第3話 元旦那(かもしれないやつ)から妹を守るのよ!
「ミーナ! 大丈夫だった!? あの騎士に何か変なことされなかった!?」
席に戻った私は、慌ててミーナの肩を掴んだ。
先ほど、イケメン騎士アルフレッドがミーナの手を握って熱い視線を送っていたのを、遠目に見かけたのだ。
許せない!
前世で私を放置した挙句、今度は私の可憐な妹に手を出すつもり!?
どこまで最低な男なのよアイツは! 絶対アイツが元旦那だわ!
憤慨する私に対し、ミーナは冷や汗をダラダラと流しながら、引きつった笑みを浮かべていた。
「あ、いや……大丈夫だから、お姉様。ただの挨拶というか、なんというか……」
「ダメよ! アイツの甘い言葉に騙されちゃ! いいミーナ。男の『君は素晴らしい』なんて言葉は、ただの挨拶か下心なんだからね!」
「(……お前、俺が前世で言った褒め言葉も全部下心だと思ってたのかよ……)」
ミーナが何かボソボソと呟いているが、怒りで耳に入らない。
私はメラメラと正義感を燃やした。今度こそ、あの男の思い通りにはさせないわ!
だけど、事態は私の想像を遥かに超えるスピードで狂い始めていた。
「ミーナ殿!」
次に近づいてきたのは、知性派の腹黒魔導士、ルシアン様だった。
彼は私には一瞥もくれず、真っ直ぐミーナの前で膝をついたのだ。
「先ほどアルフレッドとのやり取りを拝見していました。君のような聡明で、周囲を穏やかにする空気を持つ女性こそ、僕のパートナーにふさわしい。どうか僕とデートをしてくれませんか?」
「は……? いや、俺……じゃなくて、私まだ14歳ですし……」
「年齢など関係ない! 知識と配慮を兼ね備えた君の魅力に、僕は心底惹かれたんだ!」
「……なっ……!?」
私は絶句した。
魔導士様まで!? 待って、じゃあ元旦那は騎士様じゃなくて、この魔導士様!?
いや、それとも……この会場のイケメン全員が、妹の魅力に狂わされているの!?
「お、お姉様……助けて……っ」
ルシアン様に手を取られ、青ざめた顔で助けを求めてくるミーナ。
……そうか、分かったわ!
元旦那は私に嫌がらせをするために、あえて私の妹を口説いて見せつけようとしているんだわ。なんて陰湿で性格の悪い作戦なの!
私は妹の前に立ちふさがった。
「ルシアン様! 妹はまだ幼く、学業に専念する身です! 申し訳ございませんが、お引き取りください!」
「……おや? 妹君の意思を遮るのですか? 彼女自身の口から返事を聞きたいのですが」
煽るような笑みを浮かべる魔導士様。
私はミーナの袖をぐっと引っ張り囁いた。
「ミーナ、大丈夫よ。あんな奴の誘い、ハッキリ断りなさい! 『お前みたいな生活感ゼロの男はお断りだ!』って言ってやるのよ!」
「……こ、断りたいのは山々ですけれど。相手は高貴な魔導士……。変に刺激して呪われたら……」
プルプルと震え出すミーナ。
私にはそれが、「恐ろしい元旦那のプレッシャーに怯える可憐な妹」の姿にしか見えなかった。
絶対に許さない……!
私の妹を恐怖で震えさせるなんて。今度こそ、私が元旦那を見つけて叩きのめしてやるわ!
勘違いの刃を研ぎ澄ます私と、イケメンたちの熱烈アプローチに挟まれ、本格的に胃を痛め始める妹。
お茶会会場は、誰も想像しなかった明後日の方向へとヒートアップしていくのだった。




