性癖ブレイカー不木崎
「あれ…?おかしいな?昨日の夜は水着ちゃんと着れてたよね?」
「あ……え……?ど、どういう……?」
「いや、鏡の前でポーズしてたじゃん」
「う……そ……?」
真っ赤な顔で母さんは項垂れる。
死刑執行が決まった死刑囚のような表情である。
もう一押ししようか。
「執筆するんだったら一緒に体験しなくちゃ。それに、昨日の水着の母さん、すっごく可愛かったから全然恥ずかしくないよ」
「かわっ……」
固まった母さんにバッグを持たせて、テントの中まで背中を押す。
入り口を閉めて一仕事終えたように汗を拭うと、城姉妹がこちらを凝視していた。
「……なに?」
「ふっきーってさ、今の意地悪でやってるの?」
「え?そんな訳ないだろ。単に一緒に川遊びしたいだけだけど」
城の質問に答えると、姉妹はひそひそと会話する。
なんだ…?
「私たちとは…?川遊びしたい?」
「え?……まぁ、せっかくだし」
そう答えると、二人はまたもニヤニヤとムカつく笑みを浮かべる。
「そっかー!ふっきーは私たちの水着姿が見たいんだね!お姉ちゃん!」
「そうだね椿!ほんっとにふっきーはエッチだよね!私たちの水着姿が見たいのを川遊びしたいーなんて隠して!このむっつり!」
二人ともニヤニヤしながら身を寄せ合っている。
こいつらは一体何を言ってるんだ…?
「別に何も隠してないぞ。そんなもん、見たいに決まってんだろ。特に春は見たい」
「……」
「お、お姉ちゃん?打ち合わせと違うじゃん!何顔真っ赤にさせてるの!負けちゃダメ!てか私の水着姿はどうでもいいってかーこの野郎!」
真っ赤な顔で俯いた城に椿ちゃんが慌てる。
別にどうでもいいわけではない。多分可愛いんだろうけど、どちらかと言うと城の方が見たいだけだ。絶対にエロい。バニー姿である程度想像がつく。
にしても、いい加減暑い。俺もシャツが汗ばんできたし、先に行くか。
「俺先行くぞ?」
そう言ってTシャツを脱ぐ。
今回は海パンを下に履いているため、すぐに川へ入れる。万事抜かりはない。
その瞬間、ジャリっと音が鳴る。
見てみると、城が膝から崩れ落ち、それを椿ちゃんが全力で支えていた。
「ふ、ふっきーふざけんなよ何してくれてんだ!お姉ちゃん一瞬で意識飛んじゃったじゃん!てか服着ろー全身性器野郎!!!」
「え…?川入れないじゃん」
「何言ってるの?!上半身裸じゃないと水に入れない宗教にでも入信してるの!?いいから服着て!他の人に見られちゃうから!バカ!」
「バカとか言わなくても……」
そう言いながらTシャツを着る。
それを確認した椿ちゃんは城をテントへ引きずっていった。
おっぱいが大きいからか、重そうだった。
どうやら上半身裸はNGらしい。
そう言えば、城が家に泊まった時もかなり深刻だったのを忘れていた。
しかし……Tシャツで入るのか……張り付きそうで嫌だな。
凄まじいスピードでテントから出てきた椿ちゃんが俺の前まで走ってくる。
「私の性癖歪んだらどう責任取ってくれんの!スケコマシ!」
「え……今性癖歪む瞬間あった……?」
「歪みどころ満載だよ!」
「例えば…?」
「それは言わない!言ったらやってくれなくなりそうだから!」
「もう歪んでるじゃん」
椿ちゃんに再度Tシャツは脱がないように注意され、そのまま手を繋がれ城姉妹のテントへ移動する。
城が足元でガッツリ気絶しているのをよそに、椿ちゃんはバックから水着を取り出した。
「いい?私今から着替えるけど、手を離しちゃだめだからね!」
「…は?いやいや、流石に着替えしてるときは…ていうかテントの中だし別に大丈夫だろ」
「文句言うな!ふっきーがふらふら脱ぐからでしょ!ドスケベ!気まずいならあっち向いてて!すぐ終わるから!」
椿ちゃんが着替えながら俺の手を握るらしい。そっちの方が犯罪臭するんですが…?
すぐに服に手をかけ始めたので慌てて後ろを向く。
布の擦れる音が聞こえてきて、握られた手にヒヤッとした紐のようなものの感触が伝わってくる。
「冷たッ」
これ……椿ちゃんが着てたタンクトップじゃない……?汗でちょっと湿ってる。
少しの間ガサゴソと手が動いたが、着替え終わったのか止まる。
「ふっきー大丈夫だよ」
そう言ったので、振り返ると水着を胸に当てて全く着替えが終わっていない椿ちゃんがいた。スクール水着みたいなものを当てていて、少し動くだけで、上やら下やらがチラチラと見えそうである。
ちなみにやはり俺と椿ちゃんの握られている手には、汗に濡れたタンクトップがぶら下がっている。
「よくよく考えたら片手じゃ着替えるの無理だった」
「……全然大丈夫じゃねえじゃねーか!」
「テヘッ」
「止めろ動くな!胸とかいろいろ見えるだろ!」
慌てて手を離そうとするも、全く離してくれない。
それどころか、そんな俺の表情を見た椿ちゃんは目の瞳孔を丸々と開いて猫みたいな顔で俺を興味深そうに見てくる。
そのまま口の端を歪ませた。
「へぇ……こういうの好きなんだね……ふっきー」
「……好きじゃない」
「うんうん、わかったわかった。水着から着替えるときにもう一回やろうね!」
「やらんわ!」
ご機嫌な様子で椿ちゃんは手を離し、後ろを向いてから一瞬で着替える。
こちらを振り返った椿ちゃんの表情はご満悦だった。
「お姉ちゃん起こして泳ぎにいこー!」
幸い、先ほどの俺の裸は他のキャンプ客に見られていなかったのか、特に騒ぎにはなっていなかった。
……にしても、この世界は色々面倒くさい。




