到着ー!だけど・・・?
出立した当初はわちゃわちゃとしていたが、馬上ではやはり帝都を出てからはしっかりプロの顔つきで周りを警戒している。力を入れるところは入れて、抜いているところは抜いており、流石に乗馬姿勢は綺麗だ。
馬車の中の人になって早二日、することと言ったら雑談か花札、ブラックジャック等やることやり尽くした。ケツが痛い。
そうして領都を立ち、目的の町まで後少しと言った所で護衛の隊員から声がかかる。
「後少しでつきますのでしばらくの我慢です坊ちゃま。この帝国貴族らしく不機嫌で高圧的な貴族様の演技をお願いしますよ。」
「分かった。馬車に乗り続けたこの尻が二つではなく四つや六つに割れないことを祈っていてくれよ。」
「かしこまりました。その時は全身全霊を持ってして坊ちゃまの事を癒させていただきます!」
馬車の中の人としてやることがなく雑談をし、休憩時間では鈍った体を一緒に訓練をし、彼女達とも身分はわきまえながらも冗談を言い合える仲になった。セクハラ言動もあったりするがそこはご愛嬌と言ったところだ。
「町が見えてきました。事前情報通り検問をやっています、ですが剣呑な空気で人数が多く剣に手がかかり弓や騎馬も用意してあり何か事前情報になかった誘拐以上の事が起きている可能性が高いです。ご注意を。」
御者をしてくれている護衛から注意がかかる。おかしいな。領都では誘拐の情報以外は入っておらず、検問も誘拐の捜査で殺気立つほどではないと報告を受けていた。
神様が連れてきた奴らも長期休暇の名目で連れ出された後、先日街に戻ってゆったりしてくれているはずだ。
「とりあえず、打ち合わせ通り高圧的な次男坊で不機嫌にいく。下手に出てもこれからが面倒になりかねん。それなら扱い辛い貴族様とその御一行様だ。」
「かしこまりましたそのように。」
検問では案の定止められる。流石にどこの貴族の家紋かを知らなくとも、貴族の馬車を止めるのだ。剣に手をやるなどしたら首が飛ぶだけでは済まないと分かっているようだ。
敬礼をしているが、警戒はやめないと……。
そうしていると、板金を多く使いながらもなるべく動きやすいようになっている鎧を着た隊長格と見受けられる中級魔族から強い言葉が飛んでくる。
「お止まりください!!この町の警邏隊隊長のものでございます。貴族様の馬車とお見受けしますが検閲させていただきます。」
「貴様!何事か!伯爵家の馬車だと知って止めるか!!事と次第によっては貴様の首だけでは済まさんぞ!!」
ラクトーシャが護衛隊隊長として応答をするが、馬上から高圧的に言いながら槍を地面に突き刺し腰の剣に手をかけいつでも抜刀出来るようにしつつ、他の護衛にもいつでも抜刀し斬りかかるように合図を出す。
「そ、それは大変申し訳ありません、ですが昨日代官一家が殺害されまして犯人達は未だ逃走中のため改めさせていただいております。」
「外から来た我らまで改める理由になっておらん!理由を申せ、くだらない理由ならば即刻貴様の首を跳ね飛ばすぞ!!」
「犯人二人組の援護の可能性がありえる為と犯人の一人は左足に矢を受けており、もう一人も手傷を追っており走ることが困難となっていると確認されています。そのため外から来られその後馬車に潜り込み逃げると言った事がありえるためであります。」
小窓から覗くと、汗びっしょりで顔が青いが、一歩も引かない。仕事に対しては忠実なのか、これで逃したら自分の首が物理的に離れ離れになるからか。まぁどっちでも良いけど押し問答してもめんどい。
助け舟を出してやるか。
「おい、さっきから騒々しいぞ馬車に揺られてやっと宿に泊まることで休息が取り、狩りを楽しみに馬車に乗っていれば検問でさらに待たされるだと?ふざけるな!
代官一家が殺害された上に取り逃し、その上我々が犯人の手助けをするかのような言い掛かりをするという事どういうことか分かって言ってるんであろうな!伯爵家の人間に対していい度胸ではないか!
だがその度胸に免じて特別にだが改めさせてやる。」
ラクトーシャから鋭く苦言が入る。
「坊ちゃま!なりません、このような田舎であろうと犯人を逃し我々を止めるような無能な官憲どもに馬車や荷物を改めさせるなどなりません!
こんな場所で何かあったらどうするのです!」
「ならば代官の所には役職についている男性が少なくともおるであろう、その者に見せれば良かろう。それならば未だ幾ばくかマシであろう。俺はさっさと休んで明日の狩りの予定を立てたいのだ!だがそれも犯人が逃げており危ぶまれる!!ならばかような問答をするぐらいならそこの無能共を働かせた方がまだましだ!
そこの無能な無粋者!分かったらさっさと呼びに行け!さもなくば火あぶりだ!!」
それから大急ぎで来た老執事に遅いだのその箱は見るなだのいびり倒しつつ、宿のワンフロア貸し切らせるように走らせていた。そしてやれのどが渇いただの肩を揉めだの男性使用人に言うわがまま坊ちゃんを見せつける。
こうすれば息抜きで男性使用人が外に息抜きをしに出ることも怪しまれないし、もし犯人が今回の誘拐と関わりがあったとしたら行き掛けの駄賃として連れて行こうとするかもしれない。それに町の外に出るための協力者が検問を偵察に来るなら今の光景も見られている可能性が高い。
そうして町の中に入ったがさっきのやり取りが伝わったのか住人達はどこか怖がった空気と貴族だと遠巻きにしている。普通貴族と関わらない。
宿に入り防諜と警備を確認し、ヴィーとラクトーシャを呼びこれからを相談していく。
「検問があるのは事前情報で聞いていたが代官が殺されるとはな……。汚染されていて、犯人達がここを立つからその掃除で殺したか。代官だけ殺されたならまだ何かの事件に巻き込まれたとか怨恨説があるが一家皆殺しじゃあな。」
「そうですね、やはりその線が一番ではないでしょうか。家族がどこまで知っていたか分からないので残して置くと足が付くと考え皆殺しにした、と言ったところではないでしょうか。」
「雑魚は雑魚らしくざぱーっと殺っちまったーって所でしょーね。いやですねー短絡的過ぎやしないっすか?あーしらの事どっかでばれた?」
バレた可能性を考えるがそれは少ない。騎士団や俺等は漏らす意味もバレるような行為もしていないし時間が合わない。捕らえた官吏も監視をつけて家から出していない、怪しいことをしたら即座に家族共々バッサリとやると教育した。
ならばなにか別の脅威があり急遽立つことになった、それも短絡的で町の官憲とやり合い傷を負うほど。
皆考えるが答えがでない。捜査のプロではないし、やったこともなければ現場も見れない。しかたがない。
「仕方あるまい、考えても詮無きこと。重要なのはどう捕まえ、尋問をどうするかだ。」
「やっぱりー使用人餌にしてーの当初の予定どーりって所ではないですか?だけど問題はー引き渡し場所が町の外なんすよねー。あーしらも町から撒き餌しに行くには検問があってそこでチェックされごよるっすよ。」
「ですが、町中で我々が犯人を捕まえるのは人員も地理感もないので官憲達に怪しい動きとして補足されかねないです。首がかかっていますから必死です。」
「では捕らえてる官吏から密談をしたいと言った合図を出させて、乗ってきたら同時進行で馬車を借り上げ人二人を詰めるだけのスペースを作り、街の外に逃がし、その後あーし達が襲撃し確保、犯人たちは傷を追っても自害することなく逃げたっすよ。死ぬ気で向かってくる気概はないでしょー。
それで、まず第一段階は完了っす。」
やはり副官をやるだけあって、間延びした口調であったり気怠げな様子でも頭はよく回る。
「そんでー第二段階の尋問ですが猟場にはたいがい休憩小屋や狩猟小屋があるっすよ。管理人にはうちの隊の人間と使用人がなが~く親密に休憩するって話をして期間を貰い受けましょ。
その間に尋問を完了出来なければ失敗っすよー。あーしが率いるからには失敗はありえないっすけどねー。」
「その場合、捕まえたクズはどうしましょう?地元官憲に渡します?」
「いや、尋問したことが官憲に見られる事やこちらの素性を知られたくないし、捕囚を多くあやす余裕はないから応援を呼ぶか。
だが忘れるなよ、情報を辿っていく。」
どちらにしろ自分で命を下したからには、クズ共を切るのは俺の役目だろう。斬れるかどうかは分からないが。
俺の騎士としての剣がこんな事で汚れるのはもったいない。
「わかったっすよー、捕らえた後は情報収集しつつどうするか決めるっすよ。
じゃぁこの後は休憩ですしあーしとしっぽりするっすかー?するっすよね?」
あれ、蒸し暑いのにここだけ極寒な気がする。おかしいなー。
「ヴィー鉄拳制裁禁止だ。元気だから一緒に訓練をして差し上げろ。骨の一本ぐらいなら根性で大丈夫だろう。」
「えーっとえーっとあーしやっぱり今から町に偵察しに行く用事があるっすからちょーっと訓練は勘弁願いたいっすー
アヴィエラと勝てるかどうかってやばいっすよー。そんな娘と実戦訓練なんてごめんっすー。
じゃ夕食の時にまたっすよー。」
そそくさと逃げるのは早いことで。だけど、馬車での旅中で仲良くなりつつあることは良いことだ。奴隷だからと下にも見ず、ちゃんと人として見てくれている。
そうして夕食は部屋で取り、班員に今後の流れを伝えて行く。
残念なのはいつもヴィーと夜お茶を飲みながら雑談が日課だが出来ていない。しっぽもふもふしていたいなー。
帝都からここまで、宿は男性と一緒の部屋だ。なにかあっては事だし部屋に男と女なんて、邪推してくださいと公言しているようなものだ。
目的地に着いた頃かの?どう転ぶかのー・・・。ミロもアヴィエラも甘ちゃんな所があるからのー・・・。




