甘い夜の接吻と、交わされる心
「……はあ。宴の熱気が、まだ身体に残っているみたいだ」
月光がやわらかく差し込む女王の寝所。
重厚なシルクのカーテンが揺れる室内は、白檀と甘いハーブが混ざり合ったような、妖艶で心地よい香りに包まれていた。あまりにも広大で豪華な天蓋付きベッドの端に腰を下ろしたヒロは、自分の心臓が早鐘のように鳴り響いているのをはっきりと感じていた。
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、ヒロ」
パタンと静かに扉が閉じられ、ルミナス女王がゆっくりと歩み寄ってくる。
宴の席で身に着けていた重厚な王冠や豪華なドレスは脱ぎ捨てられ、いまの彼女は透け感のある薄桃色のナイトドレス一着のみ。月光を浴びて透き通るような白肌と、しなやかなボディラインが惜しげもなく露わになっていた。
「ルミナス……その格好は……」
「これが、私の本当の姿です。王としての重圧も、威厳もすべて脱ぎ捨てた……ただの『ヒロを愛する一人の女の子』としての私」
ルミナスはベッドに膝を乗せ、ゆっくりとヒロの膝の上へと這い上がってきた。
彼女の体から漂う甘い香りと、やわらかい体温がダイレクトに伝わってくる。細く美しい指先が、ヒロの頬をそっと撫で上げた。
「大魔獣との戦い……本当に見事でした。あなたという『奇跡』がこの世界に来てくれただけでも十分なのに、私たちを、この国を守るために命を懸けてくれた……。もう、私の心はあなたでいっぱいなのです」
ルミナスの青い瞳が、うっとりと情熱的な熱を帯びて濡れている。
「ヒロ……これが、私からの本当の『褒美』です」
彼女は吐息が触れ合うほどの距離まで顔を近づけると、そっと目を閉じ、ヒロの唇へと己の唇を重ね合わせた。
「ん……っ……」
柔らかく、甘い感触。
初めて交わされる唇の温もりに、ヒロの頭の中が真っ白に染まっていく。ルミナスはヒロの首に愛おしそうに腕を回し、離したくないと言わんばかりに深く、深く重なり合ってきた。
「ふはっ……ん……ヒロ……大好きです……っ」
唇が離れると、ルミナスは赤くなった顔をヒロの胸元に埋め、小さく息を荒らげた。一国を統べる女王とは思えないほど可憐で、甘えたような仕草。
その時だった。
バンッ――!!
「――そこまでです、陛下ぁぁぁっ!!」
寝所の重厚な扉が盛大に押し開かれた。
「なっ……!?」
「きゃあっ!?」
驚いて跳ね起きるヒロとルミナス。
扉の向こうに立っていたのは、顔を爆発しそうなほど真っ赤にしたエリス、ヴァルキリア、そしてルチアの三人だった。
「ひ、陛下っ! いくらなんでも、いきなり口づけまで交わすなんてズルすぎますっ! 卑怯です!」
エリスは涙目になりながら、手に持った(なぜか持ってきてしまった)クッションを抱きしめて抗議した。
「そ、そうだぞ! 臣下として黙っていられるか! 誓いの接吻は、臣下である我らとて……まだ……っ!」
ヴァルキリアもドレスの裾を強く握りしめ、サファイア色の瞳を潤ませて身を震わせている。
「まったく……鍵を二重にかけておくべきだったかしら?」
ルミナスは少しだけ困ったように頬を掻いたが、すぐにクスクスと愛おしそうに笑った。
「ですが、皆さん。怒る必要はありませんよ。私は最初から言っているでしょう? 『ヒロの愛を受け入れるのは全員だ』と」
ルミナスはヒロの手を優しく引き、集まった美少女たちに向かって微笑んだ。
「ヒロ、見てみなさい。ここにいる全員が、あなたという存在を、あなたの心を死ぬほど愛しているのです。もう誰か一人だけを選ぶ必要なんてありません。あなたが望むなら……全員をあなたの『特別な存在』にしてしまえばいいのですよ」
「え……全員を……!?」
ヒロが目を見開くと、三人の美少女たちも同時に顔を赤くして固まった。
「ヒ、ヒロさん……私、ヒロさんの一番になりたかったけど……みんなと一緒にヒロさんを幸せにできるなら……私、すごく嬉しいです……っ!」
エリスがそっと歩み寄り、ヒロの右手を両手で包み込んだ。
「うむ……不器用な私だが、二人目だろうと三人目だろうと、あなたへの愛と忠誠は決して揺らがん。生涯、あなたのお側で守らせてほしい……!」
ヴァルキリアも反対側からヒロの左腕を強く抱きしめてくる。
「フフ、科学的に見ても、ヒロのフェロモンを一人で独占するのは危険すぎるものね。全員で山分けして、一生トロトロに甘やかしてあげるわ」
ルチアも悪戯っぽく笑いながら、ベッドに滑り込んでヒロの背中に抱きついた。
「さあ、ヒロ……。私たちの甘い愛を、今夜はたっぷりと受け取ってくださいね?」
ルミナスが妖艶に微笑み、ヒロの首筋に優しく顔を寄せる。
四人の美少女たちに包まれ、甘い体温と香りに満たされる夜。
世界でたった一人の『男』であるヒロの異世界ハーレム生活は、約束された幸せな未来に向かって、どこまでも甘く深く続いていくのだった。




