羊ちゃんの悪巧み
DAY3 ラクトーシャ視点
あーしは第五騎士団で副団長をさせてもらっている。
別名外交騎士団と言われているが、暗部専門というわけではない。別で専門もいるが、それでも大きな声で言えないような後ろ暗く汚い事を、数少なくやってきた。そのため我々を知る貴人の方の中には苦手意識や下に見る方がいるのは確かだ。
あーしは主に騎士や兵士を見るから専門ではないが、やれないことはない。
今回この仕事が回ってきた時は、第五騎士団ではなく第九騎士団に任せるべきだと進言をした。手を下すにしても裏で静かにやっちままった方がいいと思ったからだ。年頃でかわいく高貴な方が手を汚すはいかがなものかとも思ったのもある。
だが意見は団長と皇太子殿下が会談をなされ本決まりになった。陛下からの辞令書には交代しても良いとなっていたのに……。団長閣下曰くこの帝国に生まれた時から一部の隙なく作り上げし次代の皇帝。流石神様と帝国の集大成であるなら更に、我々が磨き育て上げるのもいいではないかとの事だ。
ついては、殿下を育てる第一歩として血と汗と涙を体験させるために護衛任務の差配はあーしに一任された。
たしかに皇都から馬車の中や宿屋、訓練を見てきたが、確かに皇族に相応しい教育を受けて来たと見えるし、カリスマが備わっている。だがどうしても、甘い所が見えるのだ。殺気や情欲、死んだ人間がこちらを見る眼、ドロドロした感情を向けられた事が無さそうだ。
城に詰める騎士や木っ端領主程度ならこの甘さもありだと思うのだが、上に立つなら甘さ以外も経験せねば。この甘さを優しさに昇華できるように我々が教育できると思うと、今回の仕事は非常に楽しそうだと胸が高鳴る。
なによりこのかわいい殿下と一緒に仕事できるなど最高!夜のベッドの上であーしが上になって鳴かせたいっ!
夕方から夜になるちょっと前。月明かりは未だ出ず、夕日もない為見つかりづらいように動くには丁度いい時間。
町からは犯行グループ二名を馬車に詰めたと連絡があった。後は到着を待つだけだ。
馬車には男性使用人が樽に縛られ入れられている。だがこの男性起きているしそれなりに使える。馬車にも細工がされており予定の場所で脱輪するようになっている。ほんとはあーしが入りたいが、最後の仕事にするには価値が低すぎると全員から却下された。泣ける……。
待ち伏せ場所から、猟場の休憩場所までも問題なく確認済み。イレギュラー対応班には殿下とアヴィエラだ。
「ミケさんとアヴィエラ大丈夫っすか?緊張してないっすか?トイレは行ったっすかー漏らすと大変っすよー?」
のんびりとした口調で新兵を扱うように気を使う。これから起こるは襲撃だ、ここで殺す予定は余りないが相手は殺意を持って立ち向かってくる。
あーしも最初はびびって怖かった思い出がある。
アヴィエラは無視っすか泣けるっす。
「あぁ、緊張してるよ。そして漏らして大変だったのはだれかの実体験かね?」
ミロ様は落ち着いているように見えてもちょっと震えている。逆にアヴィエラは落ち着いている。多分一回だけではなく、複数回、治安維持部隊と一緒に盗賊か山賊狩りをして斬った事があるな。新兵の雰囲気ではない。
だけど、この後イレギュラーの中で落ち着いてられるかな?あーし達を信頼するのはいいが、裏の思惑があると考えないのはどうか。
「な、なんのことっすかねーよ、よく分からないっすね」
ふわり、と空気が柔らかくなった。緊張でガッチガチになった新兵は腰が引けてしまい、剣を相手より早く振り斬れなければ殺されてしまって終わる。
それでは困る。
と、思案していると見張りから合図が来る。
どうやら犯行グループ以外の人員が森に隠れていたみたいで、合計四人になったらしい。全員捕らえられればよし、だがそんな余裕はないだろうイレギュラーが起こるのだから。そして怪我をしない程度に手を抜け、必ず二人は生け捕りと合図を出す。
「ささ、お仕置き準備タイムっすよー気張らずいくっすよー」
殿下が着実に君主として一歩を踏み出していけるようにしなくちゃね、と思いながら剣を抜くのであった。
オットセイのようにオウオウ言って出なきゃね!




