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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
第二章〈トラウマ克服に向けて〉
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第65話:わすれもの

 キャンプ場はかなり綺麗な場所だった。

 自然に囲まれているのは言うまでもないが、近くには川が流れており、肌に当たる空気はひんやり涼しい。

 空気も大変美味しく、深呼吸をすると体の中にある毒素が全て浄化したような気持にさせてくれる。

 洗い場や簡易シャワーやトイレなど、その他の施設も充実していて、特に大きな不便は感じなさそうだ。母さんたちは初めてのキャンプみたいだからちょうど良かった。


 チラホラと他にもテントを張っている人たちがいて、俺が深呼吸をしている姿をガン見していた。きゃー!という黄色い悲鳴も聞こえてくる。うん、全員薄着ですごくいいね。


「拓人、今日は絶対一人になっちゃ駄目だからね!」


 母さんが指を立てて強めに言う。

 まぁ、確かにこの大自然の中で連れ去れるのはご免である。


「トイレのときは?」

「と、トイレのときも!」

「わかったよ」


 一瞬躊躇いを見せたが、やはり安全を取ったらしく、一人行動を禁止させられる。

 実質禁欲生活じゃないのこれ……?周りには露出の激しいエッチなお姉さんたちで溢れているというのに。

 最近は一日2度は必ず出していたから、ちょっぴり不安ではある。椿ちゃんとか母さんに臨戦状態の不木崎君を見られるのはマズイ。

 こんな薄着の美少女しかいないキャンプで俺は菩薩のような心で過ごさなければならないのだ。


 車からキャンプ道具を取り出す。

 みんなでそれぞれテントを設営するも、初めての作業なのか動きが悪い。


 さてと……キャンプのだいご味、さっそく教えちゃいますか。


 前世ではキャンプ大好き家族の中で育ったため、かなりの回数キャンプをしている。それこそ、テント設営など児戯に等しい。


 誰か困ってそうな……あ、いた。


 母さんがテントを支えるペグと呼ばれる杭をゴムハンマーで打っているがすごく危なっかしい。あれではケガをしてしまう。


 俺は母さんの背中に回り込んで両手を手に取る。


「にゃっ!」


 妙な鳴き声を発した母さんを無視して、ペグを支えている手を退ける。

 あまりふざけると本当にケガをするため、いたって真面目な雰囲気で、


「ペグは別に手で支えなくてもいいよ。最初はちょっと地面に差し込んでからペグの向きと逆になってから垂直にハンマーを振り下ろすの、いい?こう……ほら、簡単に地面に刺さったでしょ?」

「にゃぁ」


 猫語で返されるが、ブンブン首を振っているところを見ると理解してくれたみたいだ。母さんが頭を振ったせいか、髪の毛からすごくいい匂いがする。

 このまま顔をうずめて深呼吸をしたいところだが、他の目もあるため自重しよう。しかも照れて手元が狂ってケガに繋がるかもだし。


「ふっきー!私もよくわかんなーい!」

「お、椿ちゃん待ってろ今行く」


 同じように椿ちゃんにも指導する。

 ハンマーを振り下ろす際、謎の甘い声を出したがふざけているだけなのだろう。

 しかし、こういうときにふざけるのは頂けない。ケガの原因になる。


「椿ちゃん、ちゃんとやらないなら教えないよ」

「あ、ご、ごめんなさい……」

「分かればいいよ。ケガしないようにね」


 少し萎れた椿ちゃんの頭を少し撫でてから立ち上がる。


「これ……やっばぃ……」


 撫でられた頭を押さえて、椿ちゃんはプルプル震える。

 そんな俺たちの様子を城が鬼の形相で見つめていた。

 一切ペグを見ず、正確に振り下ろして一発で地面に深く突き刺している。

 褒められてことではないが、他の作業も結構できていることから、要領はいいらしい。


「春は……おお、流石。できてるじゃん」


 ハッとした表情の城が、すぐにペグを抜いて新しい地面に設置する。

 そのままこちらをねだるような視線で見つめてきた。


「わ、わたしもちょっと良くわかんないかなー、なんて……」

「いや、できてたじゃん」

「できてない!」

「よし、それじゃ次はタープテントも立てようか!日差し結構強いし日よけは欲しいよね!」

「できてなーーーい!!!」


 それぞれテント設営も終えて、バーベキューセットの組み立てなどしていたらもう昼の14時を超えていた。お昼ご飯はパーキングエリアで食べてきたためこれからは自由行動となる。


 それなりに動いたため皆結構汗をかいている。

 城なんか胸がデカいせいでエロい汗染みが出来て非常に目の毒である。大自然も相まって色々開放的になってしまいそうだ。

 水着なんかより着衣の方がエロいのは何故なのだろうか…?


「それじゃ、俺と母さんは川で泳いでくるけど二人はどうする?」

「もちろん泳ぐに決まってんじゃんふっきー!」

「あっついもんね……」


 椿ちゃんと比べて城の汗は倍以上かいている。見るからに暑そうだ。

 本ばかり読んでいる出不精の城には、この太陽光線はキツイらしい。

 まぁそれだけなく、明らかにそのデカい胸にも原因がある。服をパタパタしないで欲しい。揉みしだくぞ。


「……ええと拓人?お母さん水着持ってきてないよ?」


 さりげなく頭数に入れたのを気づかれてしまい、母さんから詰められる。


「お母さんはこの日よけで休んでるから、みんなで楽しんできて」


 にっこり笑う母さんの腕をつかむ。逃がすわけないよね?

 俺もにっこり笑って、小さいバッグを取り出した。


「うんうん、母さん絶対持ってこないだろうと思って、俺が持ってきたよ。はい、わ・す・れ・も・の!」

「……へ?」


 母さんの顔から尋常ではない量の汗が流れる。暑さのせいではなさそうだ。

 少し抵抗するように力を入れて引っ張られるが、俺が少し強く腕を握ると一気に力が抜けたようにふにゃふにゃになる。


「こ、こんな歳にもなって水着とかはちょっと恥ずかしいというか……ほ、ホラ!水着も大分前のものだからもう着れなくなってるかもしれないし!」


 早口で力説する母さん。

 本当に恥ずかしいらしい。だが、俺は知っている。

 昨日の夜、鏡の前で水着姿になり、自分の姿を確認していたことに。

 ちょっと挑戦的な黒の水着を着て、鏡の前でポーズを取る母さんを激写したかったが、傍から見たら犯罪の匂いしかしなかったため自重した。


 ポーズを取るたびにため息を吐いて首を横に振っていたところから、本当に恥ずかしいのだろう。母さんは何を着ても似合うというのに。


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