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抹茶コーラ

人影も見当たらない午前2時。

街灯もまばらなこの通りで、ひときわ存在感を放つものがある。


──それが、この自動販売機だ。


最近の俺は、毎晩この時間帯にここに立つようになった。


理由は一つ。


「抹茶コーラ」


……誰が買うんだ、こんな物。


最初は興味本位だった。

お金を入れようとした、そのとき。

背後に“気配”を感じてビクッとなる。


振り向くと、パーカーのフードを目深にかぶった小柄な少女が立っていた。


少女は、ただじっと、無言で立っている。


「自販機待ち……なのか?」


気まずくなって、俺は急いで抹茶コーラを買った。


ガコン。


「あ……」


少女から、小さな声が漏れた。


見ると、抹茶コーラのランプには“売切”の文字。


少女は名残惜しそうにうつむくと、トボトボと去っていった。


プシュッ。

ゴクリ。


「……うまっ!」


気づけば俺は、抹茶コーラの虜になっていた。



翌日も、深夜2時に自販機の前へ向かった。


「なんでそんな時間に来るのかって?

──昼間は、この自販機動かないんだ。不思議だろ?」


そんなわけで、その夜も抹茶コーラを求めて自販機へ。


ガコン。


「ん?」


先客がいた。

あのパーカーの少女だった。


少女は飲み物を美味しそうに飲み、俺に気づくとニヤリと笑って去っていく。


「?」


見ると、また抹茶コーラのランプは“売切”。


「くそっ、やられた!」



その翌日。


「ふぅ、間に合った……」


俺は走って自販機に到着した。

あの子には悪いが、今日は先に着いた。悪く思わないでくれ!


ガコン。


無事に抹茶コーラをゲット。


すると──

背後に、絶望した顔の少女が立っていた。


けれどその後、少女は驚く。


「……え。売切、じゃない……」


抹茶コーラのランプには、まだ光がついていなかった。


少女は小さな声で、


「やった……」


と喜び、抹茶コーラを買った。


ピッ。ガコン。


ランプが“売切”に変わった。


こうして俺たちは、毎晩深夜2時に自販機へ通い、顔を合わせるようになった。


──限定2本の抹茶コーラ。

まるで、俺たちのためにだけ置かれているようだった。



ある夜。

俺はいつものように自販機の前に立つ。


「……なんで?」


抹茶コーラが、すでに売切になっていた。


「あの子が……2本?」


周りを見渡すが、少女の姿はない。


「くそ……!

2人で1本ずつっていう“暗黙のルール”があっただろ……!

いや、言ってないけどさ……!」


悪態をつきつつ、もう一度自販機を見る。


「あれ……?」


取り出し口に、何かが入っていた。


手を伸ばす。


「手紙……?」


封を開けると、近くの公園の地図、そして一文。


『抹茶コーラはここで販売しています。

料金は、あなたの名前です。』


──その瞬間何かが始まる予感がした。


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