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3/10

雨の日に限って、あのベンチが空いてる理由

学校には、生徒たちが休憩したり、談笑したりするためのベンチがいくつか設置されている。


晴れた日には、生徒たちはベンチでお昼を食べたり、くつろいだりしていた。


けれど雨の日には、ベンチはあまり使われない。

もちろん理由は、雨に濡れてしまうからだ。


ただ、「あまり」と言ったのには理由がある。

雨に当たらないベンチも、確かにあるからだ。



「きゃー、やっぱり降ってきた!

あっちのベンチに移動しよう!」


女子生徒の焦った声が聞こえてくる。


暑さと湿気が猛威を振るい始める季節。

雨は、降ったりやんだりを繰り返していた。



「降ってきちゃったかぁ……」


私は教室の冷房から逃げるように、校庭に出てきた。


空を見上げると、分厚い雲に太陽が隠れている。


「今日は涼しいから、外で食べられると思ったのになぁ……」


弁当箱を抱え、どうしようか迷っていると、誰も座っていないベンチが目に入った。


「あのベンチか……」


雨よけが付いているのに、なぜかいつも空いているベンチ。



「神様が座るベンチ、だっけ?」


いつの頃からか、そのベンチは

「雨の日は神様が座るから、座ってはいけない」

そう言われるようになっていた。


「まあ、いいか……」


教室に戻ることと、神さまの席に座ることを天秤にかけ、

私は神さまの席を選んだ。


「……怒られたりしないよね」


ふと、そんな思いが脳裏をよぎる。


「お邪魔します……」


一応断りを入れてから、ベンチに腰を下ろした。



「いただきます」


ザー、という雨音をBGMに、私はお弁当を食べ始める。


「何で神さまのベンチなんだろう?」


食べながら、そんなことを考えていた。


ベンチも雨よけも至って普通だ。

少し古くて、サビが浮いているくらい。


荘厳さも、特別感もない。


それでも生徒たちが律儀にその言い伝えを守っているのは、不思議だった。


全員がそうというわけではないけれど……

私みたいな生徒もいるし。


「まあ、おかげで私は助かったけどね」



昼食を終え、教室に戻ろうとした頃、雨が止み、太陽が顔を覗かせた。


「午後は蒸し暑くなりそうだな……」


そんなことを考えながら、ベンチを見下ろす。


「神さまに、相席のお礼をしなくちゃね……」


私は、いつもお弁当と一緒に母が入れてくれる飴を一つ、ベンチに置いた。


「ありがとうございました」


そう言って、教室へ戻った。



三階の廊下を歩きながら、窓の外を見る。


「あ……」


その時、私は“神さまのベンチ”の理由が分かった。


雨よけと校舎の影の下、

誰かがそこに座っているように見えた。


そして、その影から虹が伸びていた。



「だからかぁ……」


きっとこの光景は、いつでも見られるものじゃない。

タイミングが重ならないと、見えないのだ。


私は少し嬉しくなり、思わず神さまに願った。


「素敵な出会いがありますように……」


その時、影が微笑んだように見えた。



きっと、願いは叶う。


だって――

ベンチから、飴がなくなっていたのだから。

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