表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/45

僕のヒーローアカゴケミドロ 13

トンテンカン トンテンカン


 金槌の乾いた音が青い空に吸い込まれていく。

 二日前には立派だった舞台はもうあらかたなくなっていた。

 唯はキョロキョロと辺りを見回すがお目当てのものは見つからない。期待はしていなかったが、やはり少しがっかりした。

 ショーは終わったのだからアカゴケミドロに会える筈はない。そんなことはわかっていたことだ。ただ、何か手がかりになるものを舞台の解体をしている人から手に入らないかと思っていたのだ。

 既に何人かの人に尋ねて見たが、収穫はなかった。


「あのすみません」


 これを最後にしようと思いながら、唯は近くにいた作業者と思われる男に声をかけた。

 しゃがんでいた男が立ち上がり、振り返った。唯の首が60度を大きく越える角度に曲がる。

 大男だ。しゃがんでいたのでわからなかったが、自分が声をかけた男がとてつもない大男だったことに唯は驚く。視界にいれようと思わず二歩ほど後ずさる。


「何か用か?」


 男は無表情で言った。


「あっ、えっと、この前の日曜日にここでショーがあったんですが、そこでアカゴケミドロの役をやっていた人を探しているんです。

何か知らないでしょうか?」

「あのショーにアカゴケミドロは出ていない」


 男の答えに唯は首をかしげた。確かにあのショーにはアカゴケミドロは出ていないだろう。なぜなら自分を助けてくれていたからだ、と唯には分かる。だが、それが分かると言うことは目の前の大男があのショーを見ていたと言うことを意味していた。


「あのショーを見ていたんですか?」


 唯はやっと見つけた手がかりに興奮して叫んだ。


「いや見てない」


 大男は少し慌てたように答えた。


「本当ですか?じゃあ、何で出ていないって知っているんですか?

ショーの関係者さんか何かですか?

だったら教えてください。僕、どうしてもアカゴケミドロさんにあってお礼が言いたいんです」

「お礼?」

「はい。僕、二度も危ないところを助けてもらったんです。

それに(うるさ)くつきまとってきた奴らが急に大人しくなって。僕を見てもなにもしないで逃げるように去っていくんです。

きっとアカゴケミドロさんがあの後に何かをしてくれたに違いないんです。

だから、お礼が言いたくて、ずっとアカゴケミドロさんを探しているんです」


 男はやれやれ、といった風にため息をついた。


「言いたいことは分かった。俺が伝えといてやろう」

「えっ?やっぱり、アカゴケミドロさんを知っているんですか?

だったら、直接会ってお礼が……」

「いや、知らん、知らん。

今は知らんが、ここの親方に聞いて、そのアカゴケミドロに伝えておいてやろうといっているんだ」


 男はぶるんぶるんと手を振り、拒絶する。


「そうですか」


 これ以上話をしても無駄だと分かり、唯は落胆する。しかし、それでもやはりあきらめきれないところがあった。その時、ふと親方と言う人に聞けば分かるのなら自分で聞けば良いじゃないかと思い付いた


「僕、直接聞いてみます。その親方って人はどこにいるんでしょうか?」

「いや、ダメだ」


 男は間髪を入れずに答える。


「はい?ダメって何でですか?」

「い、いや、それは……

そうだな、解体作業場は危険なんだ。お前のような子供がチョロチョロしていて良い場所じゃないのだ」

「そんな……」


 唯は何か釈然としないものを感じた。正論なのだが、何か取って付けたような理由にも聞こえた。


「良いから出ていけ。

ぐずぐずしているとつまみ出すぞ」


 男はぐいと腕を上げた。丸太のような腕は文字通り唯をつまみ出せそうだ。唯は仕方なくその場を去ることにした。


「本当に、見つけたらお礼を言ってください」


 その場を去り際、唯はもう一度、その名も知らぬ大男に頼む。


「ああ、必ず伝えておく」

 大男は胸を張って答えた。


 大男は唯が完全に姿を消すまでずっと見守っていた。


「健さん」


 と、その大男を健と呼ぶ声がした。振り向くと、源太郎がいた。


「あの子、例の連中に脅されてた子でしょ?

何で自分がアカゴケミドロだって、いってやらないんですか?

その方があの子もすっきりするでしょうに」

「言ってどうする?」


 健は不機嫌そう言うと、足元の材木の束を持ち上げると源太郎に渡す。

 材木を渡された源太郎は、材木の重さに二、三歩よろめく


「うわっと!重いっすよこれ、俺、一人で運ぶんですか?」

「そうだ。奥に停まってるトラックの荷台に放り込むんだ」


 健は、自分も同じような材木の束を二つ抱え上げると歩き始める。源太郎は健の後について、さっきの話の続きを再開した。


「言ってどうするって、その方があの子も納得するでしょ。

それに健さんが三科(みしな)さんに頼んで、例のバカ中どもが、またあの子にちょっかい出さないように睨みを効かしてるって言ってやれば安心するでしょう」

「俺がやれるのは力ずくでの解決がせいぜいだ。そんな恥ずかしいことを吹聴はできん」

「恥ずかしいって、力ずくだろうがなんだろうが立派な解決じゃないですか。

言って分からん連中なんかひっぱたくしかないでしょ」

「力ずくってものを当てにしてるとろくなことにならん。とんでもないところで足元をすくわれるのがオチだ」


 健の言葉に源太郎は可笑しそうに笑った。


「それって健さんや三科さんよか強い奴が現れるって言ってますよね。

へへ、ありえねーす」

「世の中には俺よりも強い奴なんて腐るほどいる」

「いや、いや、いや、いや。

そんな化け物みたいのがたくさんいるわけねーすっよ」


 へらへら笑う源太郎を渋い表情で睨みつけた健だが、何を言っても無駄と思うと、小さなため息をついた。

 ふと見上げると病院の建物が見える。視線が視線に泳ぎ、ある一点に注がれる。

 亜美のいる病室。

 亜美の声が聞きたいと、健はぼんやりと思った。



 トラックの荷台に廃棄材木を放り込むと健はコキコキと首を鳴らしてながら一息つく。これであらかた片付けは完了だ。少し早いが昼にするかと、思っているとふと、自分の足に一枚の紙切れがまとわりついているのに気づいた。

 風で何かのチラシが飛ばされて来たのかと思いながら拾い上げ、手近のゴミ箱を探す。探しながらなんとはなく中身を見た。

 と、見る間に健の顔が険しくなった。


《私たちの亜美を助けてください》


 チラシには大きな文字でそう書かれていた。


「なんだ、こりゃ……」


 知った名前が書かれているのを見て、健は戸惑う。


《私たちの亜美は重度の心臓病で海外で心臓移植を受けるしかありません。

しかし、そのためには1億近くのお金が必要です。

どうか、皆さんの力を貸して頂けないでしょうか……》


 チラシの内容を読むにつれ、健の顔は強張り、手が微かに震え始める。

 食い入るようにチラシを読んだ後、健は亜美の病室へと視線を移す。


「マジか……」


 健は掠れた声で呟くと、絶句した。



2018/12/15 初稿

2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正


《オマケ、または次回予告》

蛍 「うぇっ、うぇっ、うぇっ、え~~ん」

亜美「ど、どうしたの蛍。

   何、泣いているの」

蛍 「これが泣かずにいられますか!

   いいえ、いいえ、実は私はいつも泣いているのよ」

亜美「うそーー、なんか蛍、いつも幸せそうじゃ……

   あ、痛ッ(>_<) デコピンは止めてーー」

蛍 「これもあれも、みんなお前のせいじゃ!

   こうしてやる。こうしてやる!こうしてやる!!」

亜美「痛い、痛い、止めてー」  

蛍 「次回、第4幕『蛍はいつも泣いている』は

   年明け開幕予定?」

亜美「何で疑問形なのよ?」

蛍 「そんなことは察しなさい!子供じゃないんだから。

   もしかしたら春先かも知んないわ!」

蛍、亜美「と言うことなので、気長にお待ちください」


《第三幕の登場人物》

久野(ひさの) 亜美(あみ)

高校二年生。

高校に入った時に一方的に健にプロポーズされた。

亜美いわくタイプではない。

ちなみにタイプは幼い系、メガネのドS系ぽい(本物は嫌い)のが好き。どちらかというと腐女子の系列。

心臓を患って入院中。


海道(かいどう) (たける) 

高校二年生。亜美の通う高校の番長。番長連合の四天王の一人。 

学ランを着たゴリラと揶揄されている。見た目はゴツくて怖いが実は心優しい、生真面目な男。

家の近くの工務店でアルバイトのようなことをしている。

また、ヒーローショーのスーツアクターとしても活躍している。

今回は難度の高いアカゴケミドロでショーに参加する予定だった。


平田(ひらた) 源太郎(げんたろう)

高校一年

健の舎弟分 調子がいいだけで強いわけでも悪いわけでもない

いわゆる雑魚或いはモブ

健の事を健さんと呼ぶ。

調子の良さとフットワークの軽さのお陰で業界では情報通として知られる面が今回発覚。


三科(みしな) 轟山(ごうざん)

番長グループ、四天王の一人。

奇妙な名前と頭を綺麗に剃りあげているのは寺の息子でもあるため。

怪力の持ち主で、力だけ見れば番長グループ随一。健も勝てない。槍術にも長けていて、今弁慶とも言われる男。

寺の息子らしく意外と故事に詳しく博識。

東地区を統括している。

本編では出てこなかったが、健の要請で大悟たちが暴走しないようにしっかりと締め上げている。

こんなに設定があるのに本編には名前しか登場しない(涙)

本編登場はあるのか!?


堂本(どうもと) (ほたる)

亜美の中学からの同級生。

今回、特撮マニアとしての一面を見せる。

良く亜美を腐女子呼ばわりしているが彼女もまた腐女子である。


藤枝(ふじえだ) 瑠璃果(るりか)

本編で名前は出てこないが、健を陥れようとした女の子の名前。

再登場するかは謎


シタッパー1号

瑠璃果の取り巻きの男の子。

名前はまだ無い。


シタッパー2号

取り巻きのもう一人の男の子。

当然、名前はまだ無い。


シタッパー3号

以下同文


早瀬(はやせ) 尚美(なおみ)

亜美の入院している病院の看護師。新人。

アクションショーに出演。病院に入院している子供の人気赤丸急上昇中。同じショーに参加した小児科医の先生は入院中の子供のお母さんの人気が上がっているが著作権等の問題でこれ以上詳しくは書けない。


猿渡(さわたり) (ゆい)

小学5年生 男

女の子のような名前を少し気にしている

中学の不良グループに追いかけられて歩道橋から飛び降りて右足を骨折して入院した。

色々あったが勇気を出して大悟たちを告発した。


ラビ

大悟に殺されそうになっていたところを助けられたウサギ

今は仕方ないので唯が家で飼っている

ラビと名づけられたが、水面からロボットを出したりはしない


栗坂(くりさか)大悟(だいご)

唯をつけ狙う不良グループのリーダ。

茶髪でトゲトゲヘアが特徴。

残虐な性格で小動物を虐めるのが好きなサディスト。

健、三科の圧力で事件後は見る影もないほど大人しくなっている。


矢田(やだ)辰雄(たつお)

栗坂のグループの一員。

グループの中では一番背が高い。

やや出っ歯。

本人も少し気にしており、仲間内からはネズミ男と言われる

仲間内では、そのあだ名を言われても卑屈な笑いを浮かべるだけだが、気にしており、仲間内以外から言われるとキレる。

アカゴケミドロに肩の間接を外され苦痛にのたうち回るが、整形で簡単にはめてもらえたので特に入院はしていない。


丸山(まるやま)(みのる)

栗坂のグループの一員


にゃー

亜美と健をつなぐ猫。

野良猫であったところを亜美に引き取られる。

(亜美たちが小学生5年生の時)

存命。今後出てくるかは謎。


一文字(いちもんじ) 龍生(りゅうき)

誰?となると思うが、アクションショーでカルクアルケミストを演じていた人。

役者志望、得に特撮ヒーローをやりたくて演劇の道を歩む。

何よりも子供たちの夢を実現させたいと思っている熱い男。

あのショーを見に来ていた芸能プロダクションの社長の目に止まり数奇な運命をタドルコトニなるのが、そればまた別のお話。

もう出てきません。(断言)



・以下はアオインジャーのキャラ設定


カルクアルケミスト

アオインジャーの敵の組織の大幹部。

アカゴケミドロに変身する 


番場(ばんば)裕之(ひろゆき)

栗坂のグループの一員


高田(たかだ)(たかし)

栗坂グループの一員


青山(あおやま) 美澄(みすみ)

アオインジャーのリーダー ピュアブルー


雲居(くもい) 空也(くうや)

アオインジャー スカイブルー


海野(うみの) 広大(こうだい)

アオインジャー マリンブルー


藍河(あいかわ) (しょう)

アオインジャー プルシアンブルー


二荒(ふたら) 恭子(きょうこ)

アオインジャー マリッジブルー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ