花々の庭園と、女王の甘い誘惑
「……どうぞ、ヒロ。私自ら淹れた紅茶ですよ」
色とりどりの花々が咲き誇るガゼボの中で、女王ルミナスは繊細な手つきで磁器のカップを僕の前に差し出した。
ほんのりと桃のような甘い香りが立ち上る。一口口に含むと、爽やかな渋みと芳醇な風味が口いっぱいに広がった。
「すごく美味しいです、ルミナス様」
「ふふ、お口に合って良かったです……っ。それと、二人きりの時は『ルミナス』と呼び捨てで構いませんよ? その方が……胸がキュッとして嬉しいですから」
そう言って頬を染めるルミナス。
一国の頂点に立つ凛とした姿からは想像もつかないほど、彼女の瞳は恋に揺れる可憐な乙女そのものだった。
「ヒロ。昨日も言いましたが、私は真剣です。あなたがこの世界に現れてくれたことは、私にとって……いいえ、絶滅した『男』という奇跡に出会えた私にとって、最高の運命なのです」
ルミナスはテーブル越しにそっと手を伸ばし、僕の手を両手で優しく包み込んだ。
「エリスやヴァルキリアたちもあなたを想っているのは知っています。ですが……私の傍にいれば、この国のすべての富も、名誉も、そして私のすべてをあなたに捧げます。……私だけの王子様になってはくれませんか?」
吐息が届きそうなほど顔を近づけてくるルミナス。
宝石のように輝く青い瞳に見つめられ、僕の鼓動も自然と速くなっていく。
「ルミナス……」
「ヒロ……っ」
彼女がゆっくりと目を閉じ、互いの距離がゼロになろうとした――その時だった。
「――そこまでです、陛下!!」
ガゼボの影から、エリスとヴァルキリア、そしてルチアの三人が勢いよく飛び出してきた。
「ちょっと二人とも!? 庭園の物陰から見守る約束だったでしょう!?」
ルチアが慌てて二人の後を追ってくる。
「約束など知るか! 陛下が職権乱用でヒロ殿に唇を重ねようとされていたのだぞ! 黙っていられるか!」
ヴァルキリアが顔を真っ赤にして叫ぶと、エリスも僕とルミナスの間に割り込み、必死の様子で僕の手を引き寄せた。
「陛下! いくら女王陛下でも、卑怯です! ヒロさんの気持ちを無視して迫るなんて……っ!」
「あらあら……せっかくの甘い時間が邪魔されてしまいましたね」
ルミナスは少しだけ困ったように微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、集まった乙女たちを見渡した。
「ですが、皆さん。焦る必要はありませんよ。ヒロが誰を選ぶのか、あるいは……全員の愛を受け入れるのか。それは彼自身が決めることですから」
「全、全員……!?」
エリスたちが同時に顔を赤くして固まる。
「さあ、ヒロ。この国でのあなたの新しい生活は、まだ始まったばかりです。私を含め、彼女たちのたくさんの『愛』を、じっくりと確かめていってくださいね?」
ルミナスは可憐にウインクしてみせた。
風に舞う花びらの中で、美少女たちからの情熱的な視線を一身に受けながら、僕の甘く波乱に満ちた異世界ハーレム生活は、これからも続いていくのだった。




