雨の日に限って、あのベンチが空いてる理由
学校には、生徒たちが休憩したり、談笑したりするためのベンチがいくつか設置されている。
晴れた日には、生徒たちはベンチでお昼を食べたり、くつろいだりしていた。
けれど雨の日には、ベンチはあまり使われない。
もちろん理由は、雨に濡れてしまうからだ。
ただ、「あまり」と言ったのには理由がある。
雨に当たらないベンチも、確かにあるからだ。
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「きゃー、やっぱり降ってきた!
あっちのベンチに移動しよう!」
女子生徒の焦った声が聞こえてくる。
暑さと湿気が猛威を振るい始める季節。
雨は、降ったりやんだりを繰り返していた。
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「降ってきちゃったかぁ……」
私は教室の冷房から逃げるように、校庭に出てきた。
空を見上げると、分厚い雲に太陽が隠れている。
「今日は涼しいから、外で食べられると思ったのになぁ……」
弁当箱を抱え、どうしようか迷っていると、誰も座っていないベンチが目に入った。
「あのベンチか……」
雨よけが付いているのに、なぜかいつも空いているベンチ。
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「神様が座るベンチ、だっけ?」
いつの頃からか、そのベンチは
「雨の日は神様が座るから、座ってはいけない」
そう言われるようになっていた。
「まあ、いいか……」
教室に戻ることと、神さまの席に座ることを天秤にかけ、
私は神さまの席を選んだ。
「……怒られたりしないよね」
ふと、そんな思いが脳裏をよぎる。
「お邪魔します……」
一応断りを入れてから、ベンチに腰を下ろした。
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「いただきます」
ザー、という雨音をBGMに、私はお弁当を食べ始める。
「何で神さまのベンチなんだろう?」
食べながら、そんなことを考えていた。
ベンチも雨よけも至って普通だ。
少し古くて、サビが浮いているくらい。
荘厳さも、特別感もない。
それでも生徒たちが律儀にその言い伝えを守っているのは、不思議だった。
全員がそうというわけではないけれど……
私みたいな生徒もいるし。
「まあ、おかげで私は助かったけどね」
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昼食を終え、教室に戻ろうとした頃、雨が止み、太陽が顔を覗かせた。
「午後は蒸し暑くなりそうだな……」
そんなことを考えながら、ベンチを見下ろす。
「神さまに、相席のお礼をしなくちゃね……」
私は、いつもお弁当と一緒に母が入れてくれる飴を一つ、ベンチに置いた。
「ありがとうございました」
そう言って、教室へ戻った。
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三階の廊下を歩きながら、窓の外を見る。
「あ……」
その時、私は“神さまのベンチ”の理由が分かった。
雨よけと校舎の影の下、
誰かがそこに座っているように見えた。
そして、その影から虹が伸びていた。
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「だからかぁ……」
きっとこの光景は、いつでも見られるものじゃない。
タイミングが重ならないと、見えないのだ。
私は少し嬉しくなり、思わず神さまに願った。
「素敵な出会いがありますように……」
その時、影が微笑んだように見えた。
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きっと、願いは叶う。
だって――
ベンチから、飴がなくなっていたのだから。




