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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
第二章〈トラウマ克服に向けて〉
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似た者同士

side.不木崎ふきざき拓人たくと

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 あっぶねー!!助かった…!

 天の声とはこのことだろう。どうやら予定より早く家に着いたらしい。

 城は母さんの声に、瞬時に一歩後ろへ引く。


 城にチューされたら失神どころではない。

 あの時は急だったし、雰囲気もへったくれもなかった。

 それに、陽乃ちゃん胸も大きくないし妹っぽいし……本当に親戚の子にチューされた程度のものなんだが…。


 母さんが両手に大荷物を抱えて来る。お土産をたくさん買ったみたいだ。

 サイズ的にお土産に持たれているくらいなのに、軽々と持っているのは流石ばあちゃんの娘と言ったところか…。


「た、拓人に会いたくてお母さん急いで帰って……きちゃ……」


 リビングについた母さんは城を見て、体を硬直させる。

 城はそんな母さんを見て、体を硬直させていた。

 サイズ感も似てるし、違うのは体型おっぱいのサイズくらいだなこの二人。


「お、女の子……家に……つれ……」


 ……え?……あれ、何?

 泣いてない…?


「ちょっ、母さん!何で泣いてるの!」


 嗚咽を上げながら泣き出した。荷物を全て床に落とし、ペタリと座り込みながら両手で瞼をこすっている。

 城も硬直を解き、わたわたとし始める。


「あ、あの《《お母さん》》、私は拓人くんのクラスメイトの……」

「あなだの……おがあざんじゃ……な゛ぁい!!!」


 城が言いきる前に、母さんは泣きながら反論する。

 これ、もしかして彼女連れてきてるって思われてない…?


「か、母さん。春はプリントを届けにきてくれただけだって!春とは別になんでもないから!」

「はぁ?!なんでもないって何!?」


 城が激しく反応し、こちらに非難の目を向ける。

 目元が徐々に潤んでいき、鼻をすすりだす。


「な、なん…でも……なんでもな゛ぐな゛いも゛んっ!!!!」


 今度は城が床に座り込み、目元を押さえて泣きだした。


 え……。何この状況。


「な、名前で呼び合ってるー!!!うわーん!!」

「なんでもなくないもーん!!!うわーん!!」


 どちらも子どものように泣き始めてしまった。

 30歳児と16歳児である。


 …確かに、母さんに言わずに女の子を家に連れてきたのはまずかった。あれだけ過保護な母さんに対しての配慮が足りてなさすぎる。

 …それに春に対しても、なんでもないは言い過ぎ。あれだけのことしておいてそれは薄情にも程がある。


 ……あれ、これ俺が100悪くない?


 今回の件に関して、前の不木崎くんは一切関係ない。全て転生後の俺が撒いている種だ。

 あ、ヤバい。これどうにかしないと収集つかないぞ…。


 ……仕方ない、《《アレ》》を使うか…。


「ご、ごめんねー。二人とも。俺、本当に配慮が足りなかったねー」


 そう言いながら、二人の頭を撫でる。

 最近泣いている子に、これをしたところ涙が止まった実績ある技だ。


 俺が頭を撫でると、二人はピタリと涙が止まり、こちらを惚けた面で眺めていた。


「か、母さんにちゃんと言っておくべきだったよね。ごめんね。あと、心配してくれてありがとね」


 母さんを見ながら頭を撫でる。


「は、春も大切な友達なのに、あんな言い方して本当にごめんね。今日もプリント届けに来てくれてありがとね」


 城を見ながら頭を撫でる。


 二人とも、今度は何も言わずに涙を流し始めた。

 あれ、涙止まらないんだが…?





 あ、そろそろ頭痛が失神になるかな、というところで二人はゆっくりと立ち上がり、それぞれダイニングチェアに腰かけた。

 二人とも涙は乾いており、その代わり滅茶苦茶顔が赤い。

 他人の前で号泣してしまったのが恥ずかしくなっている様子だった。


「さ、さっきは取り乱してごめんなさい。拓人の母親のかすみです……」

「わ、私も急にお邪魔して申し訳ないです。拓人くんのクラスメイトのぐすくはるです……」


 二人は何事もなかったかのように、挨拶をしだした。

 切り替え早いな…と思いながらも、俺も母さんの隣に座る。


「え、城さんって……《《あの》》城さん……?」


 母さんがこちらを見て驚いた顔をしている。

 以前、母さんの書いた小説の感想を直接《スピーカー越し》聞かせたのを覚えているのだろう。他にも春の話は結構母さんにはしている。

 まぁ、あの時すごく恥ずかしそうだったし。記憶に残るのも無理はない。


「そうそう、あの《《信者》》の城さんだよ、母さん」


 そう言うと、母さんは顔を真っ赤にさせる。

 対して、城は何の事だろうかと、不安そうな顔をしていた。

 あ、そうか。春にはまだ母さんの正体を言ってなかった。


「春、この人が俺の母さんで、小説家の水国みずくに千冬ちふゆだよ」

「……え?」


 城は母さんを驚いた顔で見つめる。母さんは背中を丸めて、より顔を赤くさせる。


「えぇぇえええええ!?」


 城は叫ぶように声を上げ、そのままのけ反る。

 すぐに、バネのように元に戻り、テーブル越しに母さんへと近づいた。


「あ、あの滅茶苦茶ファンです!小説3巻まで読みました!あ、さ、サインください!」


 緊張したオタクファン丸出しだ。ちなみに母さんはプルプル震えていた。


 ガサゴソと鞄を漁ってサインしてもらうものを取り出そうとしていた城は、何かに気づいた様子でピタリと動きを止める。


「……あれ、ちょっと待って。何で信者って言って伝わるの…?それふっきーにしか言ってないんだけど…」

「え?ああ、あの時の通話をスピーカーにして母さんに聞かせてたんだ」

「へぇーそうなん……え?」


 そう言って、城は母さんを見る。真っ赤な顔の母さんと目が合い、母さんはへ、へへっとぎこちなく笑って見せた。


「……あ」


 今度は城の顔が真っ赤になった。


「にゃ、にゃんで、スピーカーで……」


 恥ずかしさのあまりニャンコ語になってしまっている。


「「……」」

 

 二人とも真っ赤な顔で俯いてしまった。


 ふむ。この二人は本当にすぐ照れる。

 これじゃ、俺が話しかけないと一生このままだな…。


「何を恥ずかしがるの?いいじゃん別に」


「「よくないっ!」」


 母さんと城は互いに声を揃えて俺の方を向く。仲良いな。

 ユニゾンした二人は顔を見合わせ、確かめるように頷きあっていた。


「城さん、貴女もなの……?」

「…はい。しょっちゅうです」


 二人はお互いを労わるような目で見あう。苦労を共有しているかのような表情だ。

 似た者同士、謎のシンパシーを感じあっているようだった。


「た、拓人はすぐにお母さんをからかうおうとするの、直した方がいいと思う!」

「そ、そうだよ!私にもすぐ意地悪なこと言うの、直した方がいいと思う!」


 攻撃対象が俺になったらしい。

 別にからかっても意地悪なことを言ったつもりもないのだが…。


「別にそんなつもりないんだけどな…、まぁたまに反応が可愛らしくていじりたくなるときはあるけど」


「「そういうとこ!!!!」」


 二人は声を揃えて、こちらににじり寄る。

 鼻息も荒く、目もまん丸に見開いている。やはりこの二人似てるな…。


「えーヤダ。楽しいし」


「「……」」


 ニヤリと笑いながら言うと、今度は二人して押し黙る。照れるツボも一緒らしい。

 でも、そういう顔されちゃうと……。


「母さんはたまに駄々こねるけどそれも可愛いし、ていうか何しても可愛いし、もう自分から弄ってって言ってるようなものだよねぇ?」

「ふぁあ……」


「春は唯一同年代で素の俺が出せる大事な友達だし、結構好きに言ってるから正直どこが意地悪なところなのかわからないんだけど…一つずつ丁寧に教えてくれるぅ?」

「んっ……」


 ニヤニヤ笑いながら二人を見る。

 二人は息を荒くさせながら、悔し気に俺を見ていた。

 そんな顔を見せられるとこっちも我慢できないんだよね!しょうがないね!


「城さん……」

「春って呼んでください…霞さん」

「春さん……いえ、春ちゃん……!」

「霞さん……!」


 二人は頷きあったかと思うと、キッと眉間に皺を寄せてこちらを睨みつける。


「春ちゃんとお話したいから部屋戻って!」

「霞さんと話するからふっきーどっか行って!」


「え、混ぜてよ……」


「「早く!!!!」」



 あまりの覇気に、俺は慌てて部屋へと戻った。

 ちょっと、からかいすぎたらしい…。

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