第4話 自分の欠点を教えたら、なぜかプロポーズされたんだが!?
お茶会会場は、異様な空気に包まれていた。
「ミーナ殿! どうか僕の妻になってくれ!」
「いや、俺……じゃなくて、私まだ14歳ですって!」
第一王子のレオナルドまでが参戦し、騎士や魔導士と一緒になって俺(見た目は美少女)を囲んで熱い視線を送ってくる。
なんでこうなった……!!
姉(元妻)はというと、メラメラと闘志を燃やしながら俺の前に立ちはだかっていた。
「ミーナ、こんな人たちの甘い言葉に屈しちゃダメ! 男の『君を守りたい』なんて言葉は、いざ結婚したら『飯はまだか』と『俺のシャツはどこだ』に変わる呪いの言葉なんだからね!」
やけに説得力があるな。
どうする……。このままじゃ、高貴なイケメンたちから逃げられないどころか、本当に結婚させられてしまう。
なんとかしてみんなの熱を冷まさなければ――。
俺は意を決して、自分の欠点を暴露して幻滅させてやることにした。
「れ、レオナルド殿下、アルフレッド様、ルシアン様……! 皆様、私を買いかぶっていらっしゃいます! もし結婚すれば、きっと私に幻滅しますわ」
「ほう……?」
「実は私、脱いだ靴下は裏返しのまま床にポイッと放置するし、トイレットペーパーの芯も取り替えないズボラな女なんですの。お風呂も二日に一度しか入りませんわ。洗面台の周りは髪の毛や水滴だらけのままです。夕飯の献立を『なんでもいいよ』と言ったくせに、作った瞬間に『え、またこれ?』と文句を言う女なんです」
ポカンとするイケメンたち。
ふはははっ。どうだ! 綺麗好きな貴族のイケメンは一発で引いて逃げていくはずだ!
前世で毎日ガチで怒られていた自分の悪行を、ここぞとばかりにまくし立てた。
これだけ生々しい汚点をぶつければ、キラキラした貴族の男たちなら「うわ、幻滅した……」と引くはずだ。
――しかし、イケメンたちは予想の斜め上の反応を見せた。
「……なんということだ! 貴族の令嬢でありながら、飾り気のないありのままの自分を晒してくれるなんて……! なんて素直で愛おしいんだ!」
「君のそのズボラさも、僕がすべてフォローしよう! むしろ僕にその靴下を片付けさせてくれ!」
「……ひっ……!」
アルフレッドとルシアンがなぜか興奮している。
気色悪くて鳥肌が止まらない!
なんでだよ! 引けよそこは!
レオナルドは何か神聖なものを見るような目でじっと俺を見つめている。
「そこまで現実の結婚生活の過酷さを見据え、自分の至らなさを完璧に理解している女性が、この世に存在したとは……!」
「は……?」
「ただ夢見がちなことを言うお嬢様とは違う! あなたは真の意味で『家庭を支える覚悟』を持っているのだ……!!」
「いや、だから俺はそういう意味で言ったんじゃ――」
「ミーナ殿! 僕の不甲斐なさを、どうか君のその厳しい目で見張ってくれ! 脱いだ靴下も、トイレットペーパーも、すべて君の言い付け通りに直す! だから僕の妻になってくれ!!」
レオナルドがガッと両手を握りしめ、床に片膝をついた。
それに続くように、アルフレッドもルシアンも「俺もだ!」「あなたの生活を支える!」と全員が跪いてしまう。
なんでだ!? なんで俺の赤裸々な発言が、最高のプロポーズの動機になってんだよ!!
元妻にすがるような視線を送るも、なぜか眉をひそめ、微動だにせずじっとこっちを見ているだけだった。
助けてくれよ!
イケメンたちの熱烈な求婚ラッシュに、俺の精神は限界を突破した。
もういやだ。
こんなカオスな世界耐えられねえ!
俺は男だーーーっ!
あまりの恐怖に耐えかねて、俺はドレスの裾を思いっきりまくり上げると、その場から猛ダッシュで逃げ出したのだった。




