亜美は秘かに思っている 7
慌てて後ろに下がり車を避ける。
目の前を火花を散らしながら横倒しになった車が通りすぎていった。まるでアトラクションの3D映像を見ているようだ。
一瞬で目の前の横断歩道は地獄絵図と化していた。
複数の車がぶつかり合い、ひしゃげ、横転していた。
後から聞いた話だが、居眠り運転の大型トラックが停車中の列に突っ込んで多重玉突き事故を起こしたのだ。
折しも青信号を渡ろうとした亜美の高校の生徒たち、更には反対側から渡ろうとした集団下校の小学生の一団が事故に巻き込まれた。
「これは……」
亜美は言葉を失う。
地面に倒れた者、よろめき起き上がろうとする者、泣き叫んでいる子供たち。地面には被害者が流した血や大破した車から漏れるオイルでまだらに染まっていた。
「美子、しっかりしろ!」
叫び声の方を見ると倒れた戸松美子を抱き起こす瀬川生徒会長がいた。美子は額を真っ赤に染め、昏倒してピクリとも動かない。
「しっかりしろ。誰か救急車を呼んでくれ」
瀬川は美子を肩に担ぎ、ヨロヨロと歩道へと移動する。
亜美ははっとなる。
倒れている人達を助けなくては
亜美は道路に飛び出し、倒れている人を助け起こすと歩道へとつれていく。
怒声、悲鳴、呻き声かそこここで聞こえた。
遠くから救急車のサイレンの音が幾つも幾つも聞こえてきた。
何人かの人を歩道に移動させていると、一際甲高い泣き声が亜美の耳を打った。
キョロキョロと見回すと横転した軽自動車の傍らで倒れて泣いている小学生がいた。
亜美は急いで近づき助けようと腕をとる。
「?!」
助け起こせなかった。片足が軽自動車の下敷きになっていたのだ。
「ま、待って、今助けるからね」
亜美はそう言うと車を押す。しかし、車はびくともしなかった。
「誰か、力を貸してください。
子供が車に挟まれているんです」
叫ぶが、みな、自分達の事で手一杯のようで力を貸してくるものは現れない。
「誰か、助けて。子供がいるんです」
ようやく亜美の叫びに一人の男が反応をした。ほっとするのも束の間、近づいてきた男は鼻をヒクヒクさせると急に立ち止まる。
「おい、その車、ガソリンが漏れてるじゃないか」
男は亜美達の方を指差すと叫ぶ。
えっ?となって振り返ると確かにガソリンがポタリポタリとこぼれていた。
「逃げろ!
何時爆発するか分からないぞ」
男は叫ぶとくるりと後ろを振り向き、逃げていった。
「ち、ちょっと!」
爆発?
確かにガソリン臭かった。バッテリーのスパークで引火でもしたら大爆発を起こすかもしれない。
しかし、だからといって子供を置いて逃げるなんてあり得ない。いや、むしろ急いで助けるべきだろう。
亜美は地面に横たわって泣く子供へ目を落とす。子供は泣きながら亜美を見上げていた。その目には痛みとは別に恐怖や不安の色がありありと浮かんでいた。
この子は自分の置かれている状況をはっきり理解している
見棄てるなんて絶対出来ない
「大丈夫。絶対助けるから」
亜美はニッコリ微笑む。そして、もう一度車を思いっきり押した。
「う、動けぇ」
顔を真っ赤にして押す。
押す。
押す。
しかし、車は微動だにしなかった。
「無理だ。止めておけ」
背後から声がした。
「700㎏はある。女一人で持ち上がる代物ではない」
2018/06/07 初稿
2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正
《オマケ》
蛍 「分かったわ」
亜美 「分かったって何が?」
蛍 「この物語の展開が、よ」
亜美 「ふむふむ。それでどうなるって?」
蛍 「つまるところこの物語は少年ジャ○プのノリなのよ
ジャン○と言えば、武闘会!」
亜美 「……それで?」
蛍 「それでって、それだけよ」
亜美 「はぁあ?」
蛍 「理由とか脈絡はおいておいて、とにかく武闘会が開かれるわけよ。
それで、トドーン、ババーン、ガシャーン、アハーンな展開になる寸法よ」
亜美 「擬音ばっかしでよく分かんないよ」
蛍 「とにかく武闘会よ。それで決まりだわ!」
亜美 「いや、恋愛小説でさすが武闘会はないかと……」
蛍 「○ャンプ舐めんな」
亜美 「これジ○ンプじゃないから」
蛍 「とにかく武闘会ね」
亜美 「……」




