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7/10

夕暮れの非常階段で拾った“未来の日記”

部室を出ると空は茜色に染まっていた。

さっきまで走っていたグラウンドを横目に帰宅の途につく。


「あれ?今日”数字の課題”でてなかったっけ?」


私は慌ててカバンの中を確認する。


「ヤバっ!課題、教室に置いてきちゃった」


私は友人を先に返して、教室に向かう。


けど部室から教室まではちょっと遠い。

部活終わりに教室まで戻るのは正直ダルかった。


課題忘れちゃおうかな?


一瞬そんな気持ちもよぎったが、私は頭を振り教室に向かう。


「あ、そうだ……」


私は校舎の横にある非常階段に目をやる。


「ここから入っちゃえば、かなりの近道だ……」


先生に見つかったら、きっと怒られる。


この非常階段は普段使いは禁止されていた。

けど逆に誰もこないので生徒たちのかっこうの隠れ家になっていた。


私は周りを見まわし非常階段を登る。


2階の踊り場まで来た時何が落ちている事に気がつく。


「手帳?」


私は誰かの落とした可愛いらしい手帳を手に取る。


「誰のだろう?」


手帳を開く。


〇月○日


今日❤️くんと屋上でお昼を食べた。


〇月○日

今朝❤️くんと一緒に登校した。

帰りも一緒に帰る約束してる!

最高に幸せ!


等々……。


私は内容を見て顔が真っ赤になっていた。

これは、あれだ……彼氏が出来て最高に浮かれてる女の子の恋愛日記だ。

勝手に読んでしまった事に申し訳ない気持ちになる。


そして私には余り理解出来ない感覚だ。

私は中学からずっと陸上をやっていて、ずっと部活中心の生活を送っている。

恋愛とかに興味が無いわけじゃない。

ただ、どうして良いのかイマイチ分からない。

気になる男の子がいても部活があるからなぁ、と部活を優先してしまうのが今の私だ。

なので未だに恋愛未経験者だったりする。


そんな私がこんなラブラブな日記を見て赤面しないはずない。


「……ちょっとだけ」


私は申し訳ないと思いつつ、再び日記を開く。

興味がないわけじゃないのだ。


〇月○日

今日は待ちに待った土曜日!❤️くんと一緒に〇〇○と言う映画を観に行った。

❤️くんと観る映画は最高に楽しかった!


「うん?」


私は違和感を感じた。


「日付、おかしくない?」


〇月○日は木曜日だったはず……。

それに、こんな映画上映してない……。


私は家族の影響もあって結構な映画好きだ。

だから最近上映している映画はチェック済みだ。


私は慌てて他のページを見る。


全部日付と曜日がズレていた。


私はスマホを取り出し日付と曜日を確認する。


「……来年の日付?何で……?」


私の手が微かに震える。


この日記はいったい何?


私の頭の中は軽いパニックになっていた。


「も、持ち主は誰?」


日記の表紙を見る。


「……私?!」


そこには私の名前が書いてあった。


頭が更にパニックになる。


私は日記なんて書いてない!

そもそも彼氏なんていない!

そんな私がこんな恥ずかしい日記書くわけない!


しかし現実は私を逃さなかった。

筆跡は確かに私の物に見える。

多少浮かれた筆跡になっているけど……。

そして何より私しか知らない事までしっかり書かれていた。


「何でテストの隠し場所書いてあるのよー!」


私は親にバレないように悪いテストは部屋に隠してある。

未来の日記によるとバレたようだけど……。


けど問題はそこじゃない!

仮にこの日記が私が書いた未来の日記だとしよう。


じゃあ、この彼氏は誰!?


私がこんなガチ恋するの!?


私は彼の正体を探るべく日記を再び捲る。


「……。

名前くらい書いとけよー!私!」


彼氏の名前は書いてなかった。

全て”❤️くん”になっていた。

きっと未来の私は誰かに見られてもいいように名前を伏せてあるのだろう……なんて私ぽい……。


じゃあ、どこで、どうやって出会うのだろう?


日記の最初ページを捲る。


「書いてないし!」


私は地団駄を踏む。


わぁぁぁ!気になる!


❤️くんっていったい誰!?


ただ一つだけ分かった事がある。


いつも2人きりで会う場所があると言う事。


”いつもの場所”


日記にはそう書かれていた。


「いったい何処だろう……」


そんな事を考えていると誰かが階段を降りて来る音が聞こえてきた。


「ヤバっ!」


私は慌てて逃げようとする。


「あれ?珍しく誰かいる……」


ひとりの男の子が現れた。


彼の姿を見た私の心臓が跳ねる。


そして私は直感した。


彼……❤️くんだ……。


これから”彼”と私はどうやって結ばれるのだろう……。


私はドキドキしていた。


この時から私の恋は始まったのかもしれない。


そして私は課題を忘れた。

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