのある、おっとりした声が聞こえる。間違えて殺してしまってはまずい相手でもある。ヴィーを見ると、尻尾を逆立て、今にも唸り声を上げそうな状態だが、アイコンタクトで意思を確認する。



「誰だと聞いている!答えろ!!」



「もー、ミロちゃんの大叔母にして、第9騎士団長。そして別荘でのヴィーちゃんのおねしょをもみ消してあげた私よー。

 撃たないでほしいなー。撃たれたら、もーっとあれなことゲロっちゃうぞー。

 小さな頃、転んでスカートをチューリップにしたときの下着の色とかー。

 何ならヴィーちゃんとミロちゃんの、もっとあんなこともー、ゲロっちゃうぞー」


 あーー、さっさと矢を撃ち込んだ方が世の中ちょっとだけ平和になる気がする。手持ちの弩じゃ、ドアは抜けないだろうけど。

 撃ちたい。

 ヴィーもそう思ったような顔をしている。

 撃つ?ダメ?ダメだよねー。


 帰ってほしいけど、こんな時間にこんな田舎にいる皇族のところへ来るんだから、何か目的があるんだよねー。

 やだなー。



「ボディチェックと本人確認をするので、隣の部屋に来てください。

 護衛、不審なことをしたら問答無用で斬れ!心臓を確実に刺した上で、首と胴体を切り離せ!!」


 これぐらいで死んだら、今頃墓の下だよな。見た目からは年齢不詳。

 元(・)皇族の獣人で、臣下に下ったはいいが、何故か獣人女性ながら極僅かに祝福が入っており、いつまでも若々しい。臣下と言っても、第9騎士団《暗部》を担った公爵家で、皇族との血縁も深い。嫁入りして奥に入ったと思ったら、いつの間にか騎士団入りをし、実績を上げ、ついには騎士団長にまでなった。

 領地を持たない法衣貴族だが、暗部を担うだけあって権力もあり、皇族の血筋も昔から入っている。

 表の争いなんてクソ食らえ、裏の方が楽しいと代々公言してきた家系で、裏切りの心配がなく、城の抜け道の一つがこの家に繋がってたりする。


 夏や冬には皇帝直轄領の別荘へ一緒に行くこともあり、小さい頃からお世話になった。孫たちは近衛にいたり、第9騎士団にいたりする。

 少し待っていると、隣室の護衛達から声がかかった。



「問題なし、ご本人であることを確認できました」


 やっぱり本人だったか。残念だ。


「入っていただけますか。侍従、お茶を入れてくれ。

 それと、多分階段か外に護衛がいるから、彼らを探して部屋に入れろ」



 了解の声と共に扉が開き、黒いローブを纏った妙齢に見える犬獣人が入ってくる。妙齢に見えるが、中身は……。

 懐かしくも思うが、式典で会ったばかりだ。



「はーい、式典以来ね、お二人さん。甘酸っぱい青春の匂いに釣られて来ちゃったー」



「お久しぶりでございます、閣下。この場で拝謁させていただくこと、恐悦至極です。青春した覚えも、お呼びした覚えもございません。

 お帰りは裏口でございます。お茶の一杯も出せず申し訳ありませんが、どうぞ出口は後ろでございます。

 外は暗いですが、どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」



 おー、ヴィーがすっごく嫌そうな空気を出している。そりゃあ、あんな空気でいきなり来られて、おねしょを暴露されれば当然か。


 だけど、こんなことで、すごすごと帰るわけもない。大叔母は勝手に椅子へ座った。椅子を引かせて座るのが貴族だというのに。


 まったく……。

 そう思っていると、隣の部屋からお茶と茶菓子が運ばれてくる。そうして、緊張感も少しほぐれたところで、大叔母が話し始めた。



「式典以来ですね、大叔母様。

 それとも、この場は騎士団長閣下とお呼びした方がよろしいでしょうか?こんな時間に男の部屋に来るなんて、はしたない真似は淑女として品位を落としますよ。

 それで、何の用でしょうか?」



「もー、この場は非公式で、今日私はこの場にいないし、あなた達は宿で誰にも会ってないから良いのー。

 かわいい子達の成長を近くで見守るだけよー。ついでに頑張ってる子達を、おーえんしにきたの。

 それで、頑張ったみたいで、早速皇帝への第一歩を踏み出したのね。ヴィーも足りない経験や、心の底のドロドロした感情を自覚し始めたようね。よきよきよ。

 二人とも頭をなでなでぐりぐりしてしんぜましょう!」


 どこかで全てを見てきたかのように言われ、久しぶりに乱暴に撫でられる。

 昔から、良いことをしても悪いことをしても、本人自ら怒るし、褒めて撫でたり、げんこつを食らわせたりすることがよくある方である。そのため、小さい頃から頭が上がらない。



「ちょ、力強いです。撫でるのはヴィーだけにしてください。

 見守るだけなんて言っておきながら、絶対、何か企んでいますよね」



「そーねー。少しは分かってるじゃないの。だけど、企みの内容までは分からないとみたー。

 そう、私は裏で暗躍して、君たちを馬車馬の如く働かせようとする、わるーい女です!」



「閣下、それは馬車馬ではなく皇族、それも皇太子殿下なのですから、種馬・繁殖馬もしくは生贄の仔羊の間違いではないでしょうか?」


 あれ、なんか酷いことを言われてるが、間違いではない。だが種馬扱いは……。

 皇帝として見れば、子が多すぎれば困るけど、少なすぎるともっと困るのだ。ま、嫁候補が多いのだからしょうがないか。

 許婚や婚約はまだしていないが、これからそういった話がどんどん舞い込んでくるだろう。



「馬車馬やら種馬やら、酷い言い草だね……。

 で、この馬車馬兼種馬は何をやらされ、働かされるんですか?」



「そーね。まずは個(・)人(・)としては、君たちを褒めに来た。それだけよ。

 よくやった。初めての実戦だ。怖かったろう。足りないものが分かったろう?精進あるのみだ。相談ならなんでも乗るわ」



 花が咲くような優しい笑顔を向けられる。顔は笑ってるけど、目が笑ってない。

 だが、ここで気付くことがある。


 笑顔の裏で今、個人としてはと言った。そして、公人として、騎士団長としては別なのだと。

 さっき非公式って言うたろ、あんた。



「うげっ。あ、ありがとうございます。褒めてもらったり、撫でられたりするのは歯痒いです。

 それで、公人、騎士団長閣下としてはなんでしょう」



「おー、流石気付くか。これで気付かなかったら、ミロはグリグリの刑に処して、フリフリの格好にして皇城一ヶ月生活、ヴィーは神殿送りで一ヶ月の巫女見習い生活を申し渡す所だったが、よろしいわ。

 騎士団長としては二つよ。と言っても、お前達がやっている公務とも繋がるから安心しなさい。

 まずは一つ目。領都で後片付けの仕事をすることから説明していこうかしら。これは捕らえた官吏の最後の仕事でもあり、殿下と一緒にやり遂げてもらうこと。手順や移送手段はこちらで用意したから安心してくれていいわ。

 二つ目は、領都へ捕らえた三人組を極秘で移送し、拷問をすること。これは殿下達も気づいていると思うけど、傭兵や兵士崩れの賊ではない、立派な兵士よ。

 ちなみに、どこから来て、奴隷をどこにやったかは把握してるけど、教えないわ。部下を貸してやるから、奴隷をどこにやったのかを把握する手伝いをするのが仕事よ。

 殿下が実行するのではなく、お手伝いなのは、やり方なんぞ分からないだろうし、やりすぎて、聞き出す前に壊されても困るからよ。

 別に兵士だと分かっていても捕囚ではないし、どこかの国の捕虜として扱う必要はない、山賊の一味。

 だって、彼女たち一度も『どこどこ所属の兵士だ』なんて言ってないし、聞かなかった。ね?気兼ねないでしょう?」


 やっぱり、今回の裏の仕事がやって来た。それも、見たくないから触れないようにしてきたことを、やらなければいけないようだ。官吏についても有耶無耶にして、恩赦でも、と甘っちょろいことを考えていたが、逃げ道はないらしい。

 捕虜も尋問と言わずに山賊達を拷問と来たから、もう確実に無縁墓地送りも決まったようなものだ。


 国の兵隊なら、国元に、『お前とこのもんがカチコミしてきたんや、責任取って首と金出せや!』と出られるが、それはしないし、出来ないっぽい。

 ヴィーも嫌そうな空気を纏っている。綺麗な世界を見せたがり、過保護なところがあるから、抵抗があるんだろう。



「それで、この町の代官の殺害犯達はどうするのです?

 ある程度はここの官憲の顔も立ててやらないと可哀想ですよ。犯行を防げなかった大失態を犯して、その上殺害犯を捕まえられませんでした。

 おまけに厄介な貴族を陰で見張っていました、なんて笑い話にもならず、役付きの者が免職で済めば超幸運、普通は罰則で首と胴体が泣き別れです」



「そこは領都の官憲から話を回します。あらすじは、街道を警邏中、怪しい人物たちを発見して臨検したところ抵抗され、人質を取られたため、一人を殺し、もう一人は負傷し、手当の甲斐なく死亡。

 首実検と人質への聴取の結果、町から逃げ出した奴らと判明。こちらもそちらからの人員増強に対して不手際があったため、罰則はなく、よくやったと金一封が贈られる。

 金一封は口止め料みたいなもんね。犯人の首が欲しいとか報告書が欲しいってなっても、その頃には塩漬けの首が送れるはずだから大丈夫よ」



「尋問、それも拷問の手伝いとはいえ、殿下にやらせるのですか?私としては反対です。やることさえ知っていれば、後は私がいくらでも手を汚します。今回の件でこれ以上殿下を精神的に圧迫していくのは、断固反対します」


 彼女の悪いところである、過保護な部分が出てきてる。今回、心配をかけたことで何か気づきがあったみたいだが、そこは変わらなかったか。まぁ、すぐに変わったら驚きだもんな。



「えぇ、やらせるわ。これは帝国君主としての、ある種の通過儀礼よ。

 表が今回みたいな斬った張ったの世界だとするならば、裏では些細な小さな情報だろうと、国のために笑顔で短剣を突き付け合い、裏切り、騙し討ちは日常茶飯事。

 上に立つ者だったら、汚いことも知っておくべきよ。

 お前が反対しているのは、何に対して?

 いじめ?それとも綺麗なままのミロシェフを保護して、棚に飾ることをしたいから?汚したくないという独占欲から?」



「そ、それは……。

 で、殿下の事を想っての事です」



「だったら黙っとけ。てめぇの想いや意見なんざ聞いてねぇんだ。

 神と帝国の為だ。処分するぞ」



「はぃ……」


 しゅんっとしている。やっぱりお仕事モードのこの人は怖い。



「はぁ。分かりました。行動は明日以降でしょうか。大叔母上はこの後どうするので?」



「そうね。明日、うちの人員が改造した馬車で来るから、護衛部隊の一部を分けて案内させて領都に入り、指定場所で待ち合わせ。

 私はこの後、このまま姿を消す予定よ。町の外の離れた所に馬と人員を隠しているわ。第五騎士団は殿下の護衛として活動予定よ。ま、詳しいことは合流する担当者から聞きなさい。

 領都での担当者も、新人は卒業したけどまだ半人前よ。彼女にも課題を出したから空回りするかもだけど、ミロも半人前、二人合わせればなんとかなるでしょう。

 ちょっと性格に難があるけど、仕事はちゃんとするから安心して」


 ってことは、まだ何かやらされるってことだが、考えてもしょうがない。

 この人はどこか神様に似て、愉快なことが好きで、貴族らしく典型的な人ではなく、数で考える残酷なところがある。

 そのため、彼女は感情も情も分かっているが、ヴィーが帝国に不要な害を与えると考えた場合、排除されかねない。


 いや、かねないどころか、確実に実行するだろう。

 俺の大切な親友であり、半身とも言える存在が削られてしまう。それだけは避けたい。



「それでー、この部屋で、どんな甘酸っぱい青春をしてたわけー?

 おねーさんが聞いてあげよーかー、むふふ」



「か、か関係ないでしょう!

 出歯亀でもしたんですか?!」



「関係ないだろ!」



「まぁまぁ、顔真っ赤にしちゃって。あー、頭を撫でられて優しくされて、思わず抱きしめちゃった感じかしら?うふふ」



 なんで分かった、このババア。洞察力か?

 それにしては、具体的すぎる。

 防諜は毎回しっかりしていて、今日も帰ってきた時にやってるはずなんだがなぁ。



「これでがおーっといっちゃだめよー。

 手を出すにしても、キスまでだったら良いけど、それ以上しようとすると神様からよく分からないゴリ押し魔法で消されるわよ。

 ナニに魔法でも掛かってるのかしらね。

 だけど、未婚の男性にキスしようなんて不埒な行為は、ユニコーンに貫かれて死んでしまえって話だし、かわいこにキスだけで踏み止まれるとは思えないしねー。

 私だって、初夜だけではなく、普通に優しくしようと思っても、つい勢い余って、旦那様を枯らしてミイラ一歩手前にまでしちゃったもの……」



「キスしたいなんて思ったことはないです。

 ただの主様です」



「ふーーん、そーなのー」



「えっ……」


 なんか、ショック。女と男の関係にはならないと、否定された気がしてしまう。だけど確認しようにも、尻尾や耳を見る勇気が出ない。

 確かに二人きりの部屋で執務もするし、肩が凝ったりした時にはマッサージをしてくれる。

 それぐらい気兼ねない……。


 あれ、同性の親友かな?

 俺自身、同性の親友なんていないけど。



「そーなのー。種族特有の発情期だってあるでしょーに。

 あれな事やこんな事、いちゃこらしたいって思いを持って当然でしょう?

 私があなたの立場だったら、全てを投げ打ってでも、一時的にでも得たいもの」



「私は特にそういうことを考えたことはないですね。

 異性にも同性にも、性的な興味を持ったことはないですね」



「ふーん……。お年頃なのかしらね。反動が恐いわよー」



 こっちを見ながらニヤニヤされる。

 女性が、肉食獣と呼ばれる者たちの集まるところに仔羊として放り込まれたら、それはもう「食ってくれ、優しくして?」もしくは「くっコロセ」としか言ってないようなものだ。

 なので黙って存在感を消すしかない。背中に悪寒が走るし、アヴィエラと肉体関係になったら、と考えたことがないわけではないが、さっきそれとなく否定されたしなー。

 どこぞの誰かに「嫁入りしたいから奴隷をやめます」と言われたら、泣くしかない。



「ミロはもうとっくに精通してるんでしょ?

 誰か気になる娘とか、粉をかけてくる娘とかいないの?」


 魔国とか他国だと、生まれる前からの許婚や、社交界デビューする前から結婚が決まる事が多いと聞くが、帝国貴族は別だ。

 十四歳ぐらいから、家同士だったり、派閥だったりで結婚を決めだす。平民?知らん。

 この「粉をかけてくる娘」というのは、だいたい侯爵家か伯爵家だ。



 それより下は基本来ないし、「側室か妾にしてください」とかって申し込みなので、本妻か側室がある程度決まってからの話になる。いくら神が恋愛推奨派だとしても、貴族社会は爵位と面子が大事だ。男爵家出身の本妻と、侯爵家出身の側室。

 何らかの原因で本妻の実家が潰れる可能性が高いし、実家を気にして本妻が側室にお願いするなんていう歪なことが起きてしまう。



「んー、家が決める事だから、あまり気にした事はないな。神様は恋愛を推奨しているが、やはり派閥とかあるしな。

 それに公務真っ最中で、夜会にも出れん」



「とか言っても好みとかあるわよね?

 私達大多数の女からすれば、体目的でヤレればいい、孕めば良し、最後は顔が良ければなお良しだわ。

 私は彼にベタ惚れで、体は後だったけど、男性からすれば、性格や身長とか色々好みがあるでしょう?」



「黙秘を行使いたし、就寝の準備をいたします」


 だって、キラキラした目のヴィーと、ニヤニヤとゲスい顔をした大叔母の二人に話したら最後、とことん喋らされて、骨だけでなくナニまでやられてしまう。



「そー。気になる娘や、ちゃんと好みがあるのね。

 ちゃんと性徴してるのねー。それだけ聞けただけでも収穫だわー。ま、夜会の肉食獣たちにもそれとなく伝えておくから、単体アタックが群れでのハントに変わるかもねー」



「げっ」



「えっ……」


 今ですらお茶会やらパーティへと誘われたり、「この後二人きりになりません?」と来る。それが肉食獣が徒党を組んで囲いに来られる。男系貴族だろうと女系貴族だろうと、荒事は女性の役目であって、男は家を守るもの。

 それを真っ向から破るのが皇族で、普通とは違い、男が荒事をしている。それを分かった上で迫ってきてくれるならいいが、派閥内の関係で、というのなら勘弁願いたい。



「ま、一緒に歩いていける娘が皇族に嫁入りする事になるから大丈夫よ。

 皇后教育を受け、神殿でも教育されるし、そもそも我ら臣下の目がいるからねっ」



 あー、ちゃんと先に調査されて、アウトなら弾かれるのか。嫁の思想誘導されそうだけど、この人なら安心だわ。帝国第一だけど、ちゃんと俺個人の幸せも考えてくれている。



「あーそうそう、ちゃんと今回、第五騎士団の護衛達は手を抜きながらも仕事はしたけど、ヴィーちゃんには罰を与えるのよ?

 剣たる者が、あんなのは瞬殺できたでしょ?盾たる者が、殿下に傷を付けさせたわ。

 なので、ちゃんと考えて罰を与えるのよ。分かっているわね」



「えぇ、そこは領都についてから罰を与える予定ですよ。

 まだ内容は決めていませんがね」



「どんな罰でも受け入れる所存であります」


 釘を刺された。内容も考えてなかったし、罰を与えるにしてもねぇ。

 奴隷に罰らしい罰を与えるとしても、鞭打ちとかになるが、そんな事をしても意味がないし、どうしよ。

 身体的な罰を与えても意味がないなら、心理的なもの……。



「さて、そろそろ良い時間だし、私も働かないといけないのよねー」



「その殿下の好みも非常に気になりますが、恐れながら聞いてもいいでしょうか?騎士団長閣下。

 今回の件と、閣下が皇都からこちらまで動かざるを得なかったことに、関わりがありますか?」



「ヴィーちゃんったら仕方ないわねー。特別に答えてあげましょう!

 んー、なんとも言えないわ。

 それを確かめるのが殿下とあなたの仕事よ。

 これが騎士団長としての答えよ」



「かしこまりました。閣下、ありがとうございます」



「では、大叔母上は、隣の侍従に送らせますので、今日はこれぐらいで。

 おやすみなさい。また」



「えぇ。宿の裏口まででいいわ。そこからは隠密だからね。

 じゃっ、またね」


 嵐のような人だ。


 いきなりあんなムードの中に割り込んできて、仕事を伝えてきたと思ったら、シッチャカメッチャカにかき回されて、好みとか嫁とか……疲れた。

 だけど、皇城に送る報告書を書かなければいけない。


 眠い。疲れたし、とりあえず寝て、明日に回そう。


ババァがおばば動いた言うとあれじゃが、なんで動いてんの?式の時笑って、大欠伸して興味なさそうだったやろ。

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