春の女の子耐性獲得訓練①
side.城春
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここに、第一回『女の子耐性獲得訓練』の開始を宣言します!」
「えっと……勉強会は?」
放課後の図書室。
相変わらず誰もいないため、私は声高らかに宣言する。
不木崎はこちらを呆れた目つきで見ているが気にしない。
「勉強よりももっと大事なことがあるでしょ!」
「学生の本分なんだが」
ここ最近、ふっきーを見ていると疼きが抑えられない。あの時のことを何度も思い出してしまう。
押し倒してしまう前に、こうして訓練を称してイチャイチャでもしないと私が持たないのだ!
それもこれもふっきーが優しくて、カッコよくて、エッチなのがいけないと思います!あと、たまに意地悪なのもいけないと思います!
「はい!今日は訓練だけでは面白みに欠けるので、ミニゲーム式でやっていこうと思います!」
「……」
もはや何も言わなくなった不木崎は、胡散臭い表情で私を見る。
「今回は『創作漢字ゲーム』!お題に対して創作漢字をつくって、回答者にお題を当ててもらう、とってもシンプルなルールです!例えば……」
私は紙に『お題:ティッシュ』と書いて、その下に
紙
箱
と書く。
「こんな感じで、漢字の置き場所とかにもこだわれば、より伝わりやすくなるよね!」
「あぁ、なるほど。面白いな」
よし!食いついた!
「でもこれどうやって勝ち負け決めるんだ?」
「回答者が答えられなくて、答えのお題を見たときに納得できたら負けだよ!あと、答えを当てられても負け!」
「……随分主観的なバトルだな」
「ちなみ!負けたら罰ゲームです!具体的には負けた回数によって、ふっきーの部位を触っていきます!」
そう言って、私は事前に用意していた紙を取り出す。
1回:手
2回:お腹
3回:顔
4回:胸
「用意周到すぎて引くんだけど……」
「ち、違うから!今ササッと書いたやつだから!事前に書いたとかじゃないし!」
実際は休日を一日使って考え付いたゲームだが……。
何せ、このゲーム。ただの不木崎を触るためのゲームだけではない。
特大の仕掛けをしてあるのだ……!
「何でニヤニヤしてるの…?」
「し、してないよ?ちなみに、ふっきーが勝ったら私のエッチな写真をリクエストできます!」
「ふぅ……見せちゃおっかな?本気ってやつを……!」
不木崎は首をゴキっと鳴らしながら、手首の柔軟をし始める。
どうやらやる気を出してくれた。……正直、その反応も私にとってはご褒美なんだけどわかってやってる?
「お題をそれぞれ2枚ずつ書いて、この箱に入れてください!ちなみに、4枚だと流石にメタ読みできちゃうから、私が適当に書いた紙も入れてわかりづらくさせてます!」
「箱まで作ってる……」
私と不木崎は紙を入れて、箱を振る。
「それじゃ、ふっきーの番からね!紙を取って、創作漢字を書いて!」
不木崎が箱から紙を取り出し開く。
ふむ…と頷いた後、紙に文字を書き始めた。
柔
乳
「え……?ふっきーもしかして欲求不満なの?」
「ち、ちげーし!ちゃんとお題に沿った回答だし!」
「私のおっぱい揉む?」
「そういう意味じゃないって!……まぁ、揉みたいけど」
「……ばか」
別に、本当に、いつでも、好きなだけ、触っていいんだけど……。
でも、無意識カウンターは止めて欲しい。密室でそれはとても危ない。
っという冗談はさておき、このゲーム、実は私に超絶なアドバンテージがある!
私が書いた紙が多いということは、お題のメタ読みがとてもしやすい、ということだ!そして、これは私の書いたお題。
ふふふ、あえてメタ読み防止と謳って追加したお題が、まさか私がメタ読みするための策だとは思うまい……!
……にしても、ふっきーこのゲーム下手だね。
「答えはソフトクリーム!でしょ」
「せ、正解……」
疲れた顔で不木崎はお題の紙を見せる。
「ふっきー……このゲーム和訳するゲームじゃないんだよ?」
「わ、わかってるわい!」
恥ずかしそうに不木崎は、紙を裏返す。
「さて……負けたら、わかってるよね?」
「……罰ゲームだろ」
「ふふふ、素直な子は嫌いじゃないよ~」
「エロ姉妹が……」
私はふっきーから差し出された手を両手でそっと包む。
ちょっとごつごつしていて硬い。
右手は指を絡ませて、左手は手首をスーとなぞる。
「こ、これどれくらい耐えればいいんだ?」
不木崎から青い顔で確認される。
まぁ、訓練だからそんなに早く終わらせはしない…長くして気絶されても困るけど…。
「もうちょっと~」
ああ、この手でふっきーは精役を……するんだろうな。
情けない顔でするんだろうか…それともエッチな顔で……?
指の表面も一つ一つ丁寧に擦り合わせる。私の指も敏感らしく、不木崎の指と擦れるたびに、脳に快感が走る。
どんな感じなんだろう…。この手で私が無茶苦茶にされたらどうなるんだろう…。
「お、終わり!」
不木崎が手を振り払う。
ちょっとエッチに触りすぎたらしい。
「ちぇー」
私は唇を尖らせて、箱から紙を取り出す。
お題は『ハンモック』……あ、これ私の書いたやつじゃない。
くそー!運と顔と性格がいいやつめ……!
恐らく一瞬で当てられてしまうだろう。
私は紙に漢字を書き始める。
木寝木
「ハンモック」
「ぐぬぬぬ……っ!」
やはり秒だった。出題者のアドバンテージがデカすぎる。
「おお、この漢字面白いな。こうやって書けばいいのか」
どうやら不木崎は要領が解ってきた様子だ。
さっきのはあからさまに和訳だったしね…。
不木崎は表情を変えて、私を指さす。
すごく嬉しそうな表情だ。
「それじゃ、春も罰ゲーム!」
「……うん」
これ、私どっちに転んでもご褒美なんだけどね。今の嬉しそうな顔とか。
ふっきーの性癖も知られるし、私でそういうことしてくれるってなんか肌感でわかってめちゃくちゃ興奮するし…。
「バニー服!バニー服着た写真が欲しい!」
鼻息荒く、不木崎は言う。
「な、バニー服…?コスプレして欲しいってこと…?」
「ああ!」
少年のようにキラキラした瞳を向ける不木崎。
こ、コスプレが好きってこと……?
ヤバすぎない……?もし結婚したら、色んなコスプレし合ってエッチなことできるってことでしょ……?
女の夢じゃん…!
「あ、服のお金は払うから……というか一緒に買いに行くか。サイズもわからんし」
「……」
追い打ちをかけてくる。デートも決まってしまった。
コスプレ買いに一緒に行く……?何なのそのデート……エッチすぎない?創作の世界でもそんなドスケベなシチュエーション聞いたことないんだけど…。
以前もデートの約束をしたが、あれは勉強を教える代わりに私にご飯を奢るという話。正直、こちらからは切り出しにくい。
だが、こちらは罰ゲーム!
罰ゲーム早く終わらせたいから行こっ!と強制的にデートへ持ち込める…!
思わぬ副産物だ……!流石ヤリチン検定1級は伊達じゃない……!
「そ、そうだね。私もコスプレよくわからないし、ふっきーに選んで欲しいかも」
「おう!任せとけ!」
すっごいノリノリである。これが私のコスプレが見たいから湧き出てる元気なんでしょ?今日夜寝られる自信ないんだけど。
「じゃあ、次は俺の番な!えーと………え?」
私は口角を気づかれない程度に吊り上げる。
引いたね……?
そう、今までのゲームは序の口!
私が仕掛けた最大の仕掛けは『お題:好きな人』である!
目の前にいる美少女が期待した眼差しを向けている中、ふっきーはどう書くのかな…?
いいんだよぉ?『春』って書いても……?
それ、創作漢字じゃないじゃん!私じゃん!ふっきー大好き!って抱き着くから……!
不木崎は、少し考えて、紙に文字を書き始める。
さぁて、何を書いたのかなぁ?
小天使小
と書かれていた。
……え?……何?
これってまさか…………私の妹じゃないよね?
え、待って。この『小』って書かれてる文字って、椿の《《小さいおっぱい》》のことじゃないよね……?
真ん中に『天使』って書かれているところも、椿っぽくて……。いや、あの子はどっちかと言うと小悪魔な気がするけど…?
どちらにせよ、私じゃない可能性が非常に高い。由々しき事態である。
私しか女の子の友達いないって言ったくせに、知らない女の可能性がある。
あ、やだこの感じ。
すっごいモヤモヤする。
椿なの?椿だったら私、今からこのまま図書室の鍵閉めに行くんだけど…?
ついでにカーテンも閉めて、電気も消すんだけど…?
これ、何を答えてもこちらの負けな気がする。
私!って答えて私じゃなかったら、すごい気まずいし、椿!って答えても私が死ぬし。むぅぅぅうううう!
「わ、わかりません……」
日和った。だって怖いじゃん…。
不木崎はだろうな…という顔で、紙を見せてくる。
「お題は好きな人……えっと、答えは?」
やはり、私が書いたお題だ。
ではこの人は何なんだ…?
「俺の母さん」
「へ?」
私は一瞬放心する。
母さんってお母さん?ふっきーの?
「ず、ズルい!お母さんはズルい!それ一番白けるやつ!しかも答えわかんないし納得いかない!」
「いや仕方ないだろ、母さんくらいしか思いつかんかった」
ぐぬぬ……!私は眼中にないだと……?
「フンっ!次次!」
そう言いながら、私は紙を取る。
お題は『好きな人』。
額から汗が流れる。
あ、そうだった……。ふっきーに当たる確率少しでも上げるために、私結構な枚数『好きな人』と書いたんだった。
策士策に溺れるとはこのことか……!
ふっきーを追い込んだつもりが、私が一気に窮地に立たされる。
マズイ。私の場合、好きな人と言われたらふっきー以外あり得ない。
この場を凌ぐ嘘だとしても、ふっきー以外を答える選択肢はないくらいには大好きなのだ。
これ好きバレしちゃうじゃん……!
不木崎から告白させるプランが台無しである。
こんなつまらないゲームで私の告白になるなんて許されない!
クソ……!
私は紙に漢字を書いていく。
優悪淫
馬
「え……何これ……?」
不木崎がじっくり見ている。
あんまり見ないで……!
優しくて、意地悪で、エッチで、馬並み……そう、ふっきーである。
他にも色々パターンはあったが、馬だけは外せなかった。謎の引力が働いているかのように、どのパターンにも馬が嘶きを上げて入ってくる。
「えー……わからん。答えは何だ?」
「あ、やっばーい!雨降ってきそう!ふっきー今日はもう帰ろっか?」
「晴天なんだが…?」
紙や箱を鞄に入れ込む。
「ほら、ふっきー!早く帰ろ!」
「……まぁ、いっか。明日は勉強だぞ?」
「わかってますよー」
よし、次はもっとうまくやろう。




